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10話 敵の新型艦


 SC 179.09



 ……なかなか接敵しませんね。というか、あれからラウム3の周辺に敵が来てくれません!


 お小遣いは増えませんでした。グスン。


 グレナダ宙域やラウム6宙域には、連邦も嫌がらせをする為に、たまにウロチョロしていたりするのですけど、私たちシーマ艦隊は、本国でお留守番だったのです。

 まあ、その分の空いた時間で訓練、訓練、また訓練の猛特訓をして、地球の部隊を除いたら練度は恐らく、イオン軍の中で一番だと自負できる腕まえを誇ってはいるのですけど。


 そうそう、ハンスさんのお嫁さんのエナさんが、可愛い女の赤ちゃんを産みましたよ! 名前はもちもん、シャルロッテです。

 まだ、お猿さんと変わらない容姿なのは内緒ですけどね。


 それにしても、シャルロッテはお父さんに似なくて良かったでちゅね。あんなゴリラに似たらと思うと、ね?


 あんなゴリラのクセしてエナさんだけでなくて、クロエのお姉ちゃんまで愛人にしているなんて許せん! モゲてしまえ!

 というか、ハンスよ。女子供をラバウルに連れて行くなよ? 絶対だぞ? 私は反対しますからね!


 クロエといえば確か私と同世代だよね? 離れていても1歳か2歳上くらいのはずだけど、彼女は現在どこにいるんだっけ?

 ラウム6にあるロスチャイルド機関か、アステロイドベルトに行く途中かな? それとも既に、アステロイドベルトにいるのかも知れないけど、なんか気になるね。


 いままで気にも留めてなかったけど、一度気にしたら気になるなぁ。べつに会ったからといって取って食おうとか、どうこうする訳でもないんだけどね。


 ただ、氷の女になる前の少女のクロエを見てみたいっていう、野次馬根性丸出しなだけなんですけどね!

 彼女が、ああなったのは全部、ヨシュアが悪いんだ。うん、そうだ。そう思おう。今度、手合わせすることがあったらボコろう。


 それはそうと、いよいよ今月はXデーがある月のはずです。詳しい日時までは知らないけど、これは、ほぼ間違いないだろう。そうでないと連邦の反攻作戦が遅れてしまいますしね。


 地球上では、ちらほらと連邦のモックスの目撃情報が入ってきていますし、既に交戦もしたみたいです。つまり、ラウム7に潜入したギーンが乗るゼナとギャンバインとの交戦が、史上初めてのモックス同士の戦闘というのは間違いだったのです。

 宇宙では、まだモックス同士の戦闘はありませんけどね。


 そもそも、ギャンキャノンみたいなのとは、一年前に月の雨の海で交戦していますけれども、それはそれってことで。



 前置きが長くなりましたけど、私たちシーマ艦隊は現在ルナツリーに向かっています。べつに、ルナツリーを攻略するわけではないですよ?

 ただ、嫌がらせをしに行くだけですから。威力偵察ってヤツです。


 地球降下作戦の前にルナツリーを攻略すれば良かったのに。そう、思わなくもないのですけど、ヘス家三兄弟と参謀本部の考えは、地球降下作戦を優先させる。

 これが答えでした。ルナツリーごときいつでも落とせる。という甘い考えの元にルナツリーを放置していたら、要塞が強固になっていましたとさ。


 自分たちも、ラバウルとコホクウクーを要塞化しているんだから、当然相手もルナツリーを要塞化するって分かるでしょ?


 なんだか、イオンの戦争遂行目的というのか、戦略が見えてこないんだよね。あれもこれもの中途半端というのか、泥縄式っていうのかさぁ……

 本当にアドルフは、IQが240もある天才なのか? 疑問に思う今日この頃です。


 主義主張に凝り固まって、視野狭窄になっている気がしますね。連邦に勝つには宇宙VS地球の構図に持って行くのがベストだったと思うんですけどね。

 まあ、過ぎたことを今更グチグチ言っても時間は戻ってきませんけど。


 っと、話が逸れた。


 本当はドナウ戦役で受けた傷が予想以上に大きくて、ルナツリー攻略どころではないのだと思いますね。「ルナツリーごときいつでも落とせる」なんて言ってたけど、大言壮語に聞こえる。

 こんなホラを言った人は誰ですか?


