20 大体四人で国家転覆を阻止するなんて無茶ぶりじゃね?の件!
「あっばばばばばば」
「こら、ちゃんと捕まりなさい。むち打ちになっても知らないぞ」
「あがががが」
ネリエルはまだ寝ぼけているのか、それともふざけているのか、振動で力を抜いて「あばばば」となるヤツをやっている。
「つくまで多少時間かかるけど、寝ちゃだめだぞ」
「あーい」
俺は腐ってもオオカミ。オオカミは、最高速度70km/hを20分間も維持できるという。俺は、体内に魔石を移植されたせいで、普通のオオカミよりも体力も力も上がっているため、人間を載せても70km/h出せるし、20分以上走り続けることも可能だ。余裕と言っても過言じゃない。余裕だ。余裕過ぎてあくびも出る。
「もしかして、それをあくびと言い張るつもりですか?」
「はあっ、はっ、ぜぇえっ・・・・うるしゃい!まだ7レベなんだから仕方ないでしょうが!」
「あ、認めた」
この世界は、RPGなんかと違って、レベル上限が不明らしい。伝説によると、”99の壁”を突破して、3ケタに到達した人物もいたとか。でも、それは不思議じゃないと言われている。S級と呼ばれている上級冒険者たちは、レベルやステータスなどの情報を非公開にしてるらしいし、もしかしたら案外3ケタに到達している人物は多いのかもしれない。
で、何が言いたいかというと。そんな、あれから3レベルとかで劇的に強くなったりしないのだ。レベル上限が高いゆえに、1レベルの成長幅が小さい。そういうことだ。
「いやあ、町から何キロ離れましたかね」
「大体、40kmぐらいじゃね?」
「はえー、すっごいですねー」
「でも、確実に速度自体は上がってますよね。だって、私を乗せてこんな速さでなかったじゃないですか」
「・・・・」
流石に、最初の時は気を使って控えめな速度だったよ。初めはな。でもな、気を使う必要ないかなあって思い始めたんだ。この子は、気を使うとダメになるタイプの子だ。たまに甘やかすぐらいならいいかもしれないが、それをずっと続けちゃダメなタイプだ。
「さ、掘り始めるか。時間は、あんまりないんだからな」
「そうですね。明後日ですもんね」
「明後日か。今日は夜遅くまで掘り続けて、いったん帰るか?」
「いや、ここまで来たら泊りでもいいと思いますよ。ごはんも、そこら辺に居る魔物か獣でも食べたらいいですし」
「そうだな、フレッシュボアでもいたらいいな。」
「そうですねー。よいしょっと」
「よいしょ」と言い、小さい袋から取り出したのは、スコップ。片手で持てるタイプの、ちっちゃいスコップだ。子供が砂場で使ってるやつの、金属バージョン。・・・・そんなちいさいヤツで大丈夫なんだろうか。なんだか、無性に心配になってきた。
「よっ、せっ、ほっ、せっ、よい、せっ、ほっ、はっ」
「・・・・・・・・・・・・」
俺がリズムを取りながらやるのに対して、ネリエルは黙って黙々と作業をしていくタイプのようだ。うむ。プリーストなのに、金属製のメイスで戦っているだけの事はある。結構な、作業スピードだ。これは、俺も負けるわけにはいかないな。
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「ふう、結構ほれましたね」
「だな」
人が抱えるほどの袋50個分。ネリエルが俺に載せた袋の、半分。正直、もういいんじゃねえかなと思っている。だが、生産効率を上げて、資金の獲得をするためにはまだまだほしい。あの隠し部屋空間にはまだ部屋があり、栽培におあつらえ向きの、ひっろい部屋があった。おそらく、何かデカい魔物でもいたのだろうが、そんなの俺たちには関係がない。すでに倒されているようだから、構わず利用させてもらう。
「もう、日も暮れちまったな」
「ですね・・・・」
あれから、約18時間。時刻は、多分今23時ぐらい。すごい時間がたっていた。飯も食わず、2時間やっては10分ほど休み、掘るを繰り返していた。いや、凄いな。ネリエルにステータス確認させてもらったら、バリバリ上がってたよ。
「飯食って寝るか。ちょっとまってろ。なんかとってくる」
ゴブリンで死にかける俺が、一人で狩りなんて行って大丈夫なのかって?ちょうどいいから説明しよう。魔物には、冒険者と同様にランクが振り分けられてる。冒険者がSからFランクまであるように、魔物も、SからFまである。何故かというと、管理しやすいからだそうだ。目安がつけやすいんだな。C級冒険者はB級魔物を倒すにはまだちょっと早いみたいに。で、俺のレベルもあれから7上がって、7レべ。オオカミにはレベルがないからな。魔力がないから、レベルという概念がないらしい。
