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3話 開戦


 SC 179.01.03



 ついに、この日が来てしまった…… あの有名なナレーションが頭の中でリフレインしているマリア・アインブルクです。


 それで、私がいま居る場所はといいますと、イオンズムシティの親衛隊本部で、シーマさんと一緒に仲良くまったりとお茶を飲みながら、大型モニターを見ていたりするわけなんですよ。


 不謹慎ですけど、イオンズムシティは平和です。宇宙で戦争が始まっただなんて、信じられないくらい平和です。


 結局、ラウム1、2、4の運命は、私では変えられなかったのは残念だけど、こればかりは仕方ないよね。うん、私は悪くない。ちゃんとお姉ちゃんには、

「各ラウムは中立を宣言させた方が、イオンの得になるんじゃないの?」そう言ってみたもん。


 それに、お姉ちゃんも、各ラウムに一応は伝えたって言ってたしね。まあ、私の意見で伝えた訳ではないと思うけど。私の意見で国が動いたら、それはそれで、アドルフ総帥の頭の中を疑わないといけなくなるしね。

 一応、エクスキューズの為に、おざなりに伝えた気もするけど、それはそれってことで。大方は、伝えたけどイオンが連邦に勝てる訳がないって、各ラウムに無視されたんだろうな。


 うん。私の精神衛生上、そう結論付けよう。


 いまもモニターには、核ミサイルを撃たれたコロニーが爆発する映像が映し出されている。あの汚い花火が一つ上がる度に、数百万から一千万の人の命が消えているのに、実感は湧かない。

 私は薄情な人間なのかもしれない。けど、これは悲しいけど戦争なんだよね。戦争は綺麗事では無いのだから。


 でも、非武装の民間人を大量に虐殺するのは、それってどうなのよ? そう思える自分もいて、その常識的な感覚を保持出来ているのに、少し安堵していたりする自分もいる。なんだか、頭の中がグチャグチャな気分だよ。

 考えるのは止めよう。考えても答えなんて出ないんだし。


 それに、言い訳になるかも知れないけど、私的には政治家アドルフ・ヘスの評価は、選民思想や大量虐殺で難しい評価しづらいけど、アドルフ個人はそこそこ好きだし。


 あの鉄仮面のアドルフが、想像以上に良く笑うんですよ? それも少し目尻を下げて! とっつきにくいのは確かだけどね。

 前世のイメージとか他人の評価なんて、あまり当てにならないって感じたよ。


 まあ、あのヒトラーでさえ、子供と女性には優しかったともいうから、公人と私人で使い分けてるみたいだけど。一応、お姉ちゃんの旦那だし、オットーとエリーゼのお父さんでもあるんだから、やっぱりアドルフを嫌いになんか、なれないんだよね。

 もう、この甥っ子と姪っ子が可愛くて可愛くてさ、これだけでも見知らぬ他人より、可愛い身内ですよ!


 まあ、オットーは最近ちょっと生意気なんだけどね。この前なんか私にむかって、

「マリアちゃんってボクの叔母だから、おばさんだよね!」

 なんて、いい笑顔で言いやがったもんですから、拳骨をお見舞いしたら、私もお姉ちゃんに拳骨を喰らって涙目になりました。解せぬ……


 確かに血統的には、私はオットーの叔母だけどさぁ。


 これはあれかな? タラちゃんが、ワカメちゃんに対して「おばさん」って言って、ワカメがタラを殴ったら、サザエさんが出てきてワカメが殴られたという構図が、そのまま当てはまるってことだよね?

 それだと、私のお父さんとお母さんはフネと、えー、お父さんの名前が出てこないや……


 そんなこんなで、オットーの将来が少し不安ではあります……


 なんだかんだと言い訳をしたけど、身内を守る為に戦う。これだけで十分な気がする。



「さっきからマリアは、なにをブツブツ言ってるんだい? まあ、いつもの妄想だとは思うけどさ」


「うん、ちょっといろいろと考えてた。この戦争の行方とか、みんなのこととか」


「マリアは大丈夫だと思うけど、戦場では余計な事を考えるんじゃ無いよ? 迷った者から殺されて行くのが戦場だよ!」


「うん、ありがとう。シーマさんは優しいね。お母さんみたい」



 私はシーマ様の言葉にウルっときて思わず抱き着いちゃいました。シーマ様のおっぱい気持ちいいです。役得ですね!