 それで、傷を回復するのに時間が掛かってしまったのと、相手がルナツリー引き籠もっている為に、正攻法からの攻略では損害が馬鹿にならないので、いまでは迂闊には、ルナツリーに手が出せない状態なのです。

 それでも少しでも、敵の数を減らそうと挑発をしたり、ルナツリー周辺宙域をパトロールしている小艦隊を襲ったりという、涙ぐましい努力をして、チマチマとした作戦を繰り返しているのです。


 そりゃ、ルナツリーを落とそうと思えば、落とせるとは思いますよ? また、ドナウの時以上に艦隊の再建には時間が掛かりますけど。でも、その間に連邦の物量に押されて、負け続ける可能性が極めて高いってだけで。


 戦いは数というのは、昔から変わらぬ戦争の大原則だと思いますね。貧乏国家で戦争を遂行するのは、本当に骨が折れる難儀なことで頭が痛い問題ですよ……

 もっとも、それを考えるのは私ではなくて、お偉いさんの仕事なのですがね!






 SC 179.09.15



「シャバカタンガから上がってきた連邦の単独艦を捕捉しました。これが最大望遠です」



 そう言って、オペレーターがスクリーンに捉えた敵艦を映し出した。



「ほう? これは見たことがない艦だねぇ」


「木馬? それともスフィンクスかな?」



 ついにきました。Z作戦で、ギャンバインを回収する為に、ホワイトアークが宇宙に上がってきました! それで、私が生ホワイトアークを見た感想が、スフィンクスでした。

 木馬にも見えないこともないけど、どっちかというと、エジプトに座っているアノのイメージですね。



「私には、折り紙の鶴の出来損ないに見えるねぇ」



 シーマ様には、ホワイトアークは折り鶴の出来損ないに見えたらしいです。確かに、そう見えなくもないかな? というか、折り紙を知っていたんだ!

 子供の頃のシーマ様が、折り紙で鶴を折っている姿を想像したら、ニヤニヤしてきました。うぷぷ。



「ふむ、双胴艦タイプの新型艦か。補給艦にしては少し違う気がするな」


「艦長、あれは強襲揚陸艦に近い感じがします。それも、モックス搭載型の」



 カッセル大尉は鋭いですね。さすがは船乗りの勘ってヤツですか? だから、私も見た感じの初見を言ってみる。

 まあ、初めから答えを知っているんですけどね。



「マリアの言う強襲揚陸艦ってのが本当だとすると、あの双胴はモックスデッキってことかい?」


「そうなりますね。たとえ補給艦であったとしても、あそこにモックスも入りますけど」


「って事は、連中もいよいよモックスを実戦投入してきたってぇのか!」


「今回は、あの中には恐らくモックスは入っていない気がしますね。積んでいてもルナツリー向けの消耗品とかじゃないでしょうか」



 カッセル、シーマ様を見習って落ち着け。どうどうどぅ



「マリア、どうしてモックスを積んでないと言い切れるんだい?」


「シャバカタンガから上がってきたから、単純に宇宙用のモックスは積んでないって思っただけです」



 ごめんなさい、インチキ使いました。ラウム7にギャンバインを迎えに行って回収するのが任務です。とは、口が裂けても言えませんけれども。

 なんで、そんなに詳しく知っているんだって突っ込まれたら、言い訳できませんし。


 それに、まだこの時期の連邦は、宇宙でのモックスのノウハウがないのを分かっているから、言い切れました。



「それで、ルナツリーは常時監視していますよね? ルナツリー周辺宙域では連邦のモックスは確認されてません」


「なるほど。例えシャバカタンガで生産されたモックスを搭載していたとしても、宇宙用のテストは地球では出来ないってことか」


「はい。我々の監視の目を掻い潜って、ルナツリーの後方宙域でテストでもされていたら、話は違ってきますけど」



 ラウム7でテストしているのは、知っているんですけどね。知っていて見逃していたわけではありませんよ?

 私はちゃんとお姉ちゃん経由で、「ラウム7が怪しい」って意見は言ったもん。


 連邦が宇宙でモックスのテストをする場合の宙域は、ラウム7宙域しかないのは上層部も分かっていたはずなのに、どうしてこうなった?

 答えは、連邦のモックス開発の進捗状況を甘くみていた。これが多分正解だと思います。


 私の意見は重く受け止めてはもらえませんでした。まあ、子供の意見だし、私には裏付けを取った正確な情報なんて取れないから、仕方ないよね。

「私は未来を予知できるのです! だから私の言うことを聞きなさい!」なんて言って、誰が信じるのですか?


 信じれば救われるだなんて、どんなインチキ宗教ですか?


