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4話 初陣。第一独立遊撃艦隊、出撃!


 SC 179.01.04



 予定通り、0:00丁度に抜錨して出航。本当に錨を上げた訳ではないですよ? 例えですよ例え。

 目標はラウム2と地球の中間よりは、地球側の宙域です。


 ちなみに、ラウム2での毒ガス作戦は別の人が実行したみたいです。確か、トミノとかいう少佐の部隊らしいですけど、詳細は不明です。


 私たち親衛隊第一独立遊撃艦隊の今回の作戦は、ラウム2の15バンチコロニー、通称、アイリッシュ・セッター。このコロニーを、アフリカのシャバカタンガに落とすのを邪魔してくるであろう、連邦軍の側面を叩くことです。

 敵の側面を叩くって、独立遊撃艦隊にはピッタリの仕事の気がしますね!


 コロニーが大気圏突入時に崩壊しないように、外壁を補強工事している部隊を間接的に援護するのです。当然、連邦軍が邪魔してくるはずですので、その連邦軍を排除してコロニーを守るのが、私たちの役目なのです。

 叩くとか排除とはいっても、こちらは僅かに5隻の小艦隊、かたや相手はハンドレットを超える大艦隊のはずですから、頑張っても精々が嫌がらせくらいしかできないのかも知れませんが。


 それはさておき、


 コロニー落としって戦犯になんないよね? イオンが負けた場合を考えると心配です……

 私はただの遊撃部隊、ただのMOX部隊の小隊長です。うん、多分大丈夫なはずだ。


 コールサインは管制がマグダラ、モックス隊がローレライで、01小隊のシーマ隊長から順番ににローレライ01、私がローレライ02、最後の06小隊のミユキ軍曹がローレライ18。

 これが、今作戦のコールサインです。コールサインは作戦ごとに変更する場合もあるし、継続して使う場合もあるみたいです。イマイチ分かりません。


 連邦に対して、少しでも欺瞞できればと思って、カモフラージュの為にコールサインを使っているのかな? もっとも、切羽詰った時には名前で呼んじゃいそうになりそうですよね。






 SC 179.01.08



「リュックサックを背負ったゼナって、なんか素朴な感じがして可愛いよね」


「リュックサックって、確かにリュックサックに見えなくもないけど、あれは冷却材の入ったタンクだよ」



 最大望遠で、コロニーの外壁に取り付いて、作業しているゼナを見て漏らした感想が、「リュックサックを背負ったゼナ」でした。だって、カワイイんだもん。


 現在、私が居る場所はリリー・マルレーンの艦橋です。ちなみに、ホワイトタイガーの毛皮なんてありませんよ?

 暗黒面に墜ちなかったシーマ様は、上品な淑女なのですから。



「冷却材ってことは、モックスの稼働時間を延長させる為ですよね?」


「そうだろうね。母艦に帰って冷却する時間すら惜しいんだろう。それに、ブーゲンビリア輸送艦では、モックスの冷却できないのも理由だろうね」


「だけど、コロニーの外壁補修ならば、コロニー公社の作業用ポッドを使えば、その分、浮いたゼナを前線に回せたのにね」



 そう、素朴な疑問を感じたのだ。コロニー公社の作業用ポッドを使って作業をすれば、その分ゼナを前線に回せたはずなのだ。

 戦力の集中運用。これは戦争をするにあたっての、大原則のはずなのに、戦いは数と知っているであろうはずの、ハンスが、戦力になるはずのゼナを工兵に使って、遊兵というか自分から無力化しているのが腑に落ちないのですよ。



