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31話 顎が痛い……


 SC 180.01.01



「顎が痛い……」



 うん、初心者のくせして、ちょっと頑張りすぎたかも知れませんね。 なにを? とは、聞かないで下さい。



 我がイオンは、無事にコ・ホコウ・クーの防衛に成功しました。連邦は這う這うの体で、ラバウルやルナツリーに逃げて行きました。

 連邦はグレナダ侵攻作戦も準備していたみたいですけど、コ・ホコウ・クーでの敗戦の知らせで、グレナダ侵攻作戦も中止になったみたいです。


 イオン独立戦争。史実の連邦がいうところの一年戦争が一年では終わりませんでしたね。イオンの敗戦で終わってたら、私は非常に苦しい立場に追い込まれていたでしょうから、この結果には満足なんですけどね。


 ラバウル防衛戦の前にあった、イオンと連邦との艦艇の戦力比は1対2でした。この倍あった戦力比も、ラバウル、ソーラ・レイ、コ・ホコウ・クーの三会戦と、

他の宙域での小競り合いで連邦軍は擦り減らされ、現状での戦力はほぼ拮抗しています。やや連邦艦艇が多い程度です。

 残存艦艇はイオンが160ちょっと。連邦が170~180隻くらいらしいです。


 これも参謀本部と諜報部の言葉を信じればですけどね。まあ、現状で連邦の艦船が200隻を上回ることがないのは確かでしょう。


 アメリアさんの部隊のシャネルやブラウ・バロが大戦果を挙げているとの報告は聞いていますので、あながち間違った数字ではないのかも知れません。

 ネオヒューマンとモビルファイターの組み合わせは、対艦では鬼畜の所業となりますね。もちろん、ノーマルヒューマンが乗るピグロも活躍していますけど。


 ラバウルとコ・ホコウ・クーでは、私もちゃっかりアムンゼンとヴァスコダガマを二隻づつ撃沈していたりもするんですよ?

 あまりにも、あっけなさすぎて描写も残っていないですけど! それに、私も忘れていましたし。


 私を含めた他の人の戦果も、シャネルの稼いだ数字の前には霞んでしまいます。


 でも、連邦が本気になれば、また一年も掛からずに400隻や500隻の艦艇を揃えそうで怖いんですけどね。まあ、艦艇を揃えられても、今度こそソフトの方が追い付かない気もしますが。人材の育成は一朝一夕にはいかないのだから。

 この戦争は人が死にすぎましたね。


 これで当分の間は、宇宙での大規模な戦闘は起こりえないと思います。いえ、思いたいですね。もし、あるとしたら、ルナツリー宙域で最後の決戦でしょうか?



 それで、私たちシーマ艦隊が今なにをしているのかといいますと、Sフィールドの基地で慌ただしく補給と整備をしています。


 余力のあった艦艇は昨日のうちに戦力を再編して、逃げた連邦艦艇の追撃戦に入ってますけど、その役割は宇宙攻撃軍の仕事です。

 まあ、イオンの主力も宇宙攻撃軍ですしね。親衛隊の役割は、あくまでも補助、助勢と本国の防衛がメインの部隊ですから。


 ワークシェアリング、役割分担です。ちょっと違う気がしないでもない。


 うん、そろそろ現実逃避して時間を稼ぐのも限界ですね……




「顎が痛い? どこかでぶつけましたか?」


「そ、そんなところです。あははは……」



 言えない。ナニをして痛くなったかなんて顎が裂けても言えない秘密です。あ、思い出したら……



「はぁ、お大事にとしか言えませんが、お大事に」



 現在、私はヨシュア少佐とお茶を飲んでます。オマケにリリィも一緒です。まだ、ヨシュア少佐から紹介してもらってませんけど、褐色の肌で髪を左右にお団子にしている。

 それで、インド系女性の特徴でもある、額にホクロ? なんていうのか知りませんけど、ホクロみたいなのを付けてる女性。


 うん。間違いなく前世のアニメで見た記憶にある、リリィ・スー、その人だ。リリィは綺麗で美人ですね。まあ、私もそこそこイケてると自負しておりますが。

 ちなみに、私の顎を痛くした犯人のハヤテは、レイチェル少尉と仲良く一緒に腕立て伏せとか腹筋とかを頑張ってるみたいですよ?