 ちなみに、最低でも週に一回は一緒にお風呂も入ってますよ? ぐへへへへ。 まあ、ちょっと垂れ掛かってはきてますけど。



「あたしゃ、こんなに大きな子供を生んだ覚えはないよ! せめて、お姉さんでしょ! お、ね、え、さ、ん!」


「イタタタッ シーマさんグリグリ痛いってば! ギブ!ギブ!」



 シーマ様からの愛のグリグリが痛気持ちいいです。三日に一回はグリグリされている気がするけど。まあ、スキンシップってヤツです。



「ギブ!ギブ!って、もっとして欲しいってか? うりうり」


「日系英語では、ギブアップの略なんだってば!」


「アンタは、どっからどう見てもゲルマンかアングロサクソンだろーが!」


「スペースセンチュリーに入ってもう180年。差別イクナイ! それに日系は地球圏みんなの誇りだよ! 彼らが居なかったら、人類はとっくの昔に滅んでいたはずだよ!」



 前世が日本人の私としては、スペースセンチュリーの歴史は誇らしい歴史でもあるんだよね! 内容は長くなるので割愛するけど、変態国家ニッポン、パネェっす。

 まあ、なんとなく内容は分かるよね? こんなこともあろうかと×300くらい危機を救いましたから。NASA涙目プギャーでしたよ。マジパネェっす!



「まあ、あの変態民族のおかげで、安心して宇宙に住めているのは確かだね」


「うん! HENTAI万歳! だから私もHENTAI!」


「こら! どさくさにまぎれて乳を揉むな乳を! ほっぺにチューするな! 化粧が落ちるだろーが!」


「シーマ、大好き!」



 シーマ様に会えて本当に良かった。神さまありがとう! シーマ様大好き! まあ、ちょっと目尻に小皺が出てきてますけどね。それも含めて大好き!

 きっとシーマ様は私が守ってみせる! って傲慢かな? でも、傲慢でもいい。この気概で今度の戦争を生き抜くんだ!



「まったくこんな、おばさんのどこがいいんだい? それに、あたしゃそっちの気はないって言ってるだろーが!」



 シーマ様が良いんです! シーマ様じゃなきゃダメなんです! おばさんでもシーマ様が良いんです! 



「アンタ、いま失礼なことを考えてなかったかい?」


「ソ、ソンナコトナイデスヨ? シーマサンノキノセイデスヨ?」


「片言の棒読みになってるよ・・・」


「やだなー、私はおばさんなんて一言も言ってませんってば!」


「いま言った」



 シーマ様、青筋なんて立てたら皺が増えますよ? まあ、そんな恐ろしい言葉は、口が裂けても言いませんけど。



「そ、それはシーマさんが先に自分で言ったからであって、私は無実だってばー」


「ご、ゴホン……」


「か、カッセル中尉、たすkじゃなくて風邪ですか? 龍角散あげましょうか?」



 おおっ! 普段は恋敵で憎っき相手のカッセルが、こんなにも頼もしく見えるなんて! 後光を差したカッセルが現れた! 私は感謝の気持ちをスマイル0円で、龍角散と言いつつ、落雁をデトローフ・カッセルに渡した。

 ふふふっ、カッセルよ、私とシーマ様の愛のプレリュードを邪魔した報いを落雁で喰らうがよい!



「なんだい、デフいたのかい?」


「姐さんとマリア様がイチャイチャしていたので、声を掛けるのを遠慮してましたが、一向に終わりそうないので、つい……」


「それで、どこから聞いていたんだい?」


「マリア様が姐さんのことを、お母さんみたいって言った辺りからですかね?」


「ほとんど全部かい!」



 ペチンと音が聞こえた。うん、シーマ様が愛用している扇子が閉じた状態で、カッセル中尉の頭を叩いた音なんだ。カッセルざまぁ!

 でもまあ、これもシーマ様流のカッセルに対しての愛情表現なんですけどね。


 だって、この二人デキてるんだもん…… く、悔しくなんて…… ぐ、ぐやじいよー!!


