2話 マリア専用機
SC 178年
「こ、これは!?」
「どうです? 気に入っていただけましたか?」
お元気ですか?
イオン公国の自称アイドルこと、マリア・アインブルクです。今年は姪っ子のエリーゼが生まれたよ! エリーゼって誰? 原作では聞いたことがないから、オリジナルなのかな?
私のギャンバインの歴史は逆襲のヨシュアで終わっているのです。正確にいえば、微睡みの中の戦争と07小隊とシーマ様までですけど。そこから新たに派生したギャンバインは知らないのです。
うん? 前世の私の歳がバレるって? シーマ様と親衛隊を呼びますよ? あ、イゴーグはファースト繋がりで多少は知ってますね。ダツは歴史通りに爆散して果ててました。南無三。
あとは、アドルフの野望を少々プレイしましたね。やっぱり、ギャンバインといえばファーストの系譜でしょ! 私個人としてはTV版のセカンドが一番好きですね。
そのセカンドの時代まで、イオンが生き残っていたら、どうなるのでしょうね? 私個人の力なんてたかが知れてるけど、生き残るために頑張ろう!
私はというと、この間、アメリアさんに呼ばれて、いろいろな検査を受けさせられたりもしました。
たくさんのコードが付いてるヘルメットを被って、トランプのカードを当てるゲームとかをしました。これって、もしかしなくても、ネオヒューマン適正の検査ですよね?
もちろん、普通にポーカーやセブンブリッジとかで遊びもしました。けど、勝敗は…… うん、まあ、聞かないで下さい。
ネオヒューマンとは、ガ〇ダムのニュータイプのようなモノだと思っておいて下さい。
それで、どうやら私には、ネオヒューマンの適正は皆無だったらしく、私のこの結果に対して、アメリアさんは首を捻って残念がっていました。でも、それならば、何故いとも簡単にMOXを操縦できたのか?
これの証明ができないのですが、それは仕方ありませんね。できるものはできるとしか言いようがありませんので。
まあ、私も、ファンネルは使ってみたかったので、ちょっぴり残念ではありますけど。
そして、私は現在、またイオニック社の工場にいます。そして、見上げています。
「凄く大きいです」
「ええ、18メートル近くありますからね」
「でも、なんで、薄紫色というかコスモス色? 菫色? ピンクパープルみたいな色なんですか?」
いま私が見上げているゼナの塗装は、ハイファCみたいな色なのだ。 クロエ専用機と量産機の中間の色って感じかな?
「それはもちろん、マリア特務少尉専用機ですから、専用塗装をさせていただきました」
そう、私の現在の肩書は、イオン公国親衛隊特務少尉なのです。士官ですよ士官! 特務少尉とは、通常の少尉とは違うのだよ! 総統府と親衛隊以外の部隊に対しては、二階級上の権限が与えられるのです。
つまり、大尉相当ってヤツですね。まあ、部下なんて、一人もいなんですけどね! さ、寂しくなんか、寂しくなんか……
しかし、11歳のイオン公国最年少の士官、こんなんでイオンは大丈夫なんでしょうか? 心配です。所属も総統府なのか親衛隊なのか、自分でもちゃんと分かってないんですけどね。
ちなみに、私の軍服は、お姉ちゃんと同じで、赤系統の軍服を支給してくれました。自分でいうのもなんですけど、似合ってます。馬子にも衣裳ってヤツですね。自分で言ってて虚しくなってきましたよ。ぐすん……
なんで、私みたいな、幼気な少女が軍人なのか軍属なのか知らないけど、こんな肩書になってるかといいますと、
なんということでしょう! 私よりもMOXの操縦が上手いパイロットが、イオン公国には居なかったのであります!
こんな現状で、連邦に戦争を吹っ掛けようとしている、我がイオンの未来が心配で心配で、なし崩し的にMOX指導教官とかいう地位におさまちゃった訳でして、教官を育てる教官なんてことをやったりしております。
それで、教導大隊の連中とかをシゴいたんです。主にヨシュアとか青い三連星とかルンバ・ガルとかを。その甲斐あってか、月にある雨の海とかいう場所で、旧ゼナ等、5機のモックスで、連邦のMOXギャンキャノン12機相手の戦闘で圧勝!