ちなみに、ここで言う魔力っていうのは魔法の威力じゃない。レベルが上がると、体内で生成される魔力の量が増えるらしい。その魔力で、身体能力などをブーストしてるんだと。で、余ったものが、魔法に使うエネルギーとなる。それがステータスカードに表記される「魔力量」。だから、余剰魔力以上に魔力量を使うと、一時的に身体能力が下がって、足が震えたり、倒れたりするわけだ。身体能力はそのままで、エネルギーを必要としてるのに、エネルギーがないんだから。
話がそれたが、何が言いたいかというと。あのレベルがなかった時と比べると、俺はすごい強いぞ、ってことと、ここには多分Fランクの魔物しかいねえぞってこと。今じゃFランクの魔物程度、控えめな爪攻撃三発で倒せるわ。
「ということで、野生化したカトルボアが居たので狩ってきた」
「それって、もうフレッシュボアで良いんじゃないですか?」
「かなあ」
「めんどくさいんで、いいですよ。あ、待ってる間にもう一袋終わりました」
「休んどけって言ったのに」
「待っとけって言われただけですから」
フレッシュボアを家畜化した魔物が、カトルボアだ。じゃあ、カトルボアが野生化したら、フレッシュボアなんだろうか。なんて、可愛げのないネリエルの言葉をスルーしつつ、考える。そして、気づいた。俺の腹減りに比べれば、どうでもいいことだ。
「飯にすっか」
「はい!」
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「はあ・・・・。これからマジでどうなんだろうなあ」
星空の輝く夜空は、感動的な気分にしてくれると同時に、自分を見つめなおさせる効果もある・・・・とおもっている。なんだか、空を見ていると憂鬱な気分になってくるのだ。先の事を考えて、鬱な気分に。多分、俺がとんでもないことに首を突っ込んでしまったからだろうと思う。だから、先が暗いんだ。
「なるようにしかなりませんよ、そんなの」
「起きてたのか」
「はい」
飯を食い終わってから40分ほど。横になってから、20分近く経つだろうか?もう、寝たと思ってたんだけどな。
「ネリエルは良かったのか?よく相談もせずに決めちゃった気がしたんだけど」
「いまさら何言ってんですか」
「そうだな。すまん」
「私が決めたことですよ。私の意志でここに居るんです。じゃなかったら、バカみたいに筋力値が上がるほど土掘ったりしませんよ。どんなもの好きですか」
「そうかもな。ありがとな、手伝ってくれて」
「だから、私が決めたことなんですって。私目線では、オオカミさんが手伝ってくれてることになってますからね」
「なに?手伝ってんのはそっちだろ」
「私じゃないですよ」
「俺が最初に助けようとしたんだから」
「私ですって」
「お前、アレだろ。故郷に石像でも建てられたいんだろ!」
「どうでもいいですよ、そんなこと!」
「ウェアリムの中央噴水広場にも、作ってもらおうとしてるのか!?土台に、金属板の説明付きで!『この英雄、ネリエル・アルゲーダーはこの国を誰にも知られることなく救った、救世主である。彼の有名な反乱組織や犯罪組織を、知り合いの衛兵とともに駆逐した彼女は、誰もが認めるヒーローである。』なんて、書かれたいんだろ!?」
「そんなこと!・・・・悪い気はしませんね」
「あ!・・・・俺とネリエルでワンセットの石像ならいいかな。腰元まで背丈のあるオオカミが傍らに居る、少女。絵になるなあ」
「ありゃ、急に褒めてくれるんですか、私の事」
「うん、俺のことな俺が経ってりゃ誰の傍でも絵になるな。」
くだらない言い争いのせいで、余計に目がさえたことは、言うまでもない。だが、最初に抱えていた鬱屈とした感情が自分の中から消え去ってるの感じ、代わりに黄色い感情が胸中を満たしていくのを感じるコルダムであった・・・・。
魔力と云うのは、魔法を行使するためのエネルギーという意味もありますが、レベルで上がった筋力や敏捷ステータスなど、全ての追加ステータスを上げているのも、魔力です。
ステータスカードに記されている【魔力】は、魔法威力の略です。魔量は、魔力量ですね。ステータス補正で余った魔力を、魔法に当てているというイメージです。
レベルが上がったことにより、500魔力を生成できたとしましょう。それにより、種族値というステータス値に補正がかかります。
筋力が40▶270
魔力が10▶80
敏捷が7 ▶37
説明のため全ては書きませんが、これで余った値170が、魔法を発動できる魔力量になるということです。魔力でステータスが上がり、余ったもので魔法を行使するという感じです。大体、ステータスに振られる割合などは、冒険者ギルドで決められる『職業』によって変わります。
例 戦士なら、筋力と俊敏のバランスを取り、魔力(魔法威力)を低く。魔力を、あまり余らせない。
例 魔法使いなら、魔法威力と俊敏をバランスよく、少し多目に魔力を余らせる。(余った魔力は『魔力量』になります。)
という感じです。分かりにくくすみません。




