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( ꒪ д꒪ ⊂彡☆))Д´)

さて、先日なにか宣言を残して逃げ出した柿沼藍ことAです。


逃げたことは潔く認めます。


ですが今日、宣言通りドキドキハラハラワクワクウキウキな展開を用意しておりますようふふ。


なんと今日は私と桐山君が日番の日なのです。


初めてです、桐山君と日番なんて。


前回まわってきた時は前の席の小原さんと組んでいたんですけど、今回は人数のズレによって私が桐山君と組むことになりました。


なってしまいました。


……正直、とてつもなく嫌です。


日番にこんな恐怖を覚えたのは初めてです。


確かにネタとしてはとびっきりの上物かもしれませんよこんな展開。


でも私からしたらドキドキハラハラワクワクウキウキのハラハラくらいしか感じられない展開なんですよ。


ある意味ドキドキも含まれるだろうけど。


あー憂鬱だ放課後なんかこなければいい。


そんなことを思い続けて6時間ちょい。

構内に本日の授業終了を知らせるチャイムが鳴り響いた。


「………」

「………」


LHRを終え、帰り支度を始める私と桐山君。


果たして彼は自分が日番であることを認知しているのだろうか。


こういうのも本人に聞いてみた方がいいのだろうか。


いやまてよ、そんなことをして「は?んなの知ってるよ。そんぐらいで話しかけてくんなカス」とか言われたら多大な精神的ダメージを受けてしまう。


ここはもう安全ルートを選んで一人黙々と日番の仕事に励んだ方が良いのだろうか。

いやでもそしたらまたつまらない展開に……


……ん?ごちゃごちゃと思考を巡らせている私の視界に、教卓の上に学級日誌を広げてシャーペンを走らせている桐谷君の姿が映る。


あ、ちゃんと分かってたんだ……なんか、すんません…


さて、桐山君が日誌を記入いる間に私は何をしようか。そういえば今日は週末だからゴミ出しの仕事があったんだ。


そう思い、ゴミ箱の方へと向かう。


燃えるゴミ、缶、ペットボトルに分別されているゴミ箱の中身を取り出して新しい袋と交換する。


取り出されたゴミ袋の口を縛って、さぁ完成。

後はこれを外の何かゴミ集める所に持って行くだけだ。


まぁでも、流石一週間分のゴミとでもというべきか。


サンタクロースが担ぐあの白い袋に負けず劣らず、パンパンに膨れているゴミ袋が計3個。


さて、これをどうやって外に運び出そうか。

両手に一つずつ持ったとして、後の一つはどうしようか。片手に二つ持とうか。


でもそしたら大分横幅を取ってしまう。

三つ積み重ねて両手で抱えようか。でもそしたら大分視界が狭まってしまう。


……まぁとりあえず、前者の方法を試してみようか。


「よいしょっと…」


うん、まぁ持てなくはない。

重いけど持てなくはない。

大分横幅を取るけど持てなくはない。


よし、これで行こう。そう思い、廊下に一歩踏み出した瞬間ーー……


「おー柿沼、お前今日日番か。ならこれも持ってってくんねぇか?」


顔を右に向けると、廊下のゴミ箱から中身を取り出す我が担任の姿。

それを両手に一つずつ持って近づいてくる我が担任の姿。


「じゃあ、よろしくな。」


そして私の足元にゴミ袋を置いていく我が担任の姿。


「………」


先生、貴方は今、私に死刑宣告を下したも同然なんですよ。私を殺そうとしたも同然なんですよ。


明らかに一人では重量オーバーな数のゴミ袋を私に頼む=日番二人で協力して持っていけ。


にちばんふたりで、キョウリョクシテ。


恐る恐る教室の中を覗くと、教卓にはまだ日誌を書いている桐山君の姿がある。


明らかにこっちの状況には気付いていないようだ。


てことは私が彼に声をかけなければならないということだ。


さて困った。


彼に声をかけ、嫌悪感丸出しな顔をされながら渋々ゴミ袋を持ってもらい、微妙な距離を空けながら無言で外まで歩いていく、という状況は勘弁してもらいたい。


さて困った困った。

他の人に頼もうか。いやでも、何回かに分けて運べば別に運べなくもないんじゃ…


「ねぇ。」

「……っ!?!?!?」


声のした方に振り返ってみると、なんと日誌を書いていた筈の桐山君が側に来て私の方を見ていた。え、え、何で???


「日誌、あんたも記入して。」


彼はそう言って、私の目の前に日誌を開いて差し出してきた。


あぁ、そういえば感想みたいなとこは二人で記入するんでしたっけ。


日誌の先っちょを持って差し出してくる彼の様子からして、やはり女嫌いは健全に作動しているようです。


「……ありがとう。」


一言それだけ言って日誌を受け取ると、桐山君は睨むような目つきをした後、私の横を通り過ぎた。


あ……あははあはは。


桐山君はやっぱり健全な桐山君でした。


はぁ……やっぱり、記入し終わった後一人でゴミ袋を運ぼうか。


とほほと心の中で呟き、鞄の中にしまって置いた筆箱を取り出す。


えーと、今日は何があったっけかな。

えっとえーっとえっと、『古典でラ行変格活用を覚えました。ありおりはべりいまそかり。by柿沼』っと。


おっけ出来た。


書き終わった日誌を教卓の中に入れ、筆箱も片してゴミ袋の方へと戻る。


そして異変に気付く。


……あれ?ゴミ袋って2個しかなかったっけ?


計5個あった筈のゴミ袋が、なぜか2個に減少していた。


あれあれあらら?3個どこいった?んん?


周りを見渡してもゴミ袋らしきものは他にはない。


あ、もしかして誰か持って行ってくれたのかもしれない。


そうかそうか。

優しい人もいるもんだね。


じゃあ残り二つも運んじゃおう。


「よっこらせ。」


両手に一つずつ持ち、教室を後にした。


あー、何か思ったよりも重いな。


3つ持ってくのはやっぱ大変だったのかも。

本当、先にゴミ袋持ってってくれた人に感謝ですわ。


そんな事を考えながら階段を降りて行くと、ふと、廊下の窓から見知った顔が見えた。


あれ、あそこにいるのって…桐山君?


窓の外、丁度私が向かおうとしていたゴミ置き場に、桐山君が立っていた。


何してるんだろ。


良く見てみると、桐山君は手に新しい袋のような物を持ち、そこから移動しようとしていた。


あれって…ゴミ袋?


ゴミを捨てた後、ゴミ置き場で新しい袋を貰うシステムになっている。


え、え、じゃあ、まさか……、桐山君が?最初3つ減ってたのって、桐山君が持ってってくれたからだとか?


ガチャリと外への出入り口が開いて、先ほど目にした桐山君が出て来た。


私と視線が合うと、ギロリと睨むような目をして通り過ぎようとする。その様子に私は慌てて口を開いた。


「あ、ありがと。えっと、ゴミ、運んでくれて。」


うわわうわわ、何コミュ障みたいにつっかえてるんだ自分は。


ギクシャクしながらも一応お礼を言うと、彼は再び私に鋭い視線を向けた。

眉間を寄せながら。そしてこう言った。


「あんた本当に気に食わない。」


……………はい?


彼はそれだけ言うと、私の横を通り過ぎて行った。


えーと、はい?

あの、私、気に障るようなことした覚えないんだけどな、え??


しばらくの間、私は両手にゴミ袋を抱えたままその場に立ちすくんでいた。


通りすがる人に変な目で見られたのは言うまでもない。

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