「そういうことは、アドルフ総帥かハンス閣下に言っておくれよ。マリアが言うのなら、お偉いさんも少しは耳を傾けてくれるんじゃないのかい?」


「私はただの子供ですよ」


「ただの子供はモックスなんか操縦しないよ。それも腕はイオンで一番だなんて、SF小説もビックリだよ」


「腕が一番なのは認めますよ。えへん」



 努力もしないで、転生チートでごめんなさい。でも、私は私にできることをするだけです。イオンが負けない為にもね。

 おそらくその為に、私はこの世界に転生したのだから。そう思わなければ、既に、二十億からの人が死んでる、こんなクソったれな戦争なんかやってられないですし。



「自分で認めちゃったよこの子は。まあ、謙虚も度が過ぎれば嫌味になるっていうし、それでいいのかもね。さて、そろそろ時間だよ。準備しな!」


「うん、格納庫で待機してるね」


「ああ、私も直ぐに行く。カッセル、あとを頼む」


「了解。マリア様も姐さんも気を付けて、御武運を!」




 今回出撃する、MOXの武装は、戦術核弾頭搭載のバズーカ装備のゼナが12機。マシンガン装備のゼナが6機の編成だ。バズーカ装備のゼナの護衛に、各小隊に1機マシンガン装備のゼナを配備しているのだ。私はもちろんマシンガン装備です。

 敵のサーベルフィッシュを馬鹿にするのは危険だ。一流のパイロットが相手なら、ゼナでも不覚を取るのはシミュレーターでも実証済みなのですから。


 戦術核弾頭は、一撃でアムンゼン級戦艦を撃沈できる威力だ。しかし、ここで疑問が残る。

 サイネリアスに乗ったカトーが、『ラバウルよ、私は帰ってきた!』といって、連邦艦隊を壊滅させたけど、戦術核には、そこまでの威力は無いのです。

 いくら核兵器が強力といっても、宇宙では大気圏内みたいな威力は望めないのです。大気がありませんので、爆風による被害拡大が望めないのであります。


 そうだとしたら、カトーがラバウルで使用したのは、戦略核だったのかな? うーん、謎ですよね?



 そんな、他愛もないことを考えていたら、連邦艦隊との交戦距離が近づいてきました。敵はコロニーの落下を阻止するのに夢中で、こちらには気が付いてないみたいで助かりましたね。

 ロマノフスキー粒子という不思議な粒子のおかげで、レーダーが無効化されているのが大きいみたいです。


 敵の左側面、時計でいったら7時から8時の方向、やや後方の下から敵艦隊に接近します。馬鹿正直に、敵と同じ高度で接近するのは、宇宙空間では、まさしく馬鹿がすることなのですよ。

 なんの為の宇宙空間なのかと、問いたい。小一時間、問い詰めたい。人は宇宙に上がっても、後ろと下と上は死角なのですから、その敵の死角から忍び寄るのは、戦の常道とも言えます。


 それで、副中隊長の私が任せれているのは、私の02小隊と05、06小隊の合計9機です。シーマ様の01小隊と03、04小隊は上から敵に接近しています。

 つまり、上と下から敵を挟み撃ちの予定です。上の方が多少危険度が高いのかな?



 哨戒のサーベルフィッシュがウロチョロしていたので、サクッと墜とします。哨戒だけで迎撃がないのは油断しているのかな?

