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21話 灰色のギャンバイン


「そこっ!」



 私は一気に片を付けるべく、灰色のギャンバインに向けてビームマシンガンを三連射した。しかし、マグネットコーティングが施されたG-3ギャンバインは、

ギリギリだが、私の射撃を回避した。一連射は掠ったみたいだけど。



「少しはやるみたいですね」



 でも、これは牽制射撃です。ギャンバインが回避行動を取っている間に、私はバーニアを加速させてギャンバインとの距離を詰める。



「回避の動きが大きいですよ!」



 ビームサーベルに持ち替えた愛機の右腕をギャンバイン目掛けて、相手の左肩から斜めに袈裟斬りに振り下ろした。

 しかしこれも、間一髪のところで相手がシールドを繰り出して、私のビームサーベルを受け止めた。



「やるー!」



 しかし、ギャンバインのシールドは斜めに両断されて、その役目を終えた。



「そうこなくっちゃ!」


『子供の声だと!? 宇宙の魔女が子供ってのは本当だったのか!』


「子供じゃダメなの?」



 私がギャンバインのパイロットに気を取られている、その隙にギャンバインは頭部バルカンで牽制しつつ、距離を取ろうとする。



『戦場に子供が出るのは不自然だ!』


「それは正論かも知れないね」


『大人たちに無理矢理に戦わされているのか?』


「あら? 自分の意思よ。周りに流された面も否定はしませんけど。それと、距離は取らせないよ!」



 ただ単純に好奇心で、モックスを動かしてみたかったのも否定はしないけれども、イオンの、私の明るい未来を築く為に、いや、守る為かな?

 その為に、私の力が必要とされるのならば、私は私の力を振るうのに躊躇はしない。


 私はバルカンを最小の動作で避けつつ、今度はビームサーベルを斜め下から上へと振り上げた。



『ちぃっ!』


「ほぅ、これを受け止めたの?」



 ギャンバインのビームサーベルと逆袈裟を繰り出した私のビームサーベルとが、ぶつかり合ってスパークする。


 私は、この戦争が始まってから初めて高揚した気分になっていると思う。いままで私の射撃を避けれた相手はいなかったのです。

 ビームサーベルを受け止めた相手も、もちろんいませんでした。


 もしかしたら、ちょっと濡れているかも。

 というか、戦闘に性的興奮を感じている? あいやー、これではまるで、私が戦闘狂みたいじゃないですか、やだー。



『子供がなぜ戦うのだ!』


「戦うのに理由がいるのかしら」


『子供は戦場に出るべきではない!』



 子供、子供って、そりゃ私は子供かも知れないけれど、その子供の私を相手に戦っているアンタは何様のつもりですかね?

 凶器を振り回しながら、中身の無い御託を並べられても、誰が言うことを聞くんですか? ってな話ですよ。


 戦場で、そんな正論を大上段に振り構えて言われても、こっちは困るんですよ。私には私の都合があるのですから。

 鬱陶しくなってきたから、そろそろ終わりにしましょうか?



「そんなに御託を言いたいのなら、出家して哲学者か宗教家を相手にでもしてちょうだい。それで、こういうのはどうかしら?」



 ビームサーベルを滑らせるようにして、相手のビームサーベルを絡め取ってギャンバインの体勢を崩させる。こんな剣道やフェンシングのような動きは、マニュアルにはないのです。

 そして、私はビームサーベルから手を放して、刹那。



『な、なんだと!?』


「楽しかったわ。でも、これでお仕舞いです。バイバイ」



 ズドン!



 腕部に装備しているビームスポットガンを一撃、ギャンバインのコクピットに直撃させたのです。


 うん、これがやってみたかったのですけど、上手く行きましたね。

 誰も自分から、虎の子のビームサーベルを手放すなんて考えもしませんから、完全に虚をつかれるのは仕方がないのかも知れませんね。



「もの足りない」



 確かに、いままでの相手と比べたら骨はあったけど、もの足りなさを感じるのです。

 私にとっては、相手がG-3ギャンバインでも、ゲムが1/4スロー再生とするならば、精々1/3スロー再生になった程度にしかすぎないのです。


 大層なお言葉を頂戴しましたけど、結局のところギャンバインのパイロットは誰だったのかしら? でも、G-3ギャンバインを任されるくらいだから、

相手がエースだったのには変わりはないはずなんだけども。まあ、誰でもいいか、敵なんだし。


 ビームスポットガンの出力を低く抑えて撃ったから、爆散するまでには至らなかったみたいですね。ギャンバインの装甲のおかげでもあるのかな?

 コクピットの主をなくして沈黙して漂うギャンバインを見ながら、私は欲求不満を感じているのを自覚してしまったのです。


 もっと強い相手はいないのか? と。



「もの足りないから、今度から旧ゼナかF型で出撃してみようかしら?」



 さすがに、そんなバカな行為は止められてしまうのでしょうけど。それに、シーマ艦隊にはゼナは置いてないしね。

 こんな不純な動機で戦闘していたら、セシルに怒られそうですけどね。まあ、アイツはアイツで、かなりぶっ飛んだキチなんだけれどもさ。



「お見事でした隊長。といいますか、なにを馬鹿な事を言ってるのです。それよりも、そのギャンバインはどうしますか?」


「流石は隊長です! でも、そこに痺れもしませんし、憧れもしませんけど。旧式のゼナⅠだなんて、私は死んでも嫌ですよ」



 げぇ! レイチェル少尉とエクレア中尉に聞こえてたのか!