 そりゃあ、カッセルの方が、シーマ様との付き合いは長いけどさー。具体的には四半世紀ゲフンゲフン…… 「デフ」なんて愛称で呼ばれてるけどさー。

 私だって人がいない時には、「マリア」って呼び捨てで呼んでもらえるまでの仲なんだし! 呼んでくれるまでが長かったけど。それに、カッセルが親衛隊に入れたのは私のおかげでもあるんだしさー。


 でもなんだか、モヤモヤするな。なんだかNTR感が半端ないんですけど? やっぱり、どんなに頑張っても男には勝てないのかな……?


 ぐすん……。


 これが愛ってヤツですか? これが嫉妬って感情ですか? 神さま答えて下さい!


 でも、私は子供で、しかも今世の性別は女だから、そこはしょうがないと諦めて、シーマ様が幸せになるならと思って、カッセルのことを一応は認めているのですよね。

 一応、だけれどもね。


 それでも、嫉妬するぐらいは良いよね。私がカッセルに対して、上から目線になるくらいは許されるよね?


 ふふっ、でも、私は知っているのだ。シーマ様も私とのじゃれあいは満更でもないってことを! 私の愛撫でシーマ様が感じているのを知っているのだ!

 しかし、プチ百合百合したあとの欲求不満を、カッセルとのメイクラヴで解消しているのも知っているのです……


 ラブじゃないんですよ。より進化したラヴなんですよ! ……なんだか、自分で言ってて虚しくなってきました。

 私は二人が盛り上がる為の、スパイスの役目みたいで辛いのです。あれ目から汁が……


 何億もの人間が死んでるのに、不謹慎にもイチャコラしていた罰が当たったのかな? でも、おふざけもここまで。カッセルが来たからには軍務の話でしょう。




「それで、準備は整ったのかい?」


「ハッ 滞りなく。日付が変わって明日の深夜0:00に出航の予定は変わりありません」



 うん、一転して真面目な顔をしてカッセルに尋ねるシーマ様カッコイイです。それに答えるカッセルも悔しいけど、渋くてカッコイイですね。みんな軍人の顔に切り替わってます。



「では、交代で半舷上陸の許可を出しな。なかには、これでラウム3の土を踏むのも最後になる者も出てくるのだからね、手隙の者は全員だよ!」


「ヤボールヤカロイ!」


「もう大尉ではなくて少佐だよ!」


「失礼しました。長い間の癖でつい」


「デフ、ワザとやってるだろ?」


「ヤボールヤコベトンカピティン!」


「遊んでんじゃないよ! さっさとお行き!」


「ハッ!」


「ふぅ、まったくデフのヤツめ、昔はあんなんじゃなかったのに、どうしてこうなった?」



 前言撤回…… カッセルは真面目な顔して、馬鹿をやるタイプだったみたいです。サイレントハンターごっこだったのかな?


 はっ!? まさか、カッセル中尉は酸素欠乏症に掛かっているのでは?


 しかし、デフか。なんか車とかのドライブシャフトの受けが、そんな名前だったような? ほら、縦軸と横軸が交わる所のワニスで黒く塗られている丸い鍋か釜のような形をしている所が、デグって名前ではなかったかな?

 シーマ様が縦軸で部下たちが横軸で、その中で必死をこいて、ひいこらひいこらと歯車を回しているのが副長のデフ。うーん、人間関係も機械に例えれるとは勉強になるよね。


 デフだけに役回りもデフって、うぷぷ、ツボった。もし、名称が間違っていたら死ぬほど恥ずかしいけど。


 それはさておき、


 シーマ様は昨秋に昇進して、親衛隊少佐になっているのです。カッセルは見送りです。ざまぁ。

 昇進に合わせて司令になったのか、司令になる為に昇進したのかは分かりませんが、シーマ様の現在の肩書は、


 イオン公国親衛隊第一独立遊撃艦隊司令 です。


 なんだか格好良い響きですよね! この艦隊の隊長がシーマ様なのです。隊長って言ったら一気にショボく感じるのは私だけだろうか? 小隊長も隊長だし陸軍で言ったら、分隊長でも隊長様だからね。司令の方がカッコイイよね!