みんな、「教官殿の教えのおかげで勝てました」なんて言って、私に感謝してくるんです。11歳の小娘に頭を下げる大人って、それってどうなのよ? まあ、みんな無事に帰ってきてくれて嬉しかったけどさ。
この教官をやったおかげで、原作で名前を知ってる人とも交流できて楽しかったです。以下、主だった人達の阿鼻叫喚をば。
「モックスの性能の差が戦力の決定的な差でないということを……」 いや? 私の乗っているの旧ゼナで、あんたの乗っているの新型のゼナⅡだから。それに乗っていて私に負けるなよヨシュア……
「ゼナとは違うのだよ! ゼナとは!」 そうですね。それMOX-04ですよね? ガルさん、そのMOXは、なんていう名前なんですか? ダツでもないし、オリジン準拠でしょうか?
「マラドナ! トッシュ! ライジングストリームアタックを仕掛けるぞ!」 同機種での3対1で敗北するなよ。青い三連星の名が泣くぞ……
私に鎧袖一触にされてしまった、ラバウルの悪夢と呼ばれるには、まだまだ未熟なカトー。
私に怯え竦んでしまって、モックスの性能を活かせないまま、敗北するニルス。
功績を焦ってスキをみせて、愚かにも撃墜されるドビッシュー。
「騎士であるこの私に挑むとは!」 そう言って、私に返り討ちにあうニクラス。
「戦場を駆ける紅の雷鳴、そう! オレこそが、ジョニー・ウォーカーだ!」 アンタまだその二つ名で呼ばれてないでしょ? って自称してたのか。こっちが恥ずかしくなりますよね…… デコに黒ラベルでも貼り付けてやろうか?
「ダンジョーの家名にかけて、この戦い負けるわけにはいかない!」 ダンジョーさんごめんなさい。
「マリア、派手にドンパチ楽しもうじゃないか!」 ……楽しむ前に、一瞬で私に落とされる、私が勝手に歳の離れた友達と思っている女性。
などなど…… 私の教え子には、未来に二つ名が付けられるエース候補が、みんな仲良く揃って敗れ去って、私の前には死屍累々の山が出来上がったのでありました。
ちなみに、敗れ去ったのは、無名のパイロットの方が圧倒的多数ですが。みんなの私を見る目が、畏怖というか、怯えてる人が多いのが玉に瑕ですけど。
私は、こんなにもプリティでキュートな可愛い乙女なのに失礼しちゃいますよね? ぷんぷん。
もちろん、ちゃんと各々の技量に合わせて、カリキュラムを組んであげたので、モックスの操縦技術の向上にも励みましたよ?
もしかして、私が居なかったら、ラウム5ドナウとかでの被害が倍増してたとか? うん。もしかしなくても、間違いなく、地球降下作戦に支障をきたすレベルで損害が出ていでしょうね。
つまり、私の存在がイオンに有利に働いてくれていたら良いな。
そんなこんなで、最近は、ちょっと天狗になっているのを自覚している、今日この頃の私なのでした。
それはさておき、
「私の専用機でしたか…… なんとなくそうなんだろうとは思いましたけど、ちょっと派手じゃないですか?」
色、それ自体は嫌いじゃないけど、これが私のパーソナルカラーになるのが、ちょっぴり恥ずかしいのだ。
「最初はド派手なピンクの予定でしたけど、セシリア殿に却下されまして。それで控えめにしました」
「はあ、これでも控えめなんですね…… 分かりました。それでスペックはどんな感じなんですか?」
お姉ちゃんがストップしてくれなかったら、ド派手なピンクだったのか。お姉さま、グッジョブであります! この色で妥協しましょう。
「ジェネレーター出力は変わりませんが、推力は量産機の30%増しです。それに伴い背部にプロペラントタンクを増設、これで推力が増しても稼働時間は量産機と同等の時間を確保しました。
このタンクは脱着式ですので、補給の際には直ぐに予備のタンクと交換できます。それとコクピット周りにはチタン合金を採用しています。ブレードアンテナも装備して、通信力とセンサーを強化してあります。
索敵範囲は量産機の倍の範囲はあります。当然、駆動系も強化しました。武装は試作品ですが、従来よりも貫通力の高いSSP-80マシンガンをメイン武器に、近接戦闘用のヒートサーベルがあります。
これは従来のヒートホークよりも3倍の長さがありますので、格闘戦で有利に働くかと思います。あと、オプションとして、シュツルムファウストやクラッカーなどがあります。
バズーカは現行のままの280mmバズーカです。なにか質問はありますか?」
長いです。三行でおk。技術肌の人に喋らすと止まらないってのは、前世も今世も同じなんだね。喋り出したら、ラームさん活き活きしていたもんね。
増設プロペラントタンク。これは、前世の記憶にあるシーマ様の海兵隊、マッティーニマリーネが付けていたヤツに似ていますね。ゼナだから、ゼナマリーネですかね?
