12 アリスフィアの裏の顔がどす黒い件!!!
自分の本性って、中々さらけ出しにくいですよね。友達にも、中々自分の本性を明かしたくなかったり。難儀なものです。
「どあああああああああ!!!振動がマッサージの様じゃあああい!!!!!」
「それはそれは!では、もう少し強くさせていただきまああああああす!!!!」
「え、ちょ!これ最大じゃないの!?あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"脚があああああああああああ」
「タイ式マッサージです!痛いけど、健康にいいので、我慢してください!!!!美容効果も、ありまああああああすっ!!!!!」
「ヤッタァァァァァァァァ!!!」
もう、これは大丈夫じゃないんじゃないだろうか?さて、ここでみんなにクエスチョン。俺の背中にまたがっているネリエルさんは、一体どういう風にまたがっているのか。・・・・はい、馬に乗るスタイルでね。つまり、またがってるわけです。そのままですね。その状態で強く揺れると・・・・。
「ぎっ・・ぎぎぎぎぃっ!!!!」
「い、痛そうですけど、大丈夫ですか?」
「温いわあああああああああい!!!!」
なにも、エロいことなんてなかった。ただただ、痛い。だろうな。だろうな!だって、こんなに揺れてるんだもん!!!擦れてるんだもん!多分、血でてるんじゃねえのかな!?地震大国日本の国民が乗ったとしても、多分怖い怖いというか痛い!!!それぐらい揺れてるからね(歓喜)!?ご安心なされよ、ネリエルには回復魔法があるから、心配はない。あの、膝を書きすぎて黒ずむ現象のようなことになることも、無い。因みに、ずっと揺れてるから『腹筋鍛える微振動マシーン』のように、足と腹筋が鍛えられるらしい。後に聞いた話によると、筋力が十二増えてたって。きょ、凶悪だ・・・・!!!
「い、痛くないんですか!?!?本当に!?痛かったら、止めますよ?」
「い、 痛くないわあああああ!アリス、待っとれよ!今、私が駆け付けるからっ!」
「そ、そんなに大事なのか・・・・っ!」
「そうだっ!助け合うって!助け合わなきゃって言ったから!!!」
「・・・・」
『ダンジョンなんて、命の危険と隣り合わせなんだから、助け合わなきゃ。』
『そ、そうですよね!!!』
「命は軽くなんてないから!!!」
『死んでも、俺たちに責任は負えないんだぞ』
『死なないように助け合えばいいんですよ』
「そうだよな。そうだよ、間違いないよな。すまん、もうちょっとだけ激しく揺れる。絶対に見つけるから、もう少し我慢してくれ」
「分かり・・・・ましたっ!!!」
俺は、ネリエルに断ると、さらに加速した。加速したのは少しだけだが、揺れは結構大きくなる。その痛みにネリエルは、唇をかみしめながら、返事をする。俺は、背中に感じるぬめっとした感触に気づかないふりをして、前を向いた。
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「こ、心が落ち着く薬草は、たしか一階層の端っこらへんって・・・・このへんだよね」
ぶつぶつと呟きながら、歩みを進めるアリスフィア。どうやら、コルダムによって驚かされて乱れた心を、何とか、治そうと心の落ち着く薬草というものを探していたらしい。
「こ、これだ!これこれ!これだよ、間違いないよ!」
アリスフィアは、ダンジョンの隅っこに生えている藻の近くに群生している、カエデのような草を手にすると、テンションを上げるように叫び、においをかいだ。
「こっ、これだぁっ!間違いない!ババアの薬草図鑑に書いて・・・・店長の薬草図鑑に書いてありましたっ!!!!」
一瞬声が低くなって、言葉遣いも荒くなる、アリスフィア。テンションが上がり過ぎて、声が表がえっただけで、元々粗暴な性格だというわけではない。断じてない。
「こっ、これ確かいくらで売れるんでしたっけ?たしか、キロ五百万でしたよね・・・・ごひゃっ!?うっひょぉ!宝の山じゃねえか!!!!」
ひゃあっほうとテンションを隠すつもりもなく、開放させる、アリスフィア。これは、別にお金の欲に目がくらんでいるわけではない。あれだ。その、友達の家ですっごい値打ちのするもんを見つけて、テンションが上がるやつだ。『すっげえ~』みたいなかんじで。
