表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
狼転移(仮題)  作者: 三軸走行男
一章 テロリスト退治編
29/43

26 おじいちゃんでした。




「え・・・・もしかして、それって戦闘中でも変えれたりするんでしょうか!?」

「うお!なんだ、お主。日に二度も驚かされるとは・・・・中々やるな?」

「いや、そんなのどうでもいいですよ!」

「ど、どうでも・・・・いい」

「とにかく!」


今の俺は、ガッカリしてるおじいちゃんを慰めている場合ではないのだ。なんてったって、もしかしたらもしかするかもしれないんだから。


「あ、ああ。血のにじむような修練を遂げればそれも可能かもしれない・・・・いや、間違いなく可能だな。儂に弟子入りするなら」

「お願いします、師匠!!!」

「速っ!?何だコイツ・・・・」


光と見まごう程のスピードで土下座を繰り出した俺。それをみたログウェルドは、驚きを通り越したのか不気味なものを見るような、もしくは気持ちの悪いようなものを見るような目で、『コイツ』呼ばわりである。でも、そんなこと今の俺には大したことじゃない。今の俺は、ある『ワザ』を再現できるのではないかという期待感で一杯になっていたのだ。


「師匠!師匠と呼ばせてくださいッ!!!」

「え、やd・・・・良いだろう。だが、今はそんなことをしてる暇はないんじゃないのか?今やるべきことを片付けたうえで、まだ師事したいというのであれば、認めよう」


土下座の状態から顔だけ起こし、ツバを飛ばしながらお願いした俺に対し、半分・・・・いや、八割ほど本音が出たところで師事することを認めてくれるログウェルド。やっぱり、この人の弟子になろうと決意してよかった。結構悩んだけど、正解だったなあ。え、即決?なんのことやら。


「本当でツか!?」

「ぶあっ、きたねっ!お前、ワザとやってるだろう!!」

「す、すみません。あまりにも心が高ぶってしまって・・・・」

「分かったから落ち着け。 (・・・・) (ふ。国をどうにかする) (問題がそんな早く片付) (くわけがないだろう。) (解決したころには約束) (も忘れている) (に違いない。)

「ところで、俺たちが今何に奔走しているか知っているんですか?」

「まあ・・・・儂は頼れる渋カッコイイおじ様だからな。もちろん、ネリエルに相談されたとも。」


頼れる渋カッコイイおじ様。・・・・うん。間違いないな。間違いないんだけど、其れって自分で言うことじゃないだろう。なんか、この人に師事してもいいものか、すこし不安になってきたぞ。軽いノリで千尋の谷に突き落として


『そこから出れたら強いということだ。』


とか言いそうなんだけど・・・・。千尋の谷的な場所ってこの世界にもあるのかね?きりたった崖があってた気があるイメージ何だけど・・・・ともかく、そんな見た目の崖がないことを祈ろう。まあ、あるんだろうけど・・・・本気で言いだしそうなんだよな。


「で、どこまで聞いてるんですか?」

「うむ・・・・偽麻薬を売って、金儲け。それに視線をそらして時間稼ぎ。時間稼ぎ中に鍛錬をして、首謀者やアジトを襲撃、撃破」

「随分短くまとめましたね。っていうか、ネリエルは全部喋ったんですね。」

「まあ、儂は頼れる渋カッコイイおじ様だからな!」

「・・・・とりあえず、あなたはそれを聞いてどうするんですか?関与するんですか?しないんですか?」


もう一度自慢げに”頼れるおじ様”を強調するログウェルド。そんな頼れるおじ様(・・・・・・)の事は放置して、深く踏み込む。今はそんなギャグに構ってる暇はない。一刻の命運を左右しかねない・・・・いや、仲間の今後や俺の人生、多くの人の人生を左右しかねない、重大な問題なんだ。


「もし、儂が関与するつもりだと言ったらどうする。お前たちにとって最悪な意味での関与をすると言ったら」

「・・・・抵抗しますよ。いくら俺が平和主義者と言っても、人生を壊されるのを黙って受け入れるというのは無理な話です。」

「そうか。 (根性もある・・・・) (と。中々見どころもあ) (るか。これは、楽し) (いことになるかもな。)

「・・・・あの、さっきからボソボソ何を言ってるんですか?めちゃめちゃ気になるんですけど・・・・」

「ん。ああ、気にしないでくれ。ただの、老人の独り言だ。」


ログウェルドは生返事気味に反応すると、自虐的なことを言い、豪快に笑った。そういう本気で言ってんのかわからない気味の自虐ってちょっとやめてもらっていいですかね・・・・。どう反応して良いかわからないんですよ・・・・。おじいちゃんの『まあ、老い先みじけぇからな!ッハッハッハッハ!!!!』みたいな。あれもマジで困るからなあ。『ふ、ふふ・・・・ふ。』みたいな反応になっちゃって、焦る。


