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『やっぱりこけた。』
『だから、あんたは変わらなくていいんだよ。僕が冷たくなったから。』
『その子もあんたのこと好きだよ。今も考えてるくらい、現在進行形で。』
『皆嫌い。誰一人特別扱いはしない。そうすれば皆平等。』
ああ、そうだ。全部つながった。
私のことを知っていたからこけるのを予測していた。私が変わってしまったのを彼は自分のせいにしていた。
彼はこんな私のことを、好きだと言ってくれた。
だから彼は皆を嫌い、私も嫌い、皆に女嫌いの印象を植えつけ、嫌悪することで平等を造った。
優しさを捨てた。誰も羨ましがらないように。妬みが生まれないように。二度とあの頃の悲劇が起こらないように。
あの温厚だった大塚君は、私のせいで、私の為に、冷酷な桐山君になってしまったのだ。
「ご、めんねっ……」
ああ、自分はなんてことをしてしまったんだろう。自分の身勝手な行動によって一人の少年の人生を大きく変えてしまった。
私がいじめなんかにあうような弱い子じゃなかったら。負けないで立ち向かっていたら。逃げずに彼を想い続けていれば。彼はこんなに思い詰めることもなかったかもしれない。
「ごめんっ……ごめんねっ……私がもっと強ければ、貴方は変わらなくて済んだのに……私が貴方を酷い人にした。私が貴方を冷たくした。私がっ…!」
「ねぇ。」
溢れ出しそうになった言葉が、彼の声によって止められた。我に返って彼の方を見ると、まっすぐな視線が私を貫いていた。
「君には、僕が酷い人に見える?」
「……見えないよ。逆に優し過ぎるくらい。」
「だったらいい。」
「……え?」
「他の人にどう思われようと、君にだけそう見えてればいい。君が本当の僕を知っていてくれればそれでいい。」
「っ……」
彼は優しすぎる、本当に。心の奥底から何かが溢れ出てくる。それは罪悪感やら後悔やら感謝やら愛しさやら。ごちゃごちゃと混ざりあったものがこみ上げてきて、視界をぼかす。
「引っ越したあと、すごく後悔した。あんな状態のまま別れをしてしまったこと。だからもう一度会いたかった。一目見るだけでもいい、自分の存在に気づかなくてもいいから。その自己満足のために、君と同じ中学の知り合いに君の志望校を聞き、同じ高校を受験した。ただ一目見れればそれで良いいと思ったけど、君と同じクラスになって、席が近くなって、長い間側にいるうちに、小さな欲が生まれた。やっばり存在に気付いて欲しかった。昔たくさん君を傷つけ、今はたくさん君に暴言を吐いていた僕にそんな資格なんてないだろうけど、やっぱり心のどこかで気付いてくれることを望んでた。貪欲だよね。そして君はこうして僕を大塚と呼んでくれた。僕を分かってくれた。それでもういい、それだけでもう十分だと思ったんだ。思ったけど……やっぱりだめだったみたい。…ごめん。
……君をまだ好きな僕を、どうか許してください。」
ああ、ダメだ。零れた。
彼の言葉を聞いた瞬間、目から沢山の雫が溢れ出した。
「……何で泣いてるの。」
「……わたしも、」
「ん?」
「私も、許して……今こうして好きな人から告白されて喜んでるの、どうか許してください……」
「……うん、許すよ。」
ああもう、ごちゃごちゃごちゃごちゃ。
嬉しくて愛しくて堪らない。
沢山傷付け合った。沢山すれ違った。そして沢山想いあった。
今まで受けた傷も与えた傷も、すれ違った時間も、今考えればその全部がこの結末に辿りつくためのパーツだったのかもしれない。
涙でぐちゃぐちゃになった顔を綻ばせると、桐山君はそんな私を見て微笑んだ。
そこにいたのは冷酷な桐山君でもなく、幼かった大塚君でもない、
完璧な王子様の桐山君でした。