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陽子は、事務室に来た。
ここからは、介護士とそれ以外の家族が分かれてのミーティングになる。
介護士達は、士郎や一などは居候達の食事の手伝いとなるためで、あの「あさの会」がミーティングになる。
陽子は二度もミーティングをすることに、違和感があるがこれがここでの決まりと割り切った。
事務室内には、陽子の他に、美玲、笑子、そして夜勤明けの水野に、同じく夜勤明けの 黒井 繁 と言う介護士二名、そして看護士で夜勤明けになる 市川 麻奈美の五名が今回のメンバーだ。
「やっと来た、さっさと始めてよ。わたし、帰れないじゃないの。」
待ちくたびれたように、麻奈美は言った。
麻奈美は美玲と同じく、掘りの深い顔立ちで鼻筋のたかい女であるが、美玲より鼻につく所があり、少々自尊心が高い。
「まあ、そう言いなさんなって」
麻奈美を宥めたのは、繁だった。
介護士の中では、水野の次に若い青年なのだが、物怖じのない性格でよく家族ともめ事を起こすのだか、竹を割った性格は憎めない。
「揃ったわね。さっさと、終わらせるよ」
笑子は、鼻息あらく言った。
ミーティングは淡々と進んだ。
正徳のあさの会と比べ物にならないくらいだ。
これが普通なんだけど……
陽子は、思う。
普通のミーティングは、終わりに近づいた時、笑子が「あっ、そうそう」と言った。
そして、こう切り出した。
「あのポスト、明後日には撤去するから、ようやく郵便局から連絡があったそうよ」
ポストか……
陽子は、思った。
ここに来た時は、最悪の出来事から始まった。
全ては、ポストと士郎と赤の仕業で、将太のあれがあってのことだ。
「将太君、大丈夫ですか?」
水野は、質問する。
「水野、お前がヘマしなかったら、何とかなる」
応えたのは、繁だった。
コイツも水野か……
陽子は、思った。
「だいたい、陽子がここに来た時の一件も、お前がしっかり将太を見張っていればなかったんだ!」
繁は、追い討ちをかける。
水野は、無言でうつむいていた。
しかし、ただうつむいているだけで、反省しているかはわからない。
そんな感じに見える。
「繁、止めな、速く終われないだろ!」
麻奈美は、髪をかき上げながら、繁に言った。茶髪と所々金髪に色を付けた長髪は、まるでどこぞの風俗嬢のようだ。
こんな奴が、よく勤まるわね……
陽子は、いつも思う。
「そこまで、繁クンも麻奈美チャンも」
美玲は、二人を諭す。
「水野さん、アナタも仕事に誇りを持ちなさい」
そして、説教も美玲はした。
「ハイハイ、もう終わりにするよ!わたしゃ腹減った」
笑子はそう言うと、ミーティングを解散させて、机の上に置いてある羊羹を食べ出した。
それを見ていた、他メンバーは最後に同じ意見を心にしまい込んで、苦笑しながら部屋を出た。