「・・・・なんか、そこはかとなく嫌な予感がするんですけど・・・・」

「気にしすぎるとハゲるぞ?儂は奔放な性格だったから、ハゲてないしな」


この人は、なんだか明るいタイプの人だな。三分間あったら、必ず二回は笑う。でも、マジでこの人何者なんだ?もしかして、とんでもない人なんじゃ?俺を鍛えなおしたらとか、魔力が・・・・とか言ってるし・・・・


「ともかく、それを聞いたってことを俺にもいったのは・・・・?」

「国を左右することは今までも数度経験している。主に、自分の国ではあるが・・・・。年の功とも言うだろう?ここは、儂にも暴れさせてくれないか?」

「はい、ネリエルが良いというなら」

「・・・・ふっ、全くおぬしらは。儂の両親か何かか?ネリエルは『コルくんがいいというなら』コルダムは『ネリエルが良いと言ったら。』幼いころを思い出す・・・・剣が欲しい、魔術をしてもいいかと聞くと、口をそろえてあっちに聞けと・・・・」


ふっ、と優しく微笑みを浮かべると、自らの幼い過去を語りだす、ログウェルド。そんなログウェルドの表情は、もう取り戻せない昔を懐かしむような、悲しむような、噛みしめるような。どこか、そんな雰囲気が漂う切ないものだった。


「ログウェルドさん、もしかして」

「戦争孤児というヤツだ。戦争で身寄りを無くして、孤児になった。それからすぐ戦争は休戦になったのだが・・・・戦後すぐの孤児院がまともに運営できるはずもない。まず市生活を余儀なくされた。しかし、戦後すぐということもあり、大量の鎧や剣が二束三文で売りに出されていた。死んだ戦士のものだったのだろうな・・・・儂はそれを使い、訓練に明け暮れた。剣を振ることで戦争が思い起こされるということだったのだろうな。儂も無神経だった・・・・周りの孤児から疎まれ、集まりの輪から省かれた。」

「・・・・」

「そんな状況は、あってはならない。内乱はさらに残酷で、混乱を招く。絶対に止めねばならん。この国は、良い国だ。我が国とは違い、平和だ。笑顔にあふれている。それを曇らせることは、大罪と同じ」


普段から威厳のある厳つい顔をさらに眉の間にしわを作り、イカツイ顔になる。戦争・・・・俺は戦争を経験してないからちょっとその感覚は解らない。授業で戦争のビデオを見せられても、それが”事実だった”という認識だけで、それがどれくらい悲しい事かなんて、全く分からない。簡単に理解してるなんて言っちゃいけないんだと思う。


「・・・・ということは、協力していただけるってことですか?」

「・・・・まあ、儂はお主らが道を違えないように導いてやるだけだ」


み、導くと来ましたか。大きく出たなぁ・・・・。なんか、賢者みたいだな。賢者マーリン的な。アーサー王伝説の。アレも、アーサー王を導いてたんでしょ。あれ?マーリンって賢者じゃなくて、魔術師だっけ?どうでもいいけど。


「儂にできることはあまり多くはない。だが、無駄に歳を食ってきたわけではないっていうところを見せてやろう」

「・・・・まだお礼をするべきか、どうするべきかわかりませんが、とりあえずよろしくお願いします」

「かっかっか!うむ!今は信用できずともいい話を聞いたところによると、最近人とのいざこざが立て続けに起こっているようだしな!」


そんなに愉快そうに俺の不運を語らないでほしい。なんでそんなに嬉しそうなんだよ・・・・。全然楽しくないよ?当たり前だけどさ。俺と関わるからには、この謎の呪いをログウェルドにも味わってもらおう。快活に笑っている場合じゃないってことを思い知らせてやる。死ぬときは一緒やで?


「で、あの・・・・今って何時ぐらいです?」

「む。そうだな、今は朝の8時だな」

「朝の八時かあ。え、朝の八時!?」


ログウェルドの申し訳なさそうな声が無慈悲な真実を告げる。なんて大げさに言っては見たものの、ただ寝過ごしただけだ。計画が少しずれることになったということ以外は、大したことはない。


「何やってんだ、俺のバカぁ〜」

「すまん、あまりにも気持ち良さそうな表情で寝ているものだから、その笑顔を曇らすなんて言う所業をすることは、儂には難しかった・・・・。」


オオカミが頭を抱えて悩み、老人がペコペコ謝る。傍から見たらすごい光景なのだろうが、ここには誰にも居ない。思う存分俺は頭を抱えることができるし、ログウェルドは思う存分俺に謝ることができる。・・・・ドアの隙間から覗く目がなければの話だが。


「ん・・・・?何奴!」

「ぶげっ!」


ログウェルドは『何奴!』と叫ぶと、俺が寝ていたベッドにおいてあった高級そうな枕を素早く掴み、不埒者(ふらちもの)の気配がする方向へ投擲した!


