28話
騎龍隊が敵上空に着いた時そこでは死闘が繰り広げられていた。空を飛ぶゾンビがゾンビカラスだけでないかもしれないという話を聞いていたが、それは当たってしまったらしい。彼らの目には鷹や鳩など様々な空を飛べる生物がゾンビ化して、ドラゴンたちを襲っていたのだ。ドラゴンたちはリーダーである竜の指揮下の元なんとか耐えている。
「なんだよあの数……」
「あれに俺たちは勝てんのか?いやそもそも戦う必要もないんじゃ……」
「無理だ。絶対無理だ。勝てっこない。どうすれば」
隊員たちは出発の時とは打って変わって恐怖で士気は下がりきっていった。
たしかにこんな万を余裕で超えてくる集団が襲ってきているのを見たのならなってもおかしくない。
「集中しろ!お前たちは訓練を積んできたんだ!そんな簡単に死にはしない。おまけに魔法までかかってるんだ!」
隊長はなんとか士気を高めようとするがあまり上手くいかなかった。
(くそっ…士気が下がりきってるな……でも早く作戦実行しないといけないしな…こんな気持ちのまま行っても無駄に命を散らすだけだが俺たちが行かなければみんな終わっちまう。やるしかないか!)
そしてこの作戦を行うためには援護が必要なのでリーダーである竜に声をかける。
「竜!聞こえるか!?俺たちは騎龍隊だ!今から敵のど真ん中に爆弾を落とす!俺たちがど真ん中に行くまで援護してくれ!」
「ガァァァァァァ!」
竜は理解したらしく大声で叫ぶ。
するとドラゴンたちは一斉にドラゴンブレスを吐いた。おかげで目の前にいるゾンビたちはいなくなった。騎龍隊の者達もその光景に目を奪われたようだ。圧倒的な力。蹂躙できる力。それが自分たちの味方である。それだけ自分の心はだいぶ安心できる。
「ガァ!」
「行けと言っているのか?よし!お前らいつまでビビってるんだ!援護には竜たちも入る!行くぞ!騎龍隊!」
「「「おう!」」」
先ほどのドラゴンたちの力を見て自分たちにこれだけ圧倒的力を持ったものがいるとわかり、勇気を貰ったのだろう。騎龍隊は士気を持ち直し、敵のど真ん中に飛んで行った。
しかし、いくら倒したと言っても目の前だけで後方に待機していたゾンビたちは倒せていない。案の定突っ込んでくる騎龍隊に対してゾンビたちは襲ってくる。
「お前ら散弾をお見舞いしてやれ!」
隊長が叫ぶと隊員たちは向かってくるゾンビに散弾式創造銃を向けて発砲した。すると50は超えていたであろうゾンビたちは殆どが全滅した。たった一回の一斉射撃だけでだ。
「その調子だ!よし今のうちに行くぞ!」
「「「おおおおおおお!」」」
自分たちの持つ武器の強さを改めて実感した隊員たちは士気をさらにあげていく。
基本的にはゾンビたちから逃げながら、どうしてもの場合は倒して道を開く。普段ならこれだけあちこちにゾンビがいながらかわしながら進むなど無理なのだが、身体能力向上の魔法によりドラゴンの機動力についていけているからだ。
「敵の真ん中に到着!」
「よしカウントダウンの開始だ!」
騎龍隊たちはゾンビたちの間を潜り抜けて、無事に到着した。実際は身体にクチバシで突っ込まれた者もいたのだが、俊の創造した防具のフレーム部分に奇跡的にあたり、普通なら身体に刺さってもおかしくなかったが今も無事である。そして隊長は爆弾投下のカウントダウンを始める
3
騎龍隊の者たちは今か今かと待ちわびている。
2
ゾンビたちが近寄ってきたため各自迎撃を行う。
1
一瞬だけ敵から目を離し、自分の相棒に手を当てる。
「今だ!」
「「「「「「落とせ!」」」」」」
隊長の合図と同時に各自ドラゴンたちに爆弾投下を指示する。爆弾はドラゴンたちの手によって運ばれていて、放すことで投下する原始的方法だ。
「よし!任務完了だ!今すぐこの場を離脱して竜たちの撤退の援護にまわる!竜たちはそろそろ魔力も尽き始めてるころだ!急ぐぞ!」
実はドラゴンもまた俊と同じように魔力を扱う。ドラゴンブレスの使用時に魔力を消費する。ドラゴンたちは持ち前の力でその鋭い爪を使ってゾンビたちを倒したりして出来るだけドラゴンブレスを使わないようにしていたが数が多く、前線を維持するためにはどうしてもそれなりに使ってしまったのだ。そのため騎龍隊は爆弾を投下したあとはドラゴンたちを拠点まで撤退させて、拠点で補給を行ったあと空の敵と戦うことになっている。
「とりあえずゾンビは無視していい!まずは合流が先だ!」
騎龍隊はスイスイとゾンビたちの間を抜けていく。ドラゴンたちも行きは爆弾を持っているため落とさないようにそこまでスピードを上げなかったが、今はそんなものはないのでとても速い。騎龍隊の者達はいくら身体能力向上の魔法がかかっていてもドラゴンの全速力はしがみつくだけが精一杯だと理解したのか。必死にしがみついて、振り落とされないようにしている。
「お、合流できたか。しかし龍の全力に俺たちがついていけないのはつらいな」
「わかってるならやらないでくださいよ。心臓がまだバクバク言ってますよ……」
「そんなのあの光景ほど怖くないだろう。ほら見てみろ」
合流の仕方に文句を言った隊員に対し隊長は自分たちが先ほどまでいた方向を指す。
そこでは一面が真っ黒になっていた。
「あれがあの爆弾だ。恐ろしいもんだな。あれだけの数を一瞬で灰にしちまうんだぞ?」
「…………俺ゾンビじゃなくて良かったです」
「さて、そんなことより撤退だ!あれは鷹か?やっぱり速いな。追いつかれる前に撤退する!竜もそれでいいか!?」
「ガァ!ガァァァァァァ!」
竜も同意したらしく、ドラゴンたちに声をかけて撤退させる。
「殿は俺たちに任せて先に行ってくれ!」
ドラゴンたちは殿を騎龍隊に任せて全速力で拠点へと撤退した。
騎龍隊も拠点に出来るだけ速く進みながら鷹のような速いゾンビを撃ち落としていく。それをずっと繰り返していて、拠点まであと1キロというところだった。
後方から追いかけてくるゾンビたちの群れが爆散した。
「なんだ!急に爆発したぞ!」
「だれかなんかしたのか!?」
「してないし、そんなこと出来る武器持ってないぞ!」
「落ち着け!多分俊さんの魔法だ!」
隊長が原因をいち早く突き止めて、隊員を落ち着かせる。
「俺たちがいては誤射が起きる!今のままでは他の奴らが撃てない!全速力だ!」
「またですか…」
隊長の指示によりドラゴンたちは隊員お構いなしに全速力で拠点に向かう。おかげで30秒もしないうちに到着した。
「よくやった!お前らは竜の家に行って、龍を休ませろ!お前らは補給を行ったあとひとまず壁での防衛についてもらう」
武装部門隊長の原田が労いの言葉とともに次の指示を出す。
騎龍隊はそれに従い龍の家で龍を休ませて、自分たちは補給を行い、次は壁上で敵と再度戦い始めた。