 彼女はマッスルオタクなんでしょうかね? レイチェル少尉は綺麗な顔に似合わず、ああ見えても薄っすらと腹筋が割れていたりするんです。

 どうして、そんな事を知っているのかって? そりゃ、同性ですから知ってますよ。まだ、百合な関係ではないですよ? いまはまだ、ちょっとじゃれる程度です。


 あ、もしかしてそういう事だったの? レイチェル少尉がハヤテに刺々しかったのは? ふーん…… 今度、レイチェルをイジってみようかな。


 モックスパイロットはエリートですから、様々な面で配慮されていたり優遇されているのです。神経を使う職業ですし、モックスの非撃墜=母艦もお陀仏の時代ですからね。

 その優遇措置の一つが休憩室なのです。パイロット専用の休憩室の中には浴室も備えてあるんですけど、そこで彼女の身体を目にしたのですよ。


 うん、引き締まっている割りに出るところはちゃんと出ている、褐色の綺麗な身体をしていましたね。ぐへへへへ。おっと、思い出したら涎が……

 彼女の身体と比べたら私なんて月とスッポンです。まだ私は胸も小さくて、くびれも少しで、まだまだお子ちゃま体型に近い身体ですね。グスン。


 で、でも、私だって、が、頑張るもん! まだ、私は発育途上、成長途上の身体なのですから! 揉んでもらえばホルモンの分泌が良くなって、大きくなるという都市伝説もあるんだし、心配は無用ですよね。

 っと、いかん、いかん。妄想終了。



 というか、なんでヨシュアとリリィ、お前たち二人が一緒にいるんだよ! 所属が違うだろうが、所属が! それと、追撃戦ついでにラバウルの奪還に行けよ!



「それでヨシュア少佐、そちらの女性はどなたですか?」



 まあ、知っているんですけどね。一応は確認と挨拶も兼ねて自己紹介をしてもらいましょうか。

 マナーとしてもコミュニケーションツールとしても挨拶と自己紹介は大事ですよ。といいますか、社会人としての初歩です。軍隊では絶対です。



「ああ、失礼した。彼女はリリィ。リリィ・スー少尉だ。今日は教官殿に彼女の話を少し聞いてもらいたくて連れてきました」


「はじめまして、特務大尉殿。リリィ・スー少尉であります」



 最初にリリィって呼び捨てねぇ…… 確実にヤってやがる。やっぱりそういう関係でしたか。モゲろって言いたいけど、私には、もう言う資格がないんだよね。

 でも、モゲろ!



「ふふ、リリィ少尉、べつに堅苦しくしゃべらないでも大丈夫ですよ。私はマリア・アインブルク。階級は特務大尉です」


「特務大尉殿の噂は私も聞いてます」


「うわさ?」



 やべっ! ハヤテとの事がもうバレてしまったのか? 所属が違う部隊にまで広がっているのか! 誰が言いふらしてるんだ? レイチェル少尉か?

 私はともかく、ハヤテにはロリコンのレッテルが張られそうだなぁ。ハヤテ、イキロ。



「はい、特務大尉殿はネオヒューマンとの噂のことです」


「ぶっ! ……私がネオヒューマン~?」



 ビビった。違う意味でビビった。思わず紅茶を噴き出してしまったではないか!



「ご存知ありませんでしたか?」



 フキン、フキン。あ、リリィ少尉すみません。拭いてくれてありがとうございます。どうもお手数をお掛けしますね。って、おい、リリィは冷静だな。



「いや全然知らなかった。それに私はネオヒューマンなんかじゃないし」


「ご謙遜を。ネオヒューマンではないのに、昨日エグザエムシステムを搭載したギャンバインタイプを倒したのですか?」


「アレね。あれは確かに、いままでの相手よりは強かったとは思うよ。でも、私よりは弱かった。だから倒せた。これが全てだと思うけど?」



 そう、ネオヒューマンだろうがノーマルヒューマンであろうが、強い方が勝つ。これが戦場の掟だ。まあ、勝った方が強いともいうけどさ。



「納得いきません……」


「はぁ、私も何回かロスチャイルド博士のテストを受けているけど、私にはネオヒューマンの適正は皆無だよ」


「それは初耳でした。そうだったんですか……」



 ペラペラと他の被験者の事を喋る研究者がいたら、それはそれで問題でしょ?



