21 不安な時ほど食べて元気に!!!
不安な時や外的要因でイラついた時って、いっぱい食べたくなるよね。で、自分何やってんだろうなあ・・・・って思ってるときは食欲なくなる。イラついてるときは食べて、落ち込んでるときは食べたくなくなるのかも。とにかく、食べないと死んじゃうから食べよう!三食バランスよく!!!
今日は何をしているのかって?汗水たらしながら、国の危機を救おうと奮起している。ようは、昨日と変わらず只土を掘り続けてるだけだ。
「よっせ、ほっせ、よいせっ、ほっ、はっ」
「・・・・・」
傍から見れば、昨日となにか変わった?と、言いたくなるだろう光景。それは、当然のことだ。俺も、ちょっと離れたところにある土つまった袋が無ければ、『昨日と同じ日を繰り返しているんじゃないか』なんて、中二病みたいな恐怖に駆られていたことだろう。
「よっせ、ほっせ、よいせっ、ほっはっ」
「・・・・・」
この考えていることすら、自分がしている土掘りに、疑問と理不尽さを考えないようにしている、紛らすための思考だ。簡単に言えば、暇潰しだ。俺は、本をよく読むので、この程度慣れっこなのだ。何時間でも続けることができる。何なら、頭のなかで空想の人物と会話することも、容易だ。
これは、凛華にしか話していないことだ。というのも、凛華に話す高校生まで、それを疑問に思っていなかった。ただ、自分だけの特技だとしか、思っていなかった。しかし、初めてめちゃくちゃ話があって、仲良くなった凛華に打ち明けてみた。『打ち明けた』というよりは、多少それを誇っていた部分もあるから、『教えた』という感覚に近いか。
で、大爆笑された。凛華はひとしきり爆笑したあと、俺に向かって、その面白い発想と思考を、なにかを作るために発揮する気はないかと提案した。
で、俺はなぜかここで土を掘っている。あれ?なんで俺こんなところで土なんて掘ってるんだっけ?あれ・・・・・。あー、なんか、これをすると王国が救われるんだっけか。・・・・・本当かよ。なん、無償に心配になってきたんだけど。
「よっせ、ほっせっ、よいせっ、ほっはっ」
「・・・・飽きた」
そんな時、ネリエルのやつが、なにかを突然ポツリと呟いた。・・・・ん?今、何て言った。
「・・・・・よっせ、ほっせっ、よいせっ、ほっはっ」
「無視しないでくださいよ。飽きたって言ってるんですよ、私は」
「よっせ、ほっせっ、よいせっ、ほっはっ」
「あの・・・・本当にこんなことをしてこの国を救えるんでしょうか?ただ、私たちは服と手を泥だらけにしてるだけだと思ってきたんですけど。」
「よっせ、ほっせ、よいせっ、ほっはっ」
「・・・・。今はなにも考えずに掘れってんですか。確かに、最初は結構、行けるんじゃないかって思ってましたけど、こんなことずっとしてたら、嫌な考えが浮かんできますよ。」
「もうすぐで終わるだろ。そっから考えればいい。そもそも、俺たちが助けたいのは王国じゃない。アリスフィアと、その友人だ。」
「その二人は本当に救えるんですか」
「・・・・分かんねえからこうやって時間を引き伸ばす方法を取ってんだろ?いいからスコップ動かせ」
ネガティブな気持ちになるのは、分かる。残りの袋は、持ってきた時の4分の1程度まで減っていた。しかし、それでも4分の1ある。俺もちょっと危なかったけど、対策を考える時間が欲しくて引き伸ばしているんだ。これで、間違っていないはず。
「アリスさん・・・・」
「・・・・・」
俺は、小さく呟いたネリエルの言葉を聞き逃さなかった。なんでそれを聞き逃せないのかと、自分の耳を今だけちぎってやりたい気分になったけど、聞かなかったことにしよう。今はただ土を掘ることが解決に繋がるんだ。
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「・・・・・一旦飯休憩にするぞ。」
「・・・・・はい」
