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狼転移(仮題)  作者: 三軸走行男
一章 テロリスト退治編
16/43

13 アリスフィアの独白が昏い件

やばい。時間が足りない。ヤバイヤバイヤバイ



スタ..スタ..スタ...


「誰ですか?」

「くるるる・・・・」

「あっ・・・・」


足音に感づき、後ろを向くと、そこにはあのコロとか言うワンちゃんがいた。あの、私の足にかみついてきたやつだ。服とはいえ、ちょっとだけ怖かった。


「どうしたんですか、コロちゃん。ネリエルさんは・・・・?」

「くるるるる・・・・」

「・・・・?なにか、伝えたいことでも」


急に、この犬の目の前で演技をするのがバカらしくなってきた。これは、ただの犬だ。ペットだ。知性があっても、人間と話せるほど賢くもない。誰に告げ口することも、出来ない。


「・・・・あーあ。ばからしい。なーんでこんなワンコロの前でも演技しちゃったかな、私は」

「その通り。犬なんぞに構って、もしネリエルさんが来たら大変だ。今のうちに、それを摘み取って持ち帰らねば、計画がおじゃんになる」

「そうだ。私は今なりふり構っている場合じゃねえ。これを加工して売って、もう一度人生をやり直すんだ。ここじゃない、どこか違う場所で。」

「いい夢じゃないか。しかし、将来子が真実を知った時、どう思うのか」

「うるせえ。子供は親の所有物だ。それに、私は子供を作るつもりはない」

「それはどうかな」

「お前に何が分かるッ!」


先ほどから一々反論してくる声に向かって、一括する。しかし、そっちの方向に居るのは、綺麗にワンちゃん座りした、犬だけ。その犬は、急に怒鳴られて不安そうな顔で首をかしげている。


「今になって葛藤の声か。もう、後悔しても遅い。もしあの時に誰かに助けを読んでいればッ・・・・」

「今からでは遅い。それは、諦めからくるものでは?真実は違うとしたら?」

「・・・・かもな。だが誰に助けを求める?一時間くらい前に初めて会ったネリエルか?そこにいる犬っころか?衛兵か?」

「衛兵が一番よいだろう」

「だろうな。だが、表向き衛兵はずっと奴らの事を調べている。内部に、妨害工作している奴らが居ることも知らずに。衛兵に相談しても、そいつらに殺されるだけだ」

「ネリエルは」

「あいつは何も関係ない。ただの、一般人だ。巻き込むわけにはいかないだろ」

「犬っころはどうだ?この頭の悪そうなやつは。任せてみてはどうだ」

「こいつは論外だろ。どうやって助けを求めればいい」

「言えばいい。その頭の悪そうな犬っころに、助けてと」

「・・・・そう言えば助けてくれるのか」

「頭が悪そうか?こうみえても、頭脳派だ。任せろ」

「・・・・ぉ前は」


ハッとする。もしかしたら、これは葛藤の声ではないんじゃないかと。この響くダンジョンの中だから、ただ単に反響していただけなんじゃないかと。自分自身が葛藤しているから、葛藤の声だと思ったんじゃないかと。ともすれば・・・・ここにはオオカミしかいない。


「・・・・助けて」


知らぬ間に、目に涙が浮かんでいた。何年も前に出し尽くして枯れたと思っていた、涙が溢れていた。


「任せてください」

「ね、ネリエルさん、騙してたのに・・・・ぎゃああああああああ!?」

「「え?」」

「ぎゃあああ!!!ぎゃあああああ!!!」

「え、感極まって抱き着いてくるシーンじゃないんですか?なんで叫ぶんですか!!」

「あっ、ネリエル、腕!股!」

「股って言うな、太ももっていえ!」

「ぎゃああああ!!!もう悪いことしたりしないから!!!騙したりしないって!!」

「太もも太もも!腕も!」


「ちょっと待ってて・・・・【ヒール】【ヒール】【ヒール】【ヒール】」


「で、なんでこんなことを」

「ね、ネリエルは人間なのか?」

「人間だよ。さっきまで、痛みでのたうち回ってた。で、なぜ」

「私は、違う町のスラムで生まれたんだ」



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



そこでは、秩序なんてなかった。強いものがいき、弱い者は死んでいった。私は、その後者の方だった。弱く、衰弱するしかなかったんだ。衰弱していき、死んでいった。そんな弱い彼らのように、弱い私は順調に死への道を進んでいった。