 つまり、軍や官僚機構のような巨大な組織というのは、私のような子供の意見というか戯言では動かせないし、動いてはいけないのです。


 それがまた歯痒いのですが。こればかりは、私にはどうにもできません。

 私がファンタジー小説の主人公で、チートができるのなら、影の宰相としてアドルフを裏から操って色々とできるのかも知れませんが。


 まあ、それができたのなら、そもそも戦争なんか起こさせませんでしたけどね。残念ながら、ここは現実なのです。

 っと、話が逸れましたね。最近、妄想が酷くて困ります。



「ルナツリー後方宙域? 建設中のラウム7宙域か? 確かに、あそこならば、連邦がテストするにはうってつけだが……」


「たとえ、あの艦にモックスが乗っていたとしても、敵はまだ宇宙でのモックス戦のノウハウが不足しています。叩くのなら早い方が良いかと思います」



 木馬を撃沈するか拿捕できれば、取り敢えずギャンバインの回収を遅らせれる。その間に、こっちはマッティーニの数を揃えられれば、多少は有利になるはずなのです。

 試作機のYMOX-14は既に完成しているのだから、史実よりは少し早く、マッティーニを配備できると思います。完成時期なんて知らないから、思いたいだけなのかも知れませんが。



「マリア様だけれど、現在の我々はルナツリー襲撃作戦の支援任務中ですぜ?」



 それは、カッセル艦長の言う通りであって、現在、シーマ艦隊はルナツリーに嫌がらせをする途中なのです。その作戦のおかげで、たまたま木馬を発見できただけなのですから。



「ルナツリー支援任務と連邦の新型艦どちらが重要か? か。悩ましいね…… 通信士官、デリーズ閣下に通信を繋げ」



 シーマ様の命令で、通信士が本国の親衛隊本部との回線を繋いだ。




「シーマ中佐どうした、貴官はルナツリー襲撃作戦の支援任務中であろう?」


「ハッ、その途中で連邦の新型艦をキャッチしましたので、報告及び閣下に判断を仰ぐ為に通信しました。詳細はこちらになります」



 うん、デリーズ准将は相変わらずテカってるね。今度、油取り紙をプレゼントしてあげよう。喜んでくれるかな?


 いくら指揮系統が独立している、親衛隊の独立遊撃艦隊といえども、一度決められた作戦とは別の行動をするのは憚られるのです。

 今回の作戦でいうと、ハンスの宇宙攻撃軍がルナツリーに嫌がらせをする、その側面支援の為にシーマ艦隊は動いているわけですから、

いくら木馬がルナツリーかラウム7に行くことが分かっていても、現時点での木馬の位置に、こちらから接近するとなると戦場離脱と判断されかねないのです。


 わざわざハンス中将が親衛隊に頭を下げてまでして頼み込んで、本国で暇をしていたシーマ艦隊を支援任務に組み込んでいるのだから、今回の場合は、独自指揮権を盾にした独断専行は特に憚られてしまうのです。

 でも、宇宙攻撃軍ってルナツリー攻撃に戦力を割けないくらいに、忙しいとも思えないんだけどなぁ。


 それでシーマ様は、ハンス中将の顔を潰さない為にも、わざわざデリーズ親衛隊隊長閣下にお伺いを立てているわけなのですよ。

 司令官にまで出世すると、政治的なことまで考えないといけないだなんて大変ですね。


 アドルフ派の親衛隊、ハンス派の宇宙攻撃軍、アメリア派の突撃機動軍と地球方面軍。そんな感じに指揮系統が分かれているのです。

 だから、階級が二つも上のハンス中将が、一々デリーズ准将に頼んでいるわけです。


 作戦毎に一々協定を結んでいた、どこぞの帝国陸海軍の姿とダブるのは気のせいですかね?



「そうか、ご苦労であった。ふむ、ハンス閣下の顔を潰す訳にもいかんしのぅ。貴官はそのまま連邦の新型艦を監視せよ。ハンス中将には儂から伝える」


「ハッ! 了解であります」



 それから、デリーズ閣下より通信が入ってきて、木馬の行き先はルナツリーなので、木馬の監視は一度解除して支援任務を継続せよとの命令がきました。

 まあ、ルナツリーとラウム7しか木馬の行く場所はないから監視する必要もないしね。


 これで、史実通りにヨシュアが木馬の追跡をすることになるのかな?


 でも、いま私がここにいる意味は?


 イオンが負けない為に戦っているのに、わざわざイオンのエースを数多く屠ることになる、強大な敵になるまで見過ごすなんて謂れはないよね。

 ハヤテには、ほんのちょっぴり悪い気もするけどさ。


 ハヤテがネオヒューマンに覚醒するのは、確か、マルガリータさんが死んだ後だったはずだ。覚醒する前なら私でも勝てるか? ……殺っちゃう?



 宇宙戦士ギャンバイン 1話 ギャンバイン大地に立てなかった ~完~



 うん、これが一番ベストな方法だね! どうせ原作のギャンバインも、視聴率が悪くて打ち切りになったんだから、

 べつに、一話で打ち切りでもいいよね!



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