さっきの事があって、ネリエルは掘るペースが落ちてきていた。だから、飯休憩をとることにした。お腹が空いてたら、ペースも落ちるだろうし、お腹が空くと人はイライラするものだ。
「じゃあ、俺がまたフレッシュボアでも狩ってくるから」
「私も行きます」
「え?でも・・・・」
「また、肉の丸焼きじゃ飽きます。だから、私も行って他の食べれるものを探します。」
「うーん・・・・」
「・・・・だめですか?」
本当は効率化するために、丸焼きにしてたのだが、やる気がでなきゃ効率も落ちる。よし、ネリエルもつれてくか。
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俺がフレッシュボアを狩っている間に、ネリエルが何かを探してくるらしい。うん、良いんじゃないかな。ここら辺ならレベルが多少上がったネリエルも簡単には死なないだろうし。しかし、ネリエルか。アイツ料理できないんじゃないかなあ・・・・。
「うーむ。心配っ!」
「ぶひぃ・・・・」
「はっ。・・・・こんだけとれたんだし、もう戻るか。」
ネリエルの事が心配で何も考えずにイノシシを狩っていたら、いつの間にか四匹も狩ってしまっていたらしい。こんなに食べきれない。余ったのは町に売りに行くか。今血抜きすれば問題ないでしょ。なんて、ネリエルが心配だというのはどこに行ったのか、その場で血抜きを始める俺。いいの、いいの。多分、大丈夫だから。ここは最低ランクの魔物しか出ないし、ネリエルは肉体派なプリーストだし。メイスでガンガンやっつけちゃってるはずだ。
「よし、上出来」
イノシシ四匹をその場にあった低木に引っ掛け、血抜きする。獲物から落ちてくる血の滝を見ていると、気分が悪くなる・・・・なんてことは一切なく、ただ、『俺もオオカミとして一人前になったなあ』なんて言う考えが浮かんでくる。怒られてばっかだったからなあ。
「そろそろかな?」
大体、三十分。本当はもっとつるしておいた方が当然いいんだけど・・・・。まあ、土堀場もとい、キッチンに帰ったら引っ掛けとこうか。実は先に戻ってるかもしれないしな。
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「いひぃいいいいい!!!」
「フゴフゴ、ブヒブヒ!」
「プギィーーーーーッ!!!」
「き、ぎゃあああああああああああッ!」
逃げども逃げども、後ろから迫ってくる毛皮の塊はネリエルを追いかけていく。まるで、婚期を逃した女性かのように・・・・。おそらく、逆なんだろうか。オスが、久しぶりに見たメスを逃さんとしているのかもsれない。
「ちょ、私人間だよ!?ねえ、まじっうわっ!」
恐らく、『マジで』と言おうとしたのだろうが、言い切る前にそれは悲鳴に変わっていた。運悪く、足元に転がっていたちっぽけな石が、救済の道を砕いてしまったらしい。要は、ネリエルは小さな石に足を引っかけて転んでしまったのだ。
「ね、ねえ。冗談でしょ?冗談ですよね?冗談と言ってください!オオカミさーん!オオカミさん助けてください!私、貞操の危機ですっ!!!!」
なにを大声で叫んでいるのか。おそらく、いくらアホなネリエルと言っても、この森には今自分たちしかいないから、恥を忍んでいっているんだろう。まあ、この森に誰もいないなんて言う保証はどこにもないのだが。結局のところ、命が一番大事ということだ。
ガサッ
「あ、オオカミさん!?よかった、怖かったんですよ、私!」
「グルルルル・・・・ウゥッ」
「オオカミ・・・さん・・・?」
「グルルゥァアアアッ!!!!」
「普通のグレイウルフだこれーーーーーッ!!!!」
「グルゥアッ!!!ガウガウッッッ!!!!
「フゴフゴッ!
「プギィ、ブヒブヒ!」
「オオカミさーん!オオカミさーん!!!マジで助けてくださーい!!!大切な相棒が食べられちゃいますよ!?いろんな意味で!?!?いやああああああああっ!!おおかみしゃああああああん!!!!」