 ん? 丁度いいのがいるではないですか、被弾して後退しようとしている味方が。

 ネタモブにも出番を与えてあげないとね! 私って、なんて優しいんだろうかしら。



「ローレライ04よりローレライ11、ムタグチ曹長」


「こちらローレライ11。特務大尉殿なんでありましょうか?」


「このギャンバインを一緒に持って後退してちょうだい。護衛には09、シュミット軍曹が付いて行きなさい」


「11了解であります!」



 もう既に、我がイオンでもマグネットコーティングの技術は確立しているから、G-3ギャンバインも見るべき価値はないのかも知れないけど、せっかく良い状態で、ギャンバインを倒せているんだから、お土産に持って帰ってもいいよね。

 そのうち私って、連邦からギャンバイン強盗って呼ばれる日が近いのかも知れませんね。



「それから、09は11を送り届けたら私の予備のビームマシンガンを持って、戻ってきてちょうだい」


「09了解です!」


「さあ、05、06。私たちは残りの雑魚を血祭りに上げるわよ!」


「「了解!」」



 私たち、第13独立遊撃MOX増強中隊の02小隊の三機は、ラバウル頭頂部のNフィールドと呼ばれている中の、さらに南西の区域を縦横無尽に暴れまわるのです。

 それにしても、自分の所属する増強中隊の正式な名前を良く覚えていたと、自分を褒めてあげたい心境であります。普段は所属する艦隊名しか呼ばないしね。






「オートにばかり頼っているから」



 戦場で信じられる、頼れるのは自分の腕のみなはずのに、オートに頼るのは理解しかねますね。



「躱せなくて墜とされるのです」



 オートマティックは便利なのかも知れませんけれども、その分オートマティックな動きは予測しやすいのです。

 機械的な行動の弊害とでもいうべきなのでしょうか?


 私はクルクルと動き回りながらも、着実に敵を撃破してスコアを稼いでいきます。エクレア中尉もレイチェル少尉も、私には劣りますけど、着実にスコアを積み上げて稼いでますね。

 この二人も確実に、イオンのトップエースの仲間入りですよ!


 トップ50くらいだけれども。


 私はどうなんだ? といいますと、私は現時点では15番目くらいじゃないですかね? シーマ艦隊は常に最前線で戦っているわけではありませんので。

 サーベルフィッシュや、地球での71戦車の撃破とかを入れた数字では変動すると思いますので、これはモックスの撃墜数だけの話ですよ?


 あらかた敵を排除、敵のモックスが逃げて行ったともいいますけど…… 敵を排除し終えたところで、隣の区域で暴れている赤いマッティーニが目に入った。


 あれ? なんで赤い流星のヨシュアがラバウルにいるんでしょうかね? この時代の彼は、リリィと行動を一緒にしているはずじゃなかったっけ?

 敵も近くにいないし、ヨシュア少佐の助太刀をする為にも、隣の区域に飛んで行くことにしますか。



「なんで、ヨシュア少佐がラバウルにいるんですか?」


「なんでとは? 私は宇宙攻撃軍の所属ですから当たり前ではありませんか」


「あ! そういえばそうだったね」



 私が歴史を変えてしまったから、ヨハンが死なないでヨシュアもハンスに罷免されなかったから、アメリア旗下の突撃機動軍に移籍してないということでしたか。

 そうなると、リリィはどうなってるんだろ? 私が聞くのも不自然な気がしますので、聞きたくても聞けないのが残念ですね。でも、気になりますね。



「それはそうと、誰かさんが暴れたおかげで、こちらに敵が入り込んで混戦になっていますので、教官殿も手伝って下さい」


「あははは、りょうかいりょうかい、手伝いますよ~」


「といいますか、増えた敵は教官殿から逃げ出した連中ですので、教官殿の責任ですな」



 オーマイガー! なんということでしょうか。私が暴れたおかげで、敵はこっちに逃げ込んでしまってたみたいです。



「でも、なんで敵はこっちに逃げたのかしら?」


「こっちの区域の方が、相手をするのに容易いと踏んだのでしょう」


「そっか、赤い流星もなめられたものね」



 ヨシュアと軽口を叩きながらも、私は雑魚を血祭りに上げる作業を続けていく。



「教官殿が相手なら、誰だって逃げたくもなります」


「それなら、私がここに着たから、敵はまた隣に逃げちゃうってことだね」


「そうなりますな」


「なんだか、敵からゴキブリとおなじ扱いをされてるみたいに感じるわ」


「殺虫剤を持ってスプレーを噴射しているのが、教官殿の間違いでは?」


「そうとも言うのかな? ビームマシンガンも殺虫剤も、たいして変わりはありませんよっと!」



 私は敵の放ったビームを躱しながらも、お返しのビームマシンガンを一連射してあげた。

 うん、敵がビームマシンガンから逃げるゴキブリで正解みたいだね。


 でも、私からは逃げられないけどね!



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