 油断してくれてるなら好都合。迎撃がくる前にやりましょう。殺られる前に殺る。これ、戦争では当たり前のことですしね。



「レイcじゃなかった、05と06は手前のヴァスコダガマを殺って! 私は魚が出てくる前に、ネルソン輸送艦を叩きます!」


「「了解!」」


「近づき過ぎて爆発に巻き込まれないように注意しなさい! 自分の撃った核の爆発で死ぬなんて、マヌケなことは許しませんから!」


「「はいっ!」」


「対空機銃なんてそうそう当たるもんじゃないから、訓練通りにやりなさい!」


「「了解しました!」」



 うん、二人とも素直で良い子だね。子供の私の言うことを、ちゃんと聞いてくれるんだもんね。



「ローレライ04より、ローレライ13と16へ、敵はよりどりみどりだ。指揮下と共に吶喊せよ! ただし、冷静にです!」



 ロマノフスキー粒子のおかげで雑音が入るけど、この距離なら通信は可能だ。



「ローレライ13了解!」


「おなじく、ローレライ16了解しました」



 うん、メルダース少尉もクリス・アルフォンス少尉も、あとは指示しなくでも大丈夫でしょう。伊達では小隊長は務まらないもんね。


 さて、私もちゃっちゃとネルソンを屠りますかね。魚がウヨウヨと出てきたら面倒ですしね。


 どうやら、シーマ様の方も取り付いたみたいですね。っと、一機爆散したけど、あれは、つじーん機か? あれでは、脱出ポッドがあっても助からないよね。ナムナム。

 モックスも万能ではないってことが、初戦で判明したのは僥倖なのかも知れませんね。つじーん、君の死は無駄では無いのだよ。多分。



 そんなこんなで、私は敵艦隊の陣形の中に入り込んで、輸送艦か補給艦か知らないけど、ネルソン級を沈めまくりました。敵の陣形の中に入って分かったのですけど、敵の陣の中って思っていたよりも危険度が低いみたいなのです。

 少し頭を働かせて考えてみれば、分かったことなんだけど、敵は同士討ちを避ける為に、私に向かって発砲できないのです! まあ、「同士討ちなんて、そんなの関係ねぇ!」そんなキチガイがいたのならば、また話は違っていたでしょうけど。



 そんな私の戦果は、ジャジャーン! ネルソン級、撃沈8隻。大破12隻の大戦果です!


 そこ、弱いものイジメって言うな。


 撃沈できた艦は、腹の中に魚が入っていて誘爆させれたのが大きいのかな? 魚がコロニーの方に出払っていた艦は、みんな大破止まりだったみたいだしね。

 あのネルソン級って無駄にダメージコントロールに優れているみたいだから、こればっかりは仕方ないよね。無駄にデカいともいうけど。


 え? 戦闘描写が無いって? はははっ、ナイスジョーク。ターキーシュートなんて、恥ずかしくてお見せできませんってば!

 け、けして中の人が手を抜いたとか、戦闘描写が苦手って訳じゃないんだからね!」



「さっきからマリアは、なにをブツブツ言ってるんだい? また、いつもの病気かい」


「へへへー 思い出し笑い?」


「なにゆえ疑問系なのさ」


「えへっ、それよりも、みんなの戦果は出揃ったよね」



 私たちは無事に帰還して、現在はリリー・マルレーンの艦橋にいます。



「ああ、それも、とんでもないオマケ付きでな」



 シーマ様は意味深な笑みを浮かべましたけど、なんだろう? それで、みんなの戦果はこちらですよ!



 撃沈のみ抜粋


 シーマ→ヴァスコダガマ×3。リリアンヌ→ヴァスコダガマ×2。マリア→ネルソン×8。レイチェル→ヴァスコダガマ×2。エクレア→アムンゼン×1。クルト→ヴァスコダガマ×1。メッサー→ヴァスコダガマ×1。

 ナカガワ→ヴァスコダガマ×2。メルダース→ヴァスコダガマ×2。ルーデル→アムンゼン×1、ヴァスコダガマ×2。ハルトマン→ヴァスコダガマ×1、ネルソン×1。

 クリス→アムンゼン×1、ヴァスコダガマ×2。アリス→ヴァスコダガマ×2。ミユキ→ネルソン×1。


 計 アムンゼン×3。ヴァスコダガマ×20。ネルソン×10。合計33隻、撃沈確実 他にも25隻の艦を中破または大破。


 非撃墜×2。ムタグチ(救助、軽傷) ツジ(戦死)




「凄い数字ですね……」


「ああ、撃沈の四分の一近くは、マリア一人の数字だけどね」


「まあ、ネルソン級だけですけどね」


「それでも一人で出せる数字じゃないさ。私の予想では、良くてこの数字の半分と予想していたのだけどね。非撃墜も最低でも倍は覚悟していたよ」


「良い意味で、予想が外れたと」


「流石に実戦だと、シミュレーターの様には行かないと思っていたのだが、連邦軍がマヌケだったのか、我々が上手くやったのか判断に迷うね」


「確かに判断しづらいですね。それで、オマケってなんです?」


「ディアソン提督の旗艦をエクレア准尉が沈めた。轟沈だから、まず間違いなく戦死は確実だろうね」



 ニヤリと笑ったシーマ様が、ディアソン提督の旗艦が沈んたと言いました。あれ? 原作ではディアソン提督って確か、ルナツリーに逃げ込めたんじゃなかったっけ?