「君、大丈夫かい?」


彼は、貴族ではなかった。ただの、平民。だけど、スラムに住む子供たちからすれば、裕福な人たちに映った。


「あんた誰」

「君は?」

「名前はない」

「そうだな。じゃあ、キミの名前はアリスだ。」

「あんた、誰」

「僕の名前はメーガン。よろしく」


彼は、そういって私に微笑みかけながら、私の手を取った。彼の後ろから除く太陽が、私を祝福しているように見えた。『もう大丈夫だよ』って、私に柔らかい笑みを浮かべているように見えたんだ。だから、その手に力を入れて、立ち上がったんだ。


助けられた時から、一年たった。あのスラムに居た頃に比べると、メーガンの家に住んでることは、本当に幸せだった。お母さんは優しいし、ご飯は美味しかった。もともとは食が細かったから、お腹いっぱい食べれた。


「メーガン、どうしてあの時私を助けたんだ?」

「ん?すごいいまさらじゃないか、その質問」

「昨日寝る前に考えたら、全部メーガンのお陰だって」

「・・・・本当にどうしたんだ?もしかして、僕に惚れた?」

「バカ。ただ、気になっただけだ」

「そうだなあ。僕は、あの日偶然道に迷って、スラムに来ちゃったんだ。で、君を見つけた。君は、三角座りで、膝を抱えてたね。生きることをあきらめて、目が死んでいた。でも、目は悔しさもはらんでいた。だから、助けたくなった。それだけだよ」

「そ、そうか・・・・」


感謝していた。あの時、メーガンに助けてもらえなかったら、今の私はない。そう考えていたし、それは紛れもない事実だった。私は、メーガンに本当に惚れていたのかもしれない。


その日私は、スラム街に向かっていた。きれいになった顔と、手入れされた髪と、可愛い服を着てた。スラム街に居た時に、世話になってた仲間に、あいさつしに行ったんだ。『私は元気でやってる』って。私の、十歳(うえ)だった兄のようだった人に。


「あいつら、今どうしてんだろうなあ。あいつらのことだから、今も元気なんだろうな」


変わらないと思ってた。私は、メーガンに拾われたときは5歳。その時、世話をしてくれた兄のような人は、十五歳。私は当時の兄と同じ年齢になってから、あいさつしに行ったんだ。それまで、踏ん切りがつかなくてな・・・・。変わらず、元気だと思ってたんだ。スラムは、あの時と違うってことを認識しつつも。


「・・・・よォ」

「おやおやァ、身なりの良い娘さんで・・・・」

「なんだお前ら」

「うおッ・・・・なんだコイツ。身なりのわりに言葉遣い汚ねぇな」

「・・・・おやおやァ反抗期ですかなァ?」

「私はココ生まれだ。」

「・・・・成程。道理で」


奴らはチンピラだった。スラムじゃなくて、普通に街中にもいるような、チンピラ。頭悪そうな喋り方で、スキンヘッド。もう片方は、白髪が混じった濃い灰色の髪、白衣に眼鏡、頬がこけていて、ニヤニヤしてる。見た目は、正反対なチンピラだった。でも、そいつらには共通点があったんだ。服装。何処かの軍人みたいな、服装。迷彩柄に、胸に国章を切り裂いたマークを付けてる。博士っぽい服装の方は、軍服の上から白衣を着て、白衣の棟ポケットに国章を切り裂いたマークを付けてる。


「お前ら、反乱軍とか言うイタイ組織の下っ端か」

「下っ端ですか。・・・・ショックですねェ」

「下っ端のまとめ役みたいなのをやってんだがなあ」

「何の用だ」

「う~んこいつも似てるんですよねェ・・・・」

「おいおい、またかよォ。それで前回懲罰食らってるんだぜェ?」


その自称反乱軍の奴らは、誰かを探しているようだったんだ。なんかの紙と、私を見比べて、『似ている』とかなんとか言っていたのを覚えてる。それで・・・・それで・・・・頭悪そうな喋り方の方が、ブレたと思った瞬間、目の前が真っ暗になった。




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