22 デコボコって、結局かみ合ってる気がするよね、の件!
デコボコって、漢字で書くと凸凹なわけですよ。片方ひっくり返してくっつけりゃ、あら不思議。噛み合うんですよね。
つまり、デコボコっていうのは歯車のように噛み合ってないようで、うまくかみ合って回っているっていうのを表してるんじゃないでしょうかね。
「今ネリエルの恥ずかしい叫び声が聞こえた気がする。まあ、気のせいだろうな」
この森で遭遇する魔物は、確かFランクだったはずだ。だから、レベルの上がったネリエルが叫ぶほど窮地に陥るということはまずないだろう。ネリエルは肉体はプリーストだし、Eランク相手にも善戦というか、まあ余裕で勝っちゃうだろう。
「にしても、おそいなあ、ネリエルのヤツ。マジで、どこ行ったんだろ・・・・」
土掘り上に戻ってきてから、約三十分。もう、お腹もすいてきたし、勝手に肉を焼いてしまおうか迷っている。でも、流石に勝手に食べ始めるのはなあ・・・・。日本人特有の悩み何だろうか。前ネットで、日本人は気を使いすぎという書き込みを見たことがある。外国の人が書いた書き込みだ。そうだよな、気の使い過ぎは、時に関係を悪くしちゃったりもする。・・・・食っちゃっていいかな?
「・・・・暇だ。掘るか」
暇なので、掘ることにした。もう日も暮れ始めて、今は夕暮れ。この作業ペースなら、明日の夜明けぐらいには終わる。良いんじゃないかな。思いのほか計画通りに、順調に進んで行ってる。さあ、気合入れて頑張るぞっと!・・・・にしても、ネリエルがいないとここまで暇になるかね。結構ありがたい存在なんだなあなんて。
「腹減り腹減り~♪帰って来い来いさっさとね~♪」
ガサッ
俺が三秒でメロディと歌詞を考えたヘンテコな歌を歌っていたら、そこそこ近めの茂みがガサッと揺れた。おそらく、ネリエルが帰ってきたんだろう。
「ふー、やっと帰ってき」
「おー、ここか。少女の言ってた拠点ってーのは」
「そうなのではないか?聞いていた通りの場所、形だしな」
「おお?そうかなー。知らんヤツの拠点だったら、揉めそうだしなー」
「間違いないと思うけど。私たち以外に、森に誰かいる気配はしなかったし」
「おー?そー言って少女が追っかけられてるところに遭遇したんだろー?気配感じないって、やばいぞ」
「あれはちがっ・・・・!なんか、あの周辺だけモヤモヤしてたの!」
「おーおー、なんだモヤモヤって。もっとマシなごまかし方しろよなー」
あぶねー。いやいやいやいや。あっぶねええええええええ!!!!!なんだこの冒険者たちは!?男2に女1?いや、そんなのはどうでもいい!ネリエルかと思って思いっきりしゃべっちった!今の、聞かれてないよな?ネリエルの話によると、喋る魔獣は妖精とか精霊系に居るっちゃ居るけど、オオカミ型でしゃべるのはフェンリル位しかいないって・・・・。間違われて狩られるかもしれないってことかよ!?
「二人とも静かにしたらどうだ。・・・・しかし、ここが少女の言ってた通りの拠点なのだとしたら、情報にあったモノが一つ欠けているな」
「おお?なんか他にもあったっけか?」
「あー・・・言われてみれば、何か他にもあったかも?」
「おーおー、なんで覚えてねーんだよー。しっかりしてくれよ、リーダー。」
「リーダーはアンタでしょうがっ!このうるさい口、松明でくっつけてもいい!?」
「・・・・熱くなるな、ミーナ。グレイウルフが怖がって出てこないかもしれないだろう」
「・・・・ああ!そういえば、グレイウルフのコルダムとか言ってたわね。確か、少女の魔獣とか。確かに、みあたらないけど」
俺を探してるのか・・・・?コイツら、マジで何者だ?話の内容からすると、もしかしてネリエルがこいつらに捕まった?でも、なんのために?身代金?でも、魔獣だけっていうことは聞いたみたいだし。ここは、日本とは違う場所。治安も、何もかも。日本での常識でさえも、ここでは通用しない。何が目的なんだ?
