17 アリスフィアが自信満々に案内してくれるらしい件!
もう、期限がヤバいです。カフェイン摂りまくってガンガン行こうぜします
「あ・・・・」
「なんだ、遅かったじゃんよ」
「そうですよ。足が棒になっちゃいましたよ」
「すまん、ちょっと用があって」
「なんだ、う〇こでもしてたのか?」
「うん〇じゃねえよ!!」
「何言ってんだ、アリスフィア、下品だな~」
「お前が言い出したんだろ!?」
ギャーギャーと騒ぐ二人を、ポカンと見つめていたネリエルだったが、はっと気づく。きっと、オオカミさんは、目元がちょっとだけ赤くなったアリスをみて、気づいたんだ、と。だから、励まそうとして、めちゃくちゃなことを言ったんだ、と。・・・・なんだ、このオオカミ中々やるじゃないですか。今まで内心バカにしていたネリエルだったが、細やかな気遣いと、気づくときは気づくコルダムをちょっと見直したようだった。
「だから、それに対してまともに返すのがダメなんだよ!出来る人は、『セクハラですよ』ってキリッと返すだけでいいの!」
「え!?それ、セクハラに入るのか!?」
「チッチッチッ。甘い。甘いねえ。砂糖のように甘っちょろい。容姿に関する指摘などは、セクハラになりうるんだよ。背が低いとかもダメなんだぞ」
「なん!?じゃ、じゃあ『お前、背がでかいな!』なんて言うのもダメなのか!?」
「あーあーあー。そんなの、論外だろ。誰だって、そんなこと言われたら傷つくもんな」
「な・・・・」
どこかで拾ってきた知識を、さも自分の知識のようにアリスフィアに披露する、コルダム。それに、いちいちオーバーに驚いてしまう、アリスフィア。・・・・そんな二人のやり取りを続けてみていたが、もしかしたらアリスをからかいたいだけだったんじゃ・・・・と、考え直すのネリエルであった。
「はっ。ちょっと、こんなことしてる場合じゃないですよ」
「え?もしかして、ネリエルは『現代社会における自由と不自由とは何か』について結論を出すことができてるのか!?」
「は?」
「コルくんが、言ってるんだよ。現代社会における自由と不自由とは何か。現代人にとっての自由は、昔の人からしたら不自由である。社会に縛られ、人間関係に縛られ、自由という名の不自由に縛られてる。では、全時代において共通する自由とは、永遠に続く自由とはなんなのかって」
「な、な・・・・」
コイツ等、なんて高レベルな話し合いをしているのか。そういうのって、あれじゃないの?哲学ってやつじゃないの?なんで、一瞬目を話した隙に、そんなハイレベルな話し合いになっているのか。そんな考えが脳内を駆け巡り、ネリエルの頭の中はごちゃごちゃな状態だった。せっかく話を軌道修正したのに、また路線がずれてしまったことに気づかない。
「まあ、この話はあとでしよう。どうせ、俺たちじゃあ結論のつかないことだし」
「んー・・・・。気になるんだけど、仕方ないか」
「仕方ないか、じゃないですよ!今はそんなことどうでもいいじゃないですか。今大事なのは、ほら・・・・例のことですよ」
急に声を張り上げたネリエルに、周囲の人の目線を集中させた。その事実に気が付いたのか、ネリエルは頬を羞恥で紅く染め、声もしりすぼみになっていく。
「ああ、分かってるよ。場所を移動しようか」
「・・・・そうだな。話したいことがある」
「私たちも、報告があります」
「じゃあ・・・・ダンジョンにでも行くか?」
「ダンジョンか。それなら、ちょうどいい」
「ちょうどいい?」
「行ったら分かる。私に付いてきてくれ」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「5歳の時、私はメイガンに救われた。そして、三年後。その時、私は8歳。その時にはもう、メイガンとお母さんに対して感謝でいっぱいだった。だから、一人でも稼げるようにって冒険者登録をしたんだ。」
「どうやったんだ?十五歳以下は保護者のサインが必要だろ?」
「字を書く練習だって偽って、お母さんの氏名が書かれた紙を入手したんだ。それを、ギルドからもらってきた、『保護者のサイン』欄に写した。それで、冒険者登録をした」
