19 いよいよ本格的に作戦が始動する件!
「まあまあな説得力を与えたと思うぞ!」
「ちなみに、何て言ったんですか?」
「これは間違いなく売れる!だから、もう少しだけ待ってくれないか?うまくいけば、大幅に犠牲を減らすこともできる。例えば、莫大な金で内部の協力者を雇ったり、奴隷を買ったりすれば、大規模な地下トンネルからの急襲作戦もできるとかなんとか、適当なこと並べといた」
「曲がりなりにも城なんだから、地下水路や地下空洞の警備はしっかりしてるだろうな」
「そう思って、私も適当言っといた。警備については、多分心配ないだろ」
ま、何の根拠もないんだけどね。一応、そっちの守りも固めてもらうように掛け合うか。・・・・あのお姉さんに。でも、そんな急がなくても問題ないだろう。例えば、ネリエルにでも計画書を盗んできてもらえばいいし。
「はあ、バレたら怖いとか考えないんですか?」
「いや、全く。なあ?」
「バレる時はどっちもバレるしなあ。最初は怖いって思ってたけど、気にしてるこっちがバカらしくなって。じゃあ、いっそのこと考えるのやめるぞーって思ってな」
「男らしいな、アリスフィアは」
「男らしいのは男らしいんですが、危ないじゃないですか。ちゃんと、身の危険を感じた時には無理せず頼ってくださいね」
もちろん、頼るつもりだからこそ、そんなことを言ったんだろう。もし、頼るつもりはないなんて言ったら、思い切り噛みついてやる。服を。ここに来るまでの道中、結構痛いんですから~なんてことをネリエルからもされたので、もう、噛むことはあまりしないと誓った。あまり。
「でも、あまり期日は伸ばすことはできなかった。・・・・五か月後だとさ。」
「伸びたのは二ヶ月だけか・・・・」
「仕方ないですよ。もしかしたら、お金がたくさん入ったことを知れば、考え直すかもしれないですし。」
「・・・・そうだよな。まずは、やってみなきゃわからないもんな!」
「そのために、まずどうすっか」
「・・・・突拍子もないことでもいいので、どんどん案を言っていきませんか?だまってるじかんがもったいないです。」
なるほど、最終的に建設的な意見が出やすいという方法だな。知らんけど。
「じゃあ、この地下で薬草を栽培するっていうのはどうだ?」
「それ良いですね。土を運ぶ方法については何かありませんか?」
「あ、そうか・・・・」
「俺は、土魔法かなんかでダンジョンの壁とかをぶっ壊して、土にしちゃうっていうのを思いついたんだが」
「それ、塵にしかならないと思うんですが・・・・」
「ううむ・・・・」
確かにこれはいい方法だともいえよう。しかし、具体的な解決策を見つける時に適したやり方かというと、そうでもない。具体案を出すときは、もっと丁寧に探り探り話し合うべきなのだ。
「やっぱり、土を外部から運ぶしかないな。俺たちは広い土地を購入できるほどもうかってないし、そんな土地を急に購入したら、一発で目を付けられちゃうだろ」
「何とかして、ここに土を運び込みますか・・・・」
「何かいい方法は無いのか?」
「そうだなあ・・・・」
俺は、オオカミになったことでさらに小さくなったであろう脳をフル回転させて対策を考える。っていうか、人間と全然脳の作りが違うと思うんだが、なんで俺人語を解したり喋れたりしてるんだろうな。もしかして、これが異世界の不思議パワーという奴なんだろうか?
「うーん・・・・あ!冒険者を雇うっていうのはどうだ?」
「冒険者かあ・・・・でも、足がつかないか?あやしまれて、調査でもされたら最悪だし・・・・」
「そうですね、冒険者ギルドに依頼すれば簡単だとは思いますが、ちょっとリスクが高いですよね・・・・」
「じゃあ、どうするんだ?このままだと、場合によっては何か月もかかるぞ?」
「そうだなあ・・・・」
なんだか、バカらしくなってきた。なんで俺たちはここまでしてテロリスト達を止めるために頑張ってんだ?ふざけんな、まじで。めんどくさいったらありゃしないぞ、本当に。なにが、嘗ての国を取り戻すため、だよ。絶対独裁国家にする気満々だよな。もう、言ったら詐欺師みたいなもんだ、本当。あー、やだやだ。詐欺なんて、本当に碌なもんじゃない。どうしたら詐欺なん・・・・詐欺?
「そうか。いや、でも結局・・・・」
「どうしたんですか?」
「なんだよ、何か思いついたのか?」
「うーん、でも怪しまれるかもしれんしなあ」
「いいから早く言ってくださいよ!」
「いやな?新人冒険者同士のコミュニティがあって、違う町から来たことにすればいいんじゃねーかなって。」
名案だろ?え、よく分からないって?仕方ないねえなあ・・・・つまりだな・・・・
「つまり、違う町から来たんだけど、人数のせいで食料が大変!人数分の食料は用意したから、それを運んでくれないかなあっていう募集をかけるんだ。」
「・・・・なるほど、その袋の中に、土を忍ばせておけばいいってわけだな?」
「そういうことだ」
「はえーっ、なんだか、どんどん詐欺のような手法を考え着きますね、あなたは」
「べ、別に詐欺とは全然違うだろ?」
「でも、密輸とかはそうやって知らない人に運ばせることもあると聞きましたよ?」
あ・・・・。そう言えば、前なんかのテレビ番組で見たな、そういうの。知り合いのスーツケースを持っていってくれ、って頼まれた中身が麻薬だったとか・・・・。
「あー、俺も聞いたことあるな。知り合いが忘れてった荷物を・・・・とか言って、麻薬を運ばせるっていう・・・・。確か、わざとその人物の前にならんで、騒ぎを起こして時間を稼ぐとか。それで、詰まった列を解消するために、荷物検査が雑になる・・・・みたいな」
「・・・・なんで知ってんのかなあ、そんなこと。魔力灯の事は知らなかったくせに。で、その考えは良いと思うけど、どうするんだ?そんな量を運ばせたら、流石に不審がられるだろ?」
「一日分だったらな。それを、一ヶ月分だと偽ればいい。だいぶ、土も運べるんじゃないか?」
「確かに、それくらいだったら不審がられることも・・・・あるとは思いますけど、そんな深く疑う人もいないでしょう」
アリスフィアの呟きを聞かなかったのことにして、俺たちは話を進めていく。いつ土を集めに行くか、その集めた土を入れる袋の調達は?何日後までに冒険者ギルドに依頼できるか。様々なことを話し合って、決定していく。そして、夜が明ける。
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「あ”ー。いつの間にか朝になっていたなんてな」
「ですねー、眠いですねー」
「でも、寝るわけにもいかんだろ」
「土、掘りに行きましょっか」
「近くの森行こうぜ。」
「あーい」
そんな短い会話を交わしながら、俺がしゃがむ。その上に土を詰める袋を乗せて、ネリエルがまたがり、準備完了だ。袋は、例の隠し部屋のチェストの中に入っていた。
「大丈夫ですよー」
「出発するぞー」
「あーびゅっ」
おそらく「あーい」と言おうとしたであろうネリエルは、俺が急発進したせいで首ががくんとなり、最後まで言葉を発することができなかったようだ。遊園地でジェットコースター乗ったときとかにあるよね。急降下するタイプのヤツ。ここから今日含む2日間でどれだけの土を集められるか、そこが結構なカギとなってくる。