「リリィ少尉が言うようなネオヒューマン能力は、シャネルのビットを飛ばせるイコール、ネオヒューマンってことでしょ?」


「それだけではありませんけど、ビットの操作はネオヒューマンじゃないと出来ないのは確かです」


「それだと恐らく私は、ほぼ100%ビットを操作できないから、私がネオヒューマンではないって証明になるわね。操作する前の適性で弾かれてるんだし」



 ああっ! 私も、



『行け! ファンネル!』



 とか、格好良く言ってみたかったなぁ。アレはいいものだ…… 誰でも一度は憧れるよね?



「ネオヒューマンではないとしたら、特務大尉殿の戦果は説明が付かないのですが、うーん……」



 リリィ少尉が考え込んでしまったけど、それは私も説明できませんってば。もう強い方が勝つでいいじゃん。それよりも、



「シャネルで思い出したけど、シャネルに乗っているのってリリィ少尉でしょ?」


「はい、ご存知でしたか」


「まあね。それで、ネオヒューマン部隊はアメリア閣下直属のはずなのに、なんで宇宙攻撃軍のヨシュア少佐と一緒にいるのか疑問なんだけど」



 やはりビンゴでしたね。それで所属が違うのも判明したけど。



「ああ、それは私から説明しよう。彼女は地球で私が見出した存在でね。私の部下として、宇宙攻撃軍かアメシリア閣下の特殊部隊に出向させている」


「なるほど。といいますか、ヨシュア少佐は地球に降りてたんですか?」


「やんちゃをして士官学校を除籍処分になった後に、短い期間だけですがね」



 ふむ、ここらへんは漫画版準拠なのね。ごちゃ混ぜの史実か…… よく分からん。



「ああ、アレ。連邦軍駐屯地襲撃事件ね」


「若気の至りです」



 爺臭いことを言ってからに、アンタまだ21ぐらいでしょ! 十分に若いと思いますよ?



「それはそうと、ヨシュア少佐は追撃戦に参加しなくても良かったの?」


「したくても、私のキャロル艦隊は部隊が半壊して参加は出来ないのです」



 それで暇に託けて私に会いにきたと。書類仕事から逃げ出してきやがったなコイツ。少しはシーマ様を見習えってんだ。モックスパイロットと艦隊司令を兼任していて、いつも忙しそうに動き回ってるぞ。人の三倍は働いてる気がしますね。

 現に、いまも書類仕事に追われているから、私がシーマ様に、「マリア、邪魔」なんて言われて部屋を追われたんだし。グスン。


 今度、シーマ様の爪の垢を貰って保管しておいてコイツに飲ませてあげよう。うん、そうしよう。これは名案ですね!

 特に足の親指の垢なんて良さげですね。あの、クサいんだけど、また嗅ぎたくなる匂いは麻薬に近いものがありますよね。私って匂いフェチの素質があるような……?



「なるほど、私のシーマ艦隊と似たようなもんか。それで、なんの話だったっけ? 私がネオヒューマンではないのは理解してくれたと思うけど」


「まだ、納得が出来た訳ではありませんけど、一応は。 ……特務大尉殿はネオヒューマンを、どの様にお考えですか?」



 うん? それを私に聞いてリリィはどうしたいのかな? 私はネオヒューマンじゃないから、あなたたちの同志にはなれませんよ? ネオヒューマンだったとしても、

同志にはなりませんけどね。だって、リリィの隣にいる人が貧乏神か疫病神の類いの人ですから!


 私はアステロイドベルトなんかに逃げるのは真っ平ごめんです!



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