「すごいですね。当時8歳にしては、とんでもなく知恵が回ったんですね」
「すごいな。俺でもなかなかそんなにあくどい事は思いつかないよ」
「え?」
「下手すりゃ、サインや拇印を利用して、保証人登録をしてお金借り放題なんてことも」
「ああ、確かにすごいですね。というか、確かそれを利用した組織的大犯罪がありましたね。あの、詐欺師グループの。字が書けない浮浪者のふりをして、様々な人の直筆サインをもらったり、痴呆症の老人の変装をしてギルド内で一般人に拇印の手本をさせて入手したりと、様々な方法をつかって、他人名義で借金を借りるっていう犯罪組織が。」
「ええ!?」
あ、実際にそういう犯罪があったのね。なるほど・・・・でも、そうだよなあ。現代日本でも、印鑑や個人情報の取り扱いは、とても重要で大変なものだった。それを、悪用される恐れがあるからだ。日本では、そういう犯罪も結構頻繁に起こったりした時期もあった。日本では、個人情報の取り扱いは重要ということは、小学生でも知っている。しかし、インターネットやテレビなどの、情報のネットワークといえるものがないこの世界では、広く認知されていないのだろう。
「つか、他人の個人情報を勝手に利用することって、使い道に関わらず犯罪なんじゃないの?」
「犯罪です」
「ええええ!?!?」
「ま、安心しなよ。アリスフィアは当時8歳だろ?バレたとしても、厳重注意だろ」
「だと思いますよ。前回の大規模な組織的犯罪から、十余年。起きてから2、3年ほどだったら、処刑されていてもおかしくありませんでしたが、もう、十数年たっています。恐怖も、意識も変わりましたし、対策も講じられています。だから、問題ないかと」
「なんだ、脅かすなよ。平気なら、平気だって言ってくれたらいいのに」
「いや、分からんよアリスフィア。お偉いさんの考えることは解らん。裁判にでもなって、もし裁判がその詐欺事件の被害者だったら・・・・判決はすごいことになるだろう」
「な、なんでいちいち私の事を脅すんだよ・・・・」
「面白いからだと思いますよ」
その通り。アリスフィアって素直だから、言われたことを何でも信じちゃうんだよな。で、それを想像して青ざめちゃったりする。そこが、面白い。
「・・・・まあ、いいさ。好きなだけからかえばいい。後で鳴いて謝ることになるんだからな」
「で、ダンジョン前まで来たわけだけど、こっからどこ行くつもりだ」
「まあ、待っとけって。すんごいんだぞ」
「「?」」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「ふふん、ふふふん、ふーん、ふふん」
「ご機嫌ですね、アリスさん」
「ん?そうか」
「鼻歌うたってましたよ」
「あれ?ははは、気づかなかったな」
うふふ、あははと楽しげな会話をする、二人。中身はともかく、見た目と言葉遣いはいいネリエル。中身と外見は良いけど、言葉遣いが悪いアリスフィア。アリスフィアに至っては、外見だけじゃ言葉遣いが悪いなんて想像できないだろう。グレーのゆるいウェーブのかかった、肩に触る程度の長さのボブに、優しそうな表情。それに、ゆったりとした緑のローブ。想像しにくかったら、ファ〇アーエ〇ブレムの女ルフレのローブ、あれをすこし落ち着いたデザインにして、メイン色を緑色にした感じだ。そんな少女が、まさか『お前』とか『ふざけんじゃねえよ!』とか言うとは思わないだろう。
「いやあ、でも鼻歌って思わずしちゃわないか?」
「私はないですねー」
「そうかあ」
「幸福感を味わってる証拠ですよ」
「友達がたくさんできたからな」
「えー?なんか、照れくさいですねー」
「・・・・」
・・・・・・・・居づらいんだなぁ~。こう言う女子女子しい空間って、居づらいんだなあ~。いっそ、オオカミじゃなくて女の子にでもなってりゃよかったのになあ~。そしたら、楽しくショッピングとかもできたりしたんだろうか。それも、楽しそうなんだなあ。
結局、このキャッキャウフフな会話と雰囲気は30分以上も続き、俺は、その間ずっと居心地の悪さを感じていたのだった。だれか、助けてくれ・・・・。




