第四幕
@塔
冬の女王様「降参よ。どこにあるか教えなさい」
姿見「それでは、ランプの底を、私に映して御覧なさいまし」
――冬の女王、姿見に従う。
冬の女王様「あら、こんなところにあったのね」
姿見「やはり、そこに鍵を填めこむようにできていることを、お忘れになっていたようでございますね。いやはや。大正デモクラシーでございます」
冬の女王様「それを言うなら、灯台下暗しよ」
姿見「それは、ともかくといたしまして。鍵が見つかったのでございますから、早急にドレスに着替えなさいませ。フゴッ」
――冬の女王様、姿見に布を被せる。
冬の女王様「言われなくたって着替えるわよ」
*
冬の女王様「どうしたことかしら? ちょっと見てみましょう」
――冬の女王様、姿見の布を外す。
姿見「フゥ。危うく窒息するところでございました。おや? まだ着替えの途中ではございませんか」
冬の女王様「あら、おかしいわね。ウエストのボタンが、少しばかり遠いわ。フグッ」
姿見「食べたいだけ食べて、寝たいだけ寝てございましたゆえ、お太りになられたのでございましょう。お痩せになることでございます」
冬の女王様「身も蓋もないこと言わないでちょうだい。ホッ」
姿見「しばらくのあいだ、食事をお控えになり、身体を動かされないと、とても無理でございますよ」
冬の女王様「ハァ、駄目だわ。もうチョッとなんだけどなぁ」
姿見「お言葉でございますが、片手幅は一寸では収まらないものでございます。モガッ」
――冬の女王様、姿見に枕を投げる。
冬の女王様「余計なことを言わないでちょうだい」