5話
一人称結構難しいですね。
俺は佐藤隆太だ。現在市内の高校に通ってる高校生だ。
最近のはまりは異世界ものだな。やっぱし主人公のチートは心が躍るよな!あー俺もこんな風になれたらいいなー。まぁ俺の趣味についてはここまでにしておこう。俺は今地獄にいる。正確に言うといままでいた世界が地獄になった。それは今朝にさきのぼる。
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「はぁー俺も異世界いきてーなー」
「何言ってんの?頭わいちゃったの?」
相変わらずの毒舌で妹は俺のライフを削っていく。
「相変わらずきついな。加奈は。」
「うるさい!とりあえず気持ち悪いからとっと着替えて学校行って!」
最近の妹は機嫌が悪い。これはあれではなかろうか。反抗期というやつだ。まぁ俺は心優しい兄だから、そんな妹に対して優しく接しておく。
「おけおけ、わかったよー。」
「分ったならとっとと着替えてきて!」
朝から妹の怒声を浴びながらとりあえず着替えに部屋に戻ろうとして、リビングから出ようとしたんだ。そしたらリビングの窓が割れる音がしたんだよ。
「大丈夫か!加奈!」
「お兄ちゃん、助けてぇ……」
そこには今でも思い出すだけで吐きそうなんだけど、母さんが虚ろな目をしながら妹の足に噛り付いてたんだよ。血はドロドロ出てるし。
「なっなにやってんだよ!やめろよ!」
俺は母さんをとりあえず妹から離した。
「大丈夫か、加奈!とりあえず俺の後ろにいろ!」
「うぅ、脚がぁぁぁ!」
加奈はボロボロな脚を引きずっていって、俺の後ろに隠した。その間にも母さんは俺たちの近くへゆっくりと近づいてきてた。そんな時に聞きなれたエンジン音が聞こえたんだ。このエンジン音は親父の大好きなバイクのものだった。だけど親父は夜勤で帰って来るまでもう少しあったはずだ。
だから俺はなんで帰ってきたんだと思ったんだ。すると
「隆太今すぐここから離れるぞ!母さんと加奈に声かけろ!」
玄関を蹴破る勢いで入ってきた親父は大声でそう言った。
「親父!母さんがおかしいんだよ!妹も母さんに噛み付かれてしまったし!」
すると先ほどまでの勢いが一瞬でなくなってしまった。
「そんな……なぜだ…。」
「どうしたんだよ!親父⁉︎」
「お前だけでも逃げてもらわないとな…」
親父は急に覚悟を決めたような顔をした。一緒に過ごしてきたなかで一番気合いの入った顔で、見た時は思わず驚いてしまった。親父はその後母さんをリビングに閉じ込め、俺と妹を連れて玄関に連れて行く。
「いいか隆太、お前は今から学校へ行け。あそこは避難所だから誰かしらいるはずだ。絶対に生き延びろよ。」
「待てよ。急にどうしたんだよ!なんで逃げるんだよ?それより加奈を病院に連れていかないと!」
「もう間に合わないんだ……。俺は昨夜会社での勤務中に全てを見てしまったんだ。今の母さんみたいな人に同僚が噛み付かれて、次はそいつが母さんみたいになる。まるでゾンビみたいにな。」
「なにいってんだよ!そんなことあるわけないじゃないか!」
「なら耳を澄ませてみろ」
その時の音は地獄の叫びのようだった。
鳴り響くクラクションやサイレン、最後の気力がこもった断末魔、そして唸り声。
「いいかこの世界はもう終わったんだ。母さんはゾンビになったし。加奈もこれからゾンビになる。だからお前一人で生きていけ。」
「そんな…。というか親父も噛まれたのか⁉︎」
「いや、噛まれてなんかないさ。ただ俺はあいつと加奈と一緒にいてやりたいんだ。だから俺のことを忘れて逃げろ。」
「嫌だ!逃げるんだよ!2人で!」
「頼むから逃げてくれ、最後のわがままだからさ。」
あの時の親父の顔ほどむかついたことはない。本当に自己中な顔だった。
「くそっ!離せよ!やめろ!!」
「じゃあな隆太。」
俺は親父に家の外に放り出された。家の鍵も閉められて入れない。
「くそっ俺が何をしたっていうんだよ!クソがァァァ!」
俺は叫んだ、そして泣いた。そして決意した。
「絶対生き残る!親父の願い通り!」
俺は絶対に死なない。なんとしてもだ。そのためには最強にならないと。そしてまた今ほどチートな主人公になりたいとは思ったことはなかっただろう。
そんな思考をした自分に涙ながら苦笑いをした。
「うん、やっぱ俺にはそんな重い雰囲気は似合わないな。よし、楽しみながらこの世界で絶対生き残る!」
これが俺だな。というか我ながらシリアスさん仕事してくれないな。まぁ俺は明るいのが一番だよ。はぁチート欲しいなー。