 そう考えると、もう、原作の筋書きで考えるのは止めた方がいいみたいですね。そうじゃないと、思わぬところで足元をすくわれかねませんし。

 原作回帰への揺り戻しは…… うん、それを考えるのは止そう。それは無いと信じなければ、こんな世界、やってられないですし。



「あれ? でも、ディアソン提督の旗艦っていったら、艦隊中央に陣取っていたんじゃないの?」



 そう、私たちは、ディアソン艦隊の左側面から攻撃したのだ。当然、艦隊中央に居るはずのディアソン提督の旗艦を撃沈させるには、艦隊の奥深くまで侵入しなければ、届かないはずなんだけどな?



「ヴァスコダガマを狙った、エクレア准尉の核バズーカは、運が良いのか悪いのかヴァスコダガマを外れて、ディアソンのアムンゼンに届いたって訳さ」


「外れた流れ弾でしたか…… しかし、よく届きましたね」


「エクレア准尉のゼナは、三枚目まで深入りしていたからね。マリアが艦隊の奥深くまで突っ込んで暴れていただろ? 多分、それに引きずられたんだろうねぇ」



 えーと、もしかして半分は私の所為だったりして? でも、旗艦撃沈はエクレアの実力だよね? うん、運も実力のうちって格言もあるしね。そう考えましょう。

 しかし、エクレアは危なっかしいなぁ。少しでも安全マージンを取れるようにと、手前のヴァスコダガマを殺れって命令したのに、三枚目まで深入りするとは。今度、特訓でもしますか! 


 私? 私は一応、周りが見えているつもりですから、オホホホ。

 今度から、もう少し周りを見ることにしよう。私も初めての実戦で周りが見えてなかったみたいです。



「えーと、こういうのを、持っているって言うのかな?」


「持っている?」


「はい、旧世紀の日本の格言みたいです。運が良いとか、そんな感じのニュアンスですかね?」


「なるほど。ヴァスコダガマを狙った外れ弾が、たまたまディアソンの乗った旗艦を撃沈させるには、運も必要なのかも知れんな。エクレア准尉は、その運を持っているということか」


「そうなんでしょうね」



 そんなこんなで、私たち親衛隊第一独立遊撃艦隊の初陣は、ディアソン艦隊の三割以上の艦に打撃を与えて終わりました。この結果が、コロニー落としにどう影響するのかは、まだ誰にも分かりません。

 もう既に私の知っている歴史とは、違う歴史を歩みはじめているのだから。


 それにしても、脱出ポッドは役に立ったね。むっちーは軽傷で生き残ってますしね。つじーんは功を焦って先走って自爆しちゃいましたが! 護衛のマシンガン持ちが何もしないで、突っ込んで行って死んでどうするの?

 これが、つじーんとむっちーの器の違いなのかも知れません。まあ、そんな器なんていらないですけど。彼は台所の某G並にこれからも生き残る気がしますね。


 うん、この予感は、なぜか当たりそうな気がする。もしかして、これがネオヒューマンの予感ってヤツなのかも知れない。

 こんなのがネオヒューマンなら、私はオールドヒューマンでいいですけどね! 適正が無くて良かったのかな?


 それで、今回の戦闘では、地味ながら護衛という自分の仕事を果たしたロレンツ・ドアン曹長とシュミット伍長には拍手を送りたいと思います。


 パチパチパチ。


 本当は彼らも、敵艦を撃沈したかったはずなのです。でも、自分の任務はバズーカ持ちの護衛って、割り切れるのは軍人の鏡だと思います!

 彼らとおなじく、マシンガンを持っていた私が言えた義理ではないのかも知れませんが。


 だけど、私は良いのだ! サーベルフィッシュが出る前にネルソンを叩いているんだから、それも護衛になっているのです!

 それに、私が中隊の半分の指揮官だったしね。私の方の部隊は全機無事に帰還できたから良しとしよう。


 うん、反省終わり。ラウム3に着くまで惰眠を貪ることにしよう、そうしよう。

 それでは、おやすみなさい。



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