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25話 絆されて

※この物語はTS小説です。


 SC 179.12.31



「あちゃー、あれは確実に昨夜ヤッたねぇ……」


「へ? 姐さん何を殺ったんですかい?」


「ほれ、マリアの歩き方を見てみろ」


「ガニ股? ……ってまさか!? 相手は!」


「あのハヤテって坊やだろうよ」


「アイツか! 取っちめてヤル!」


「デフ! 無粋な真似は止めておきな。子供のおままごとみたいな恋愛ごっこ、 ……でも無さそうだねぇ。ありゃ完全に女の顔をしているわ」


「ジーザス…… なんという事だ! 我らがシーマ艦隊の女神の純潔が、何処の馬の骨とも知らない餓鬼に奪われるだなんて!」


「マリアとの付き合いも10年近くだけど、娘が巣立つってのはこんな感じなのかねぇ。嬉しいのか寂しいのか複雑な心境だよ。まったく」


「娘か……」


「シーマさんシーマさんって、ベタベタ纏わりついていた娘が、男に身を委ねる日が来るだなんてね。てっきり百合系の子だとばかり思っていたんだけどねぇ」


「マリア様はバイってヤツじゃないですかい?」


「バイセクシャルか。昔から変なところで男の子っぽいところもあったし、あの子ならそれもアリなのかも知れんね」


「姐さん寂しいのなら、マリア様の代わりに俺と子供作りやせんか?」


「馬鹿を言ってるんじゃないよ! 今は戦争中だよ! で、でも、せ、戦争が終わってからなら、か、考えてあげなくもないわ……」


「いや、今すぐとは誰も言ってないっスよ。戦争が終わってから…… え゛ー! も、もう一度お願いしやす!」


「馬鹿! おなじ事を二度も言わすな!」


「うへへへへ」


「ニヤけた顔がキモイよ!」






 うん、歩き難いです。


 どうしてこうなった?

 昨日の私は、ハヤテが話があるというから部屋に招き入れただけなのに、どうしてこうなった?


 ハヤテの悶々としているリビドーは、全部を纏めて連邦に押し付けてギッタンギッタンに伸してもらう予定だったのに!

 予定は未定とは、よく言ったものですね……



 お元気ですか?


 乙女の純潔を散らしてしまった、イオン公国のギガアイドルことマリア・アインブルクです。


 なにやら、シーマ様とカッセル艦長がイチャイチャしているみたいですけど、いまの私には二人の仲を邪魔する権利はありません。


 うん、舐めていたわ。健全な高校生の性欲ってヤツを。 ハヤテ君がっつきすぎです。

 13回。13回ですよ! ふつう13回もヤルか? ゴム、ダースで足らないんだよ? こっちは、まだ成長途上の未熟な身体だっちゅーの!


 まあ、ゴムなんて無粋なモノは使ってないんですけどね。


 それに、回数を数えれた私も大概だとは思いますけど。まあ、8回を超えたあたりからの記憶は曖昧なんですけどね。多分、13回で正解です。


 いくら性欲が旺盛とはいっても、少しは私の身体のことも考えて下さいな。おサルさんじゃないんだからさ。

 というか、昨日のハヤテはマジでサルと変わんなかったけどね! 毎回、昨日とおなじ性欲だったのなら私一人では、全部受け止める自信がありませんので!


 まあ、途中からは私も気持ち良かったんですけどね。


 そのおかげで、いまでも股にぶっ太い"すりこぎ"でも突っ込んでいる感覚があります。

 えーと、これからイオンと連邦の決戦ですよね? でも、私はその前に既に男と女の決戦をして疲れ果てているのですけど、こんな状態で大丈夫なんですかね?

 自分の事ながらも、これはさすがに心配になります。


 初陣の新兵には、13会戦はキツかったのであります!


 それで、件のハヤテ君はといいますと、なんで憑き物が落ちたみたいにスッキリ爽やかな顔してんのさ! 普通そこは、ゲッソリするところじゃないのかな?

 うん、健全な男子高校生は恐ろしいです。


 戦場での死の恐怖が見させた、ラブロマンスの欲望の発露だと思いたいです。そうだよねハヤテ?

 毎度毎度こうだったなら、私の身体が持ちませんので愛人を作っても許しますので。


 そうじゃなくて、なんでこんな事になったかというと、






 SC 179.12.30



「それで、話ってなにかな?」



 私は紅茶を作るために、マグネットの付いたポットからお湯をカップに注ぎながらも、ハヤテに話を振って先を促した。まあ、おおよその予想はついているのですけどね。

 ちなみに、紅茶はパックのインスタントです。シーマ様のところでも飲んできたから、これ以上飲んだらお腹がタプンタプンになっちゃいそうです。



「怖いんだ……」


「最初は誰でも怖いものよ。でも、ハヤテは既にラウム7で実戦を経験してゼナも撃破しているじゃない」



 やっぱり、戦いに赴く前に戦うことに対する恐怖の胸の内を、誰かに聞いてもらいたかったのね。

 誰でも怖いとは言ったけど、それは嘘。私は最初から恐怖を感じてなどないのだから。


 だから言葉は悪いかも知れないけれど、シューティングゲームの延長線上でモックスを操縦しているのが私。命を掛けて戦っている相手には失礼だとは思いますけど、こればっかりは感覚なので、仕方がないと割り切ってます。

