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14話 評価試験


 SC 179.10



 ラウム7宙域から、無事にラウム3に戻ってきました。



 それで、木馬ことホワイトアークは、無事にシャバカタンガに到着してしまったみたいです。

 私がギャンバインを捕まえちゃったから、ヨシュアも追いかける必要がなくなっちゃったし仕方ないよね。


 でも、ハヤテのいないホワイトアークをヨシュアが追っていたら、撃沈されていた可能性もあったわけだから、これはこれで良かったのかも知れません。

 ヨシュアも姉であるセーラさんを殺さずに済みましたしね。ハイジもノゾミさんも助かったし、これで良しとしましょう。男たちはどうでもいいや。


 しかし、イオン軍による攻撃に晒されて不可抗力であったとしても、連邦の最重要機密でもあるホワイトアークに乗ったのだから、最悪の場合は、戦争が終わるまでは軟禁か監禁でもされるのかも知れませんね。


 結局、ハヤテは保護観察処分に落ち着きました。本当は収容所送りだったんだよ。ハヤテ君、私に感謝したまへ。えへん。

 まあ、連邦の新型MOXギャンバインを捕らえたのが、私だったのも大いに影響したと思います。


 普段は大人しい私が、珍しく強引にハヤテを庇ったのが功を奏したのかな? ヘス家三兄弟とお姉ちゃんにデリーズも、私の剣幕に引いていましたね。


 ハンスさんなんて、



「マ、マリア、お、落ち着け。お、おまえの言い分は分かった」



 おまえが落ち着けよって感じでしたし。

 あとで、嫌がらせとかないよね? 特にアメリアさん、あなたですよ?


 それで、ハヤテの身元引受人は私の父親が、後見人はセシリア・アインブルク、お姉ちゃんがなりました。未成年でハヤテより年下の私じゃなれないしね。


 お父さんご迷惑をお掛けします。それと、モブでごめんなさい。


 私がギャンバインを捕縛奪取した戦功は、ハヤテの身柄保護と引き換えに相殺されてしまって、昇進は見送りです。トホホ。


 正直なところ子供の私が、これ以上の昇進するのは立場上というか、組織全体を考えると非常に都合が悪いみたいですね。だって、考えてもみて下さい。

 マリア特務大尉、12歳。通常の軍なら中佐同等の階級です。残りの上の階級って、大佐、准将、少将、中将、大将これしかないんですよ? これは異常です。


 まだ若いとはいえ、ヨシュアならば、大佐になったのも納得できなくもない年齢なのですが。それでも若すぎますが。でも、彼は一応は大人だしね。ロリコンだけれども。

 といいますか、この世界ではヨシュアの昇進は遅れそうかな? 主に私の所為でなのですが。


 つまり、私の昇進は当分の間は望めそうにありません。グスン。

 昇進したとしても、特務の肩書が付くのは尉官までなので、特務大尉→少佐だと、通常の軍での権限は降級と同じ気がしないでもないです。


 まあ、いままで一度も他の部隊に越権で命令したことなんてないから、実害はないんですけどね。

 それに、士官学校を卒業または卒業と同等の成績を修めないと、佐官以上には基本的に昇進できない不文律があるのです。例外は、戦功著しい人ですかね?


 いくらイオンが実力至上主義とはいっても、ここらへんは旧世紀の各国軍隊と似ていますね。エリートは士官学校出に限る。

 確かに、無教養で無能な上官なんて敵よりも恐ろしいですしね。ましてや、その上官が自分は有能と勘違いした働き者なら、後ろから撃っても罰は当たらないと思います。


 もちろん、士官学校を優秀な成績を修めて卒業した人が、すべからく優秀な軍人とは限りませんが。机上では優秀でも、前線では無能な人はたくさんいますしね。

 逆に叩き上げで優秀な軍人が多数いるのも事実です。こういう人たちは前線指揮官にはピッタリです。あの名言、



「高度な柔軟性を維持しつつ臨機応変に対応する」



 これができるのは、杓子定規な秀才君ではなくて、野生の感を持った軍人なのですから。

 しかし、学歴というのは篩にはなるのです。いかにボンクラを少なくするのか? これの答えが学歴なのです。



 そんな私は中学一年生になりました。けど、学校に行く暇がありません! 制服を着てキャピキャピする私の青春は、どこに行ったんでしょうかね?

 勉強はリリー・マルレーンの仲間や、親衛隊の士官が教えてくれて大丈夫なんですけどね。


 小学生の分数の時点で躓いた時には、ショックでしたし恥ずかしかったですが……


 分数なんて、前世は大人になってからなんて使わなかったもん! 本当に理数系の人には頭が下がります。


 文系? 文系は十把一絡げでナンボじゃね?