「むう・・・賢いグレイウルフだと聞いているからな。もしかしたら、我々を警戒して近づいてこないのかもしれん。この辺りで隠れているのかもな」
「おーん・・・野生の動物も、警戒すっと隠れっからなー」
「確かに。でも、あの少女は普通じゃないくらい賢いって言ってたけど・・・・」
何洗いざらい喋っちゃってんの!?ねえ、バカじゃないのかな、ねえ!!!!・・・・マジでどうしようか。こんな重要な時に・・・・。この国の未来がかかってんだぞ、マジで。一気に飛び出して襲い掛かってやろうか。いや、もしもただの冒険者だったらとんでもないことになる。
「・・・・賢い、か。もしかすると、我々が思っている以上に賢いのかもしれん」
「おお?どういう意味だ?」
「・・・人語を解するほどの賢さ、と言う訳だ。だとしたら、事情を知らないコルダムからして、怪しさ満点な話をする三人組の前に、姿を現すはずもない。」
「バカらしい!本気でそんなこと思ってる?動物や魔獣が言葉を理解できるわけないじゃない」
「しかし、我々も馬や犬に命令をする。手や手綱や道具を使って。・・・・時には言葉も」
「おおー・・・。ない話でもないってわけかー。試してみろよ、ミーナ」
「なっ、なんで私が。嫌よ、何もいない拠点に向かって話しかけるなんて」
「・・・・我々は敵ではない!ここが拠点だという少女一人を魔物から救出し、保護した。『グレイウルフの魔獣がいない』と少しパニックになっているので、出てきては貰えないだろうか!?」
「・・・・・・・・。」
仕方がないので、黙って出てきてやった。ジト目で。といいつつも、向こうからは多分睨んでいるか警戒してるように見えるんだろうけど、それでもいい。あっちが簡単に手を出せないように、警戒してるように見えたって良い。
「・・・・おお!」
「嘘だろ」
「やはりか。オオカミ系の魔獣や動物はかなり賢いと聞く。人語を解してもおかしくはない」
「・・・・」
ネリエルが帰ってきていないのは確かだ。ひとまず、コイツ等を信用するしかないだろう。だから、案内してもらう。そして、もし酷いことをされていたら肉体派プリーストと、野生オオカミの恐ろしさを思い知ることになるだろう。許さないからねっ!
「お・・・・?俺たちにそこまで案内しろと言ってるのか?」
「よし、案内しよう」
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「ちょっと不気味・・・・」
「おー?びびってんのか、ミーナ」
「だって、完璧に理解してるじゃん!さっきも、首で指示して案内しろって・・・・」
「それぐらいどの動物でもする。少し落ち着け、ミーナ。もし危ないことがあっても、俺たちが守る。」
「そうだぞー。俺たちが守ってやるぞー。 」
「あ!今めんどくせーって言ったでしょ!このチビ」
「チビじゃねーし!!!俺、ドワーフだし!!!やんのか、おお!?」
「うるさいわね!ドワーフの中でもまだ子供でしょー!?」
「う、うるせー!俺、二十年生きてるんだぞー!?」
「人間に換算したら、まだ九歳なんだよねー!それに、私はこう見えて50年生きてるから!!!」
「もうすぐで行き遅れだなっ!」
「まだ八年あるしっ!」
「里から慌てて婿探してくるとかいって飛び出してきたくせに!」
「あっ!あーっ!言ったわねこの野郎!!!まだひげも生えてない癖にっ」
「俺はひげ剃るの!何がかっこいいんだかわかんないしっ!」
「・・・・少しは静かにしたらどうだ。戸惑ってるだろう」
三人組の中で唯一まともそうな人間の男の一声で、二人の喧嘩が収まる。いやあ、助かった。めっちゃ気まずくてどうしようか困ってたんだよね。それにしても、ドワーフって全員ひげがカッコいいと感じていると思ってたけど、そうでもないヤツもいるんだな・・・・。エルフも、みためが綺麗だと結婚とかに困らなそうとか思ってたけど、そうでもないみたいだし・・・・。大変なんだなあ。せっかうのファンタジー世界なのに、なんかすごく現実的だ。
「戸惑うって、人間じゃないんだから」
「命令なのか、何なのか判断がつかないのかもしれない。それか、本当に全部の言葉を理解していて、ただ居づらいと思っていたのか」
「楽しいやつだなー、コイツ」
『さっきの喧嘩はどこ行ったんですか』と、問いかけたくなるほど、今度は三人して俺に興味津々だ。さっきよりも俺が戸惑ってることは、見ればわかると思うのですが。
「くぅん・・・ワンワン!」
「はっ。そういえば、こんなことをしている場合じゃないわね」
「おー、思わず夢中になっちゃったなー」
「早く行こう。少女が困っちゃうかもしれないし」
「・・・・そうだな」