 それに、私も命を掛けているのは敵と変わりはないのだから。直撃を受けたら私でも死にますしね。



「あの時は無我夢中だったんだ! 冷静になってみれば、なんであんな事が出来たのが自分でも不思議だよ」


「それはハヤテ、あなたの才能よ」


「才能?」


「そうよ。いくらハヤテに多少の予備知識があったとしても、普通は民間人の少年が訓練もなしに、いきなりモックスを操縦する事なんてできないわよ?」



 私は紅茶の入ったカップをハヤテの前に置いて、自分もソファに腰を下ろしながら優しく諭すようにハヤテに話し掛けた。



「確かに、それはそうかも知れないけど」


「ハヤテはネオヒューマンって言葉を知っていて?」


「ニュータイプ? イオン・クンダイが提唱した概念だっけ?」


「そう、人類が宇宙に進出してから人の進化の云々ってお伽話よ」



 ネオヒューマンの議論ってヤツは、突き詰めていくとキチガイ理論と同義だと私には思えるのだ。人は言葉を介して人と分かり合える生き物だと私は思うのです。

 それが、人の心にダイレクトに通じ合えるだなんて、人の心に無断で土足で踏み入る暴挙と同じ事なのではないでしょうか?


 人は誰でも、他人には触れて欲しくない領域というのがあるはずなのです。それにダイレクトで触れられたのなら、あとに残るのは不快感や疑念とかの負の感情でしかありません。

 ネオヒューマン同士は分かり合えるというのならば、これからの宇宙世紀の歴史で延々と戦争が繰り返される訳がないのですから。


 私も詳しくは知らないし、知ろうとも思わないけどね。まあ、そのネオヒューマンとやらが、極少数なのが問題なのかも知れませんが。



『ならば、今すぐ愚民ども全てに叡智を授けてみせろ!』



 十数年経っても、こんな事をいって戦争を続けているお馬鹿さんが、ネオヒューマンにいましたよね? 誰とは言いませんけど、誰とは。


 なんだかんだと御託を並べましたけど、ネオヒューマンの世を作るという思想も、一種の選民思想だと私は思いますね。

 その選民思想の権化たる、ヘス家の外戚の私が言えた義理ではないのかも知れませんが。


 っと話が逸れた。ネオヒューマン論はどうでも良いのだ。



「そのネオヒューマンが僕と、どういう関係が?」


「イオンでは、そこそこネオヒューマンの研究が進んでいるのよ。だから、いきなりギャンバインを操縦できたハヤテも、恐らくはそのネオヒューマンだと私は思うの」



 ごめんなさい。初めからハヤテがネオヒューマンだと分かってはいるんだけどね。話を持って行く性質上、どうしてもね。

 それと、研究は主に軍事利用の方面がメインなんだけどね。戦争は科学技術を大幅に進歩させるという面においてのみ、評価されても良い気がします。



「僕がネオヒューマン……?」


「ええ、でもネオヒューマンだからと言って、自分が特別な存在なんだと自惚れたりしたらダメよ? 人は自分と違う異質なモノに恐怖を感じる生き物だからね」



 そう考えると、私も十二分に異質なんだよね…… それに私は、どこか自分が特別な存在だと勘違いしているのを自覚もしているし。

 自覚しているから、なおさら性質が悪いんですけどね。


 これでは、ハヤテを窘める資格なんて私にはないですよね。 あははは、乾いた笑いしか出てこないわ……



「ああ、学校のイジメの延長線上が社会の構図って事で、社会の縮図が学校のイジメって訳だね」


「その通りね。ハヤテは賢いね」



 私はハヤテの頭をナデナデしてあげた。うん、この天然パーマを撫でるのは癖になりそう。



「マリアの方が年下のクセに……」


「ふふ、それで話が脱線したけど、ハヤテが怖い思う感情はとても大切な事なのよ? 戦場では慣れが一番の敵とも言うしね」



 そう、戦場では初陣か慣れた頃が一番危ないのだ。油断大敵です。無能の上官も同程度に危ないのだけども、それはまた別の話ということで。



「マリアでも怖いと感じるの?」


「そうね、私でもメガ粒子の雨は怖いわ。その怖いと思う感情を持ちながらも、怖さ恐怖を乗り越え克服するのよ。それができなければ、」



 すみません、また嘘を吐きました。怖くないです。でも、恐怖を感じない自分には恐怖を感じます。適度に恐怖を感じる事は、戦場では必要だと思うのです。



「それができなければ……」


「できなければ、死ぬわ。もっとも、ハヤテは私が守ってあげるから心配しないでも大丈夫よ」


「マリアっ!」



 私がハヤテを守ってあげる、心配しないでも大丈夫って言った途端、ハヤテに抱き付かれていました。もしかして、いまの私の言葉がハヤテの琴線に触れちゃった?

 そりゃ、いままでずっと身内もいない敵地みたいなラウム3で心細かったよね。連邦にも帰れないし、積極的にイオンに協力する事への葛藤とか色々あったのかもね。

 私だったら鬱になる自信ありますもん。


 なんだかキュンときちゃったではないか。これが所謂、母性本能というヤツなのか? そうなのか?

 まあ、私のは紛い物みたいだけどさ。しかし、この子は天然ジゴロですか? ハヤテ、君にはジゴロの才能あるよ。


 そんなこんなで、冒頭に戻るわけなんですよ。



 さて、そろそろ決戦の時は近いですね。もう一踏ん張りしますか!


 その前に…… あーうー、ヒリヒリするからフェミニーナ塗っとかないと。



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