 そりゃ、もちろん文系の人はいないと困りますよ。でも、いすぎても生産性が落ちるんです。毎日残業6時間の兵器工場で頑張って下さい。

 残業も生産性が落ちるってのは内緒です。


 話が逸れた。



 それで、件のハヤテ君。彼は私の実家で同居しています。同棲じゃないですよ? 同居です。取り敢えずは戦争が終わるまでは、私の実家で生活します。


 いくら彼がモックスの操縦知識が乏しい中で、ゼナを三機も撃墜している優秀なパイロットの卵でも、元敵性国民ですので、直ぐにイオン軍の兵士にするわけにはいきません。

 まあ、万が一にも誘われても、本人が断ると思いますが。それに徴兵されることも無いでしょうけどね。


 そんなニートで私のヒモであったハヤテ君はというと、現在、脱ニート宣言をしたのであります! パチパチパチ。

 そう、ヘロの改造プログラムが学習型OSの雛形なのです!


 それで、イオン公国軍、技術開発局システム部の臨時職員として、システム開発に半ば無理矢理、連れて行かれて働かされているのです。

 ギャンバインのプログラムの解析と併せて作業しています。イオンの技術者もビックリするくらいの知識を彼は披露しています。


 マジですか? といいいますか、いままでのイオン技術者がヘッポコだったのか?

 もちろん、ちゃんとお給料も出てますよ? かなりの高給取りです。私以上かも? く、悔しくなんかないもん。


 まあ、本人も楽しそうで、結果これで良かったのかも知れませんね。これにて、連邦の白い悪魔が誕生する目は完全に潰れたのであります。


 ハヤテの息抜きがてら、仕事兼趣味のプログラムのテストにシミュレーターでモックスの操縦はさせていますけどね。私からみれば、まだまだ未熟です。

 シーマ艦隊でいうと、エクレア中尉にも及びません。むっちークラスならばハヤテの方が上ですけど。


 あれでも、むっちーは親衛隊のモックス選抜に残って配属されているんだから、ネタモブの割には腕はベテランの域なんです。


 何百回の訓練よりも、一度の実戦ということなんでしょうかね? 彼は死線を掻い潜って強くなったのですから、シミュレーターでは、こんなもんなのかなぁ。

 それでも、ハヤテの成長スピードは異常ですけどね。



 それで、ハヤテの代わりといってはなんですけど、イオンの薄紫の魔女として、私がギャンバインを動かしています。

 マッティーニの腕を付けたギャンバインです。誰かさんが腕を切り落としちゃいましたからね。


 シーマ様とクリス大尉の二人と模擬戦をやった結果は、



 勝者左側



 ギャンバイン(マリア) 対 MOX-06R-2(シーマ)


 MOX-06R-2S (マリア) 対 ギャンバイン(シーマ)


 MOX-06R-2S (マリア) 対 マッティーニ(シーマ)


 マッティーニ(マリア) 対 ギャンバイン(クリス)


 ギャンバイン(マリア) 対 マッティーニ(クリス)



 うん、二人ともイジけちゃいました。ごめんなさい。私では模擬戦の意味がないってレム主任や技官の人にも怒られてしまいました。

 マッティーニは、YMOX-14を使いました。


 私だけには、



「モックスの性能の差が、戦力の決定的な差ではない」



 これが当て嵌まるみたいです。これをオリジナルでいった人は負け続けたんですけどね。誰とはいいませんけど、誰とは。



 結論を先にいえば、私にはギャンバインは合いませんでした。なんていうのでしょうか? しっくりこないんですよね。


 イオンのモックスに慣れているせいでもあるんでしょうけど、それ以上にフィーリングが合わないのです。

 コクピットのモニターを一つ取ってもイオンの方が優れていますしね。それが慣れといわれればそれまでなのですが。


 もちろん、ギャンバインの装甲は丈夫なのは認めますけど、それだけです。


 やっぱり、覚醒ハヤテwihtギャンバインじゃないと120%の性能は引き出せないみたいですね。

 マグネットコーティングが施されていないからもあるのかな? でも、それをいったら、ゼナもマッティーニもだしね。うーん……


 まあ、学習させる為に私がブン乗り回してはいるのですが。あまり実戦では乗りたいとは思いません。


 私の所見では、性能はマッティーニとほぼ同等か、ややギャンバインが上で、装甲はギャンバインの圧勝。機動性と運動性はMOX-06R-2Sが一番。こんな感じですかね?

 ってことは、ゼナを乗り続けた方がいいってことになるのか? あの子は特別にビームライフルも使えるしね。


 そう、ビームライフルが遂に回ってきましたよ! ビームサーベルも装備できました! 本当に数年後のハイゼッナが霞んでみえますね。

 予備弾倉が二つ減るけど、腰部のラッチにマジンガンを引っ掛けて、ビームライフルとの二丁使いをする予定です。さすがに同時には使いませんけど。


 来月には、私以外のMOX増強中隊のみんなは、マッティーニに乗り換えるみたいです。本来ならば私もなんだけれどもね。私はMOX-06R-2Sでいいや。Fsかイェーガーなら欲しいけど。


 アメリアさんのところのキマイラ隊には、既に先月には配備されているのにね。まあ、あれはYMOX-14だけどって、量産機よりも性能いいじゃん!