謎の人物は『ふげっ!』という情けない断末魔を上げると、ドタッと言う音を立てて後ろに倒れ込む。


「さて、何が目的なのかきっちりと・・・・」


そこまで言うと、ログウェルドはピタッと言葉を止める。・・・・何かあったんだろうか?俺は、ログウェルドを盾にして、万が一がないように近づいていく。あの素早さと正確さなら、遅れを取ることはないだろう。


「・・・・ん?ネリエル?何してんだ、お前」

「ひーん、ひぃ~ん」


そこには、仰向けで額を抑える、涙目のネリエルがいた。・・・・本当に何をしているんですかね。涙目で床を転がるネリエルは、悪いことをして額をデコピンされた子供のように見える。・・・・随分とおおきなこどもなんですねえ・・・・。


「これは・・・・」

「う、う~ん」


何と言うか・・・・いや、何とも言えないな、こりゃ。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「あの、ネリエルさん?どうして覗きなんてしたんです?」

「だって・・・・おじいちゃんとなんか話してて・・・・。ずっと出てこないんだもん。私にあそこまで酷いこと言ったのに・・・・」


ネリエルの顔をよく見れば、今泣いたばかりではない涙の後がかなりあり、目もそれなりに張れているということが伺えた。俺が起きる直前までの会話。それがネリエルが泣いている原因なのかな。なんか、激しく言い合っていたし、ほぼ間違いないだろう。


「語弊がある言い方をするんじゃない。」

「だって」

「あ、そうだ。ネリエル、ログウェルドさんと知り合いってことで良いんだよな?」

「うん・・・・。私の、おじいちゃんみたいな人」

「おじいちゃん?」

「血のつながりはないけど、幼いころに面倒を見てくれたの」

「幼いころ、ねえ」


まだ十七年しか生きていないのに、引っかかる言い方だ。それは、俺が二倍以上生きているからなんだろう。俺も十七のころ”小さいころ”なんていう表現は使ったことがあるような気もするし・・・・。だが、引っかかった理由はそれだけじゃない。”幼いころ”といった数瞬後に、やべという表情で自分の口元を抑えたのだ。それをみて、ログウェルドが額に手を当ててため息をついたのも見逃さない。オオカミは視野が広いんだぞ。


「とにかく、ログウェルドさんから話は聞いてるぞ。相談したんだって?」

「うん・・・・助けてほしいってお願いした。おじいちゃんは強いから」

「強い、か」


ぶっちゃけ、どれくらい強いかなんて俺にはまだ全然わかってない。あって、まだ三十分程度だ。少し会話を下に過ぎないから、強さなんて分かるはずがない。でも、行動の端々から強さを垣間見ることはできた。喋り方、体重移動、目力の強さ、とてつもない自信。どれをとっても、一流の戦士に必要な要素だと言える。


「じゃあ、ログウェルドさん。早速手伝っていただけませんか?」

「うむ。儂は何をすればいい?」

「・・・・あと920kgほどの土をこの町へ運んでほしいんです」


920kgと聞いて、多少表情がヒクついたところを目撃してしまったが、何か良い解決法を思いついてくれることを祈っている。これで、『むりっすわ』なんて言われたら、せっかくネリエルが秘密をしゃべったのに、無用なリスクを冒しただけということになってしまう。


「・・・・その地点までは」

「大体、40km」

「承知。では、少し付き合ってほしいところがあるのだが」


付き合ってほしいところ。そういうと、カチャカチャと服の下に装備するような革の服に鉄板を張り付けた鎧?のようなものを着て、その上からローブを羽織る。・・・・ところで、全く関係ないんだけど、学生のころ女子に”ちょっと付き合ってほしいんだけどさ”なんていわれると、ちょっとドキッと来たよね。大抵は”図書館に本を返しに行きたいんだけど、一人で自転車じゃ運びきれなくって”とかつくんだよね。あれ、実はワザとなんじゃないかってね。


と、どうでもいいことを考えながら、ログウェルドを追いかけるネリエルの後をついていく俺。・・・・ところで、ログウェルドは俺たちをどこに連れてこうとしてるんだろうなぁ。





おじいちゃんでしたよ、おじいちゃん。いやあ、何者なんですかね、このおじいちゃん。祖国がどうのという発言と言い、ネリエルの”血がつながっていないおじいちゃん”発言。次回更新をお楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