それで、納得いかないのがマシンガン。
「90mmなのに、80とはこれいかに?」
「えーと…… それは、上が決めた型番ですから、私にも詳しいことは分かりません。私の本分は、モックス本体ですから」
苦笑いで答えてくれるラーム主任。渋いですね。
「そうですか。それはそうと、角があるとやっぱカッコイイですよね!」
「そうですね。一度、角付きを目にしてしまうと、丸坊主は味気ない感じがしますね」
「シュツルムファウストやクラッカーの代わりに、予備の弾倉は増やせますか?」
私が一番気になる点をレム主任に聞いてみた。そう、弾は多ければ多いに越したことはないのですから。
サブウェポンよりメインウェポン。これが王道だと思うのです。戦場で弾切れを起こして補給の為に撤退なんかして、わざわざ敵を逃がす愚はできるだけ避けたいのが本音であります。
「2つ増やせますね。この場合だとマシンガンに付いてるのを合わせて600発撃てます」
「なるほど。では、私の装備はサブウェポンは装備しないで、マシンガンとヒートサーベルで行きたいと思います」
「そうですね。このMOX-06CSとマリア特務少尉ほどの腕なら、予備弾倉を増やした方が効果的かも知れませんね」
どうやら、正式な型式番号は、MOX-06CSというらしい。ん? ゼナにCSなんて型番はなかったはずだよね? うーん、これがバタフライ効果ってヤツなのか?
耐核防備の指揮官機ってことで"CS"なんだろうな。F型の指揮官機の"FS"みたいなモノと考えればいいのか。
ヨハンのFSは頭部にバルカンが付いていたけど、通常のゼナの頭の中はスッカラカンってことなのかな? うーん、謎ですよね……
いかんいかん、私の頭も明後日に飛んでしまってスッカラカンになっていたみたいだ。
「ふふ、おだてても何も出ませんよ? でも、ありがとうございます」
「いえ、誰もあなたに模擬戦で勝てないのは事実ですから」
ラーム主任は技術者の割には社交性もあるみたいですね。システム主任さんは社交性なさそうですけど。まあ、あの人も悪い人ではないんですよ?
なんだか勝手に、マリア親衛隊なる私設応援団みたいなモノを作って、副隊長なんてやってますけどね! ロリコンでも悪い人ではないんですよ。多分……。
「マリアたんハァハァ」なんて言いながら、隠し撮りした私の写真にケファアを掛けてないことを祈ろう。
自意識過剰ではないですよ? こうみえても私は美少女なんです。お姉ちゃんを見れば、分かる人は分かるんです!
あれでも彼は有能だから、万が一に性癖がアレでも豚箱には入れれないんですよね…… 暴走しないでシコシコしている分には、個人の自由ともいいますし。
まあ、全て私の想像上での、システム主任さんのイメージではあるのですがね!
yesロリータnoタッチを信じよう。うん。