 あれ、実質的にMOX-14Sだもんね。


 量産型のMOX-14Aマッティーニは、はっきりいって、MOX-06R-2をデチューンしちゃっている気がします。ただ、ビームライフルとビームナギナタかサーベルを使えるだけの気がしますね。

 もちろん量産機ですから、整備性は格段に良くなっていますけど。それでも、量産機ゆえの悲しさかな、MOX-06R-2の良いところが、半分以上スポイルされています。


 それに目を瞑るだけの価値がビームライフルにあるかの? これは好みの問題なのかなぁ。

 まあ、マッティーニMやJなら、またべつの話なんだけどさ。


 私のMOX-06R-2Sと比べるから、しょぼく感じるだけで、MOX-14Aは量産機としては破格ではあるんですけどね。


 マッティーニの配備が1か月早ければ戦争の結果は違ったものになっていた。なんてことも史実では言われてたしね。配備は早まっているよね?

 もっとも、史実と違う結果といっても、殴り殴られの泥試合の展開が目に浮かぶのですが。


 ギャンバインは、どうしよう? シーマ様かクリス大尉かルーデル中尉、もしくはロリコンに乗ってもらおう。


 それで、ギャンバインの装甲材のルナチタンですけど、イオンで同じモノを作るには最低でも、半年から一年は掛かるそうです。

 まず、治金技術が未熟なのと、生産設備が既存の設備を使えないとのことです。


 それならば、多少強度は落ちますけど、いま既に生産中のチタンセラミック複合材を生産した方が効率も良いし現実的だというのを、ラーム技術中佐から教えてもらいました。




「そういえば、諜報部から面白いネタが入ってきたぞ」



 いまはシーマ様と一緒にティータイム中であります。コロニー産の茶葉だけれども、私の舌では地球産もコロニー産もたいして変わりがありません。

 貧乏舌ではないですよ? なんでも美味しく食べれる最強の舌なんです。


 ただし、セロリ、てめーはダメだ!

 それに、貧乏舌の本当の意味はアホって意味ですから。



「面白いネタですか?」



 なんだろう? 私たちの間では、ただ単に諜報部というのは親衛隊諜報部のことです。いろいろな組織が独自で諜報部を持っているのです。

 しかも、情報の共有なんて大切なことを知っているはずである、情報のプロが、敢えて情報の共有をしていないという、性質の悪い部署が各諜報部なのだ。


 おまえらは一体全体、誰と戦っているのかと問い詰めたい気分にさせられます。彼らの頭の中では連邦は二の次なんだろうなぁ。はぁ~。



「マリアはロスチャイルド博士を知っているよな?」


「はい、アメリアさん、アメリア少将のところで何度か実験に付き合わされました。デリーズ閣下を太らせた感じの人ですよね。シーマさんも一緒に行きましたよね?」



 ロスチャイルド博士、色の浅黒いハゲで太ったちょっと不気味なおじさん。あの人、肝硬変じゃないの? ってくらいに顔色が悪いです。地黒?



「そそ、そのデリーじゃなかった、ロスチャイルド博士の研究所がラウム6にあるんだが、そこに所属していた博士の一人が連邦に逃げ出してねぇ」


「連邦に亡命ですか?」



 うん? なんか引っ掛かりますね……?



「なんだか胡散臭い研究をしていたみたいで、アメリア閣下の配下が隠蔽工作に必死で右往左往していて、みっともないったらありゃしないさね」


「その博士の名前ってもしかして、クルスク……」


「なんだ知ってたのかい? そう、クルスク・モーゼとかいったね」


「エグザエム……!? 忘れてたー!」



 やっぱりー! 忘れてた! マリリンだ! 彼女が犠牲になってしまった! 完全にド忘れてしてたー!

 味方のネオヒューマンを一人潰してしまった。


 マリリン、救えなくて、ごめん……


 私の前世の記憶も、だいぶ薄れてきているみたいですね。でも、言い訳をさせてもらえるならば、私だって完璧チートでもなんでもないのですよ。だから、全部が全部救えるって思うのは傲慢なのかも知れないですよね?

 いや、"知れない"じゃなくて、完全に傲慢だな。


 私の手は、そこまで大きくない。手からこぼれるモノの方が圧倒的に多いのです。それに、知っていたとしても私になにができた? 相手はアメリアの管轄の特殊研究機関だ。私では、マリリンをあの施設から出すことすらできなかっただろう。

 うん。これにて、自己弁護は完璧。



「どうしたんだい? 急に大声を出して。お茶も零しちゃってるよ」


「いや、どのみち連邦に逃げたのなら、もう手遅れですよね……」


「事件発生からもう既に一週間以上が経っているから、研究したデータは、連邦に渡っているとみて間違いないだろうね。裏でコソコソするから鼠も入り込むのかねぇ」


「そうかも知れませんね」



 あれ? でも、そういえば、最終的にマリリンの意識って戻ったって話だったよね? それならば、結果オーライ? 詳しく知らないから、これ以上首を突っ込むのは止そう。

 私は神でも仏でもないのだから。



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