『言い訳が見苦しいですよ』
『うるせい。っていうか、マジでなんでなんだ』
『何がです?』
アリスフィアの後ろの曲がり角に、影が二つ、こそこそと話し合っていた。
『あれ、アリスフィアだろ?世渡りが下手そうな、天然で不憫な』
『ですね』
『あれって、やばい葉っぱだろ?』
『ですね』
『売ったら違法だろ』
『単純所持も違法です』
『だよな』
『なんでですかね』
『なんでだろう』
『金が欲しかったんじゃ?』
『そんな気がしてきた』
アリスフィアから気づかれない位置で、ぼそぼそ、こそこそと話し合う俺たち。でも、本当に何でなのだろうか。確か、アリスフィアは、『高いポーションを壊して、弁償の為にダンジョンに来た。』と、言っていた。手段はともかく、その割にはテンションの上がり具合が半端じゃない。ポーション分を弁償すると言って、そんなにテンションが上がるだろうか?いいや、自分の為に利用するなら、テンションは上がるだろう。しかし、他人のためや自分のした失敗を取り戻すときは、そんなにテンションが上がるもんじゃない。
『何で金が欲しかったんでしょう』
『そんなの、俺も金が欲しい』
『ですよね』
『そういうことだよ』
『そういうことですか。っつか、アンタオオカミじゃないですか』
『え、オオカミはお金が欲しくないと思った?どうやってドッグフード買えばいいの』
『食べるんですか?』
『・・・・案外イケるよ』
『やっぱり犬じゃ『犬じゃない。俺は、犬じゃない』
何度も言うけど、俺は犬じゃない。撫でられたら気持ちいいし、フリスビーを投げられたら多分ジャンプしてとる。ドッグフードは美味しいし、生肉も食べれる。焼いたほうがおいしいけど。だけど俺は犬じゃない。ちゃんと母親もオオカミだし、オオカミの長老から『子』と呼ばれている。ホネも意外とおいしい。だけど、犬じゃない。
『俺が犬じゃないっていうのは分かり切ってるからいいんだが、『え』分かり切ってるからいいんだが!!!お前、それどうすんの?やっぱ治さないことにしたの?』
『あ、これですか?』
これ、と言って、ネリエルは太ももから出血しているそれを指す。うん、それだよね。どう考えても。っていうか、あの後ゴブリンに遭遇して、そのケガのせいであまり動けなくてさらにケガしてたからね。
『アイツ、あんな同情を誘うような言い方して、結局は自分の金もうけのためでしたからね?もう懲らしめてやろうかと思って』
『いや、まあそうだよなあ。でもさ、その腕の傷は治したら?筋肉見えてるよ』
『うおっ、ホントだ。・・・・おえっ』
『自分の傷見てえずくなよ・・・・』
『きもちわるっ』
『自分を見て気持ち悪って言うなよ・・・・』
『傷ですから。私自身が気持ち悪いわけじゃないですから』
憤慨したように俺に抗議するネリエル。いや、別に俺もそんなつもりで言ったんじゃあないんだけどなあ・・・・。まあ、傷も自分の一部やん!?もとは傷のついてない皮膚と健康な筋肉のわけだし!!!
『分かってるよ。で、どのタイミングで出るか決めた?』
『え、私が決めるんですか?』
『え、俺!?あんなのの前に出てくタイミングを俺が決める!?』
『オオカミさん男でしょう!?』
『知らねえよ!?俺、オスなのかな!?メスなのかな!?』
実は、オオカミになった後の性別を良く知らなかったりする。長老には小僧と呼ばれることもあるし、母さんからは名前で呼ばれたことがないな。多分、オオカミには名前という概念はあまり浸透してない。だから、自分の性別がどっちなのかが分からない。
『ええ!?何で自分の性別把握してないんですか!』
『だって、前世は男だもん!そっちに引っ張られてるかもしれんやん!』
『しらん!そんなの知るか!』
『ええ!?男だからって言い始めたのそっちじゃーん』
『まあそうですけど』
『なんだそりゃ。・・・・で、結局どっちが行く?』
『どうしましょう』
俺たちは、この一見やばい奴に見える、天然の皮をかぶったやっぱり本当にやべーやつの目の前に、どちらがどのタイミングで出るかを決める権利を、擦り付け合うのであった。余談ではあるが、決まったのは十五分後である。