 だけれど、司令もコントロール、空域管制官という下士官でもなれる"指令"という罠があるんだけどね…… これは、"しれい"違いでしたね。


 ちなみに、頭に第一と付いていますけど、まだ、第二独立遊撃艦隊はありません。第一独立遊撃艦隊の編成ですけど、11月の終わりに編成されたのが、↓こちら。



 旗艦

 ジブラルタル級巡洋艦 リリー・マルレーン 艦隊司令直卒

 MOX 常用6機 予備3機 計9機


 司令 シーマ・イソベ少佐 (親衛隊第十三独立遊撃MS増強中隊長兼任)

 艦長 デトローフ・カッセル中尉 (艦隊副司令兼任)



 ムサシ級軽巡洋艦親衛隊仕様 タンホイザー ニーベンルグ マイスタージンガー ローエングリン 計4隻

 MOX 常用3機 予備1機 計4機×4 合計16機


ブーゲンビリア級補給艦 197補給艦 198補給艦 計2隻



 艦隊搭載MOX


 MOX-06CS 指揮官機シーマ・イソベ搭乗機×1 マリア・アインブルク専用機×1 予備×1

 MOX-06C  ×16 予備×6

 MOX合計 常用18機 予備7機 計25機



 親衛隊第13独立遊撃MOX増強中隊


 中隊長  シーマ・イソベ少佐 (第一小隊長兼任)

 副中隊長 マリア・アインブルク特務少尉 (第二小隊長兼任)


 01小隊 シーマ・イソベ少佐 リリアンヌ・フローゼン准尉 ロレンツ・ドアン曹長

 02小隊 マリア・アインブルク特務少尉 レイチェル・ラムサム准尉 エクレア・ガトウィック准尉

 03小隊 クルト少尉 メッサー軍曹 シュミット伍長

 04小隊 マサト・ナカガワ少尉 ムタグチ軍曹 ツジ伍長

 05小隊 メルダース少尉 ルーデル准尉 ハルトマン軍曹

 06小隊 クリス・アルフォンス少尉 アリス・クローゼ准尉 ミユキ・グラハム軍曹


 MOX整備主任 ビアンカ・カービン技術少尉



 私の小隊は、レイチェルって子とエクレアって子が一緒か。ふむふむ、親衛隊の独立遊撃隊に配属になるのだから、腕はあるのでしょうね。

 ちなみに、エクレアって美味しそうな名前の気がしませんか?


 03小隊は二人合わせて、メッサーシュミットって…… クルト・タンク繋がりならば、フォッケだろ常識的に考えて。

 05小隊のメルダースとルーデルとハルトマンは、名前からして期待してもいいのかな?


 原作の人は、クリス・アルフォンスしか居ないのかな? 彼女は原作では、ネオヒューマンだから、期待できるでしょうし、大丈夫だろう。

 あと、ロレンツ・ドアンがいるな。彼は格闘が強いイメージでしたね。原作では脱走兵のロレンツ・ドアンと、忠勇無比なる親衛隊が結びつかないのだけれども、なんでここにいるんだろ? まあ、考えても詮無きことか。


 あとは、なぜだか子供がいます。私も子供ですがね! ラーム主任から役に立つからって押し付けられました。リリー・マルレーンのMOX整備主任で、イオニック社から派遣されて来たのが、技術少尉のビアンカ・カービン、14歳。

 うん。私の方が年下だけど、彼女は幼く見えますね。だけど、彼女の経歴を見たら、これがまた凄いの一言なのです!


 彼女はラーム主任と一緒に、MOX-06ゼナⅡを開発しちゃった天才少女なのでした。そんな天才を戦場に送り出すなんて、総統府とイオニック社は何を考えているのやら。

 万が一にも彼女が戦死でもしたならば、イオンの損失は計り知れないってことは、当然分かっているはずなのに……


 うーん、偉い人の考えることは、私には分からないですね。




 結局、私は、私のモックス操縦技術を埋もれさすのは惜しいってことで、なし崩し的に実働部隊に配属されることになりました。

 まあ、私より上手くモックスを操縦できる人がいませんので、遊ばせておく理由も無いということでしょうか?


 子供が戦場に出るなんて、開戦前から総力戦、末期戦の臭いが漂っているのが、そこはかとなく負けフラグのような気がしないでもないのですが……

 あと、04小隊から死亡フラグ臭がプンプンしてるんですけど? 辻とか牟田口ってなんの冗談ですかね? ネタですかね?



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