(☄´◉ω◉)☄)・ω・)・゜*・ゴフッ
「近寄らないで、お願いだから。」
あーかこいいかこいい。
今耳を掠めた台詞はさておき、目の前で女子に集られている男子生徒はそれはそれは爽やかな笑顔を振りまいている。
いや、恐らく本人にそんな気はないんだろうが、他者から見たらあれは自主的に笑顔を振りまいているように見えるのだ。
かこいいですねはいはい。
かこいいのは認めますよ。
スラリとした体型に、綺麗な白い肌。手間暇をかけずにセットされたようなラフで清楚な黒色の髪。小さな鼻、切れ長の目、薄い唇。
まさにジャンボ宝くじに当選するくらいの確立で形成されたような容姿だ。勿論良い意味で。
「近寄んなって言ったよね。聞こえなかったの?君らの耳は腐ってるの?なんなの?死ぬの?」
……そう、彼はかっこいい。
かっこいいのだが一つ欠点を述べるとすると、
「今から僕の半径2m以内に入った女子は皆死んで。」
彼が重度の女嫌いであることだ。
桐山 唯斗(16)
現在バスケ部と軽音部の掛け持ちをし、その他にも様々な運動部、文化部等の助っ人として活躍している。
もうこの時点で女子のハートを射抜いているだろうことは間違いないのだが、まだこれだけではない。
成績面では全教科常に学年順位の上位50位以内に居座っている。ちなみに前回の定期考査では英語で1位を獲得したらしい。
はいはいもうびっくらこですね。
どこの少女漫画の王子様ですかって感じですよね。
完璧です。本当に。
あ、まぁ彼の性格も加算して考えると完璧とは呼べないのだけれど。
まぁとりあえず、学歴と容姿をとれば素晴らしく高得点だ。
そんな彼は今日も、煌びやかなオーラで女子の注目を集めながら校舎の廊下を闊歩している。(本人にきっとその気はない)
「ねぇ汚い。喋んないで。」
笑顔だ。キラキラ笑顔だ。
そんな笑顔で言っても女子軍への攻撃力にはなりませんよ。
まぁ、私にはハッキリと額に激おこマークが見えますが。
そんな彼が踏み入れた教室、もとい1-4という私が所属するクラス。
まぁつまりなんといいますか、彼は私と同クラってやつなのです。
桐山君の数メートル後ろを歩いていた私は、彼が教室に入って数秒経ってから同じく教室に入る。
そして席についた桐山君の横を慎重に通る。
万が一にでも彼の肩と私の腕がぶつかったりなんかしたら……ごめんなさい、想像するのも恐ろしいです。
桐山君の横を通り、彼が私の存在に気付いて警戒心をビンビンに出し始めたところで、彼の目の前の席に座った。
そう、何を血迷ったのか先生は、あの桐山君の席の付近に女子を置いてしまったのだ。
しかもこの平均と平均を足して平均で割ったような私を。
おかげで今の今ままで、いや、今現在進行形だが、安心して授業に臨めたことが一度もない。
背後からの威圧感が恐ろしくてプリントを回す時だってなるべく後ろを見ずに素早く渡すようにしている。
こんなにも高度なプリント回しに務めているのだから、何度かプリントを床に落としてしまうのは見逃してほしい。
仕方ないんです。
後ろを見ずに0.5秒もの速さでプリントを回すのがどんなにハイレベルなことか。
まぁそれはさておき、そんなこんなで私は高校生活に支障を出しまくりながら日々を送っている訳です。
あ、そういえば自己紹介がまだでしたね。
柿沼 藍(16)
家庭科部所属。委員会無所属。
学年成績順位約100〜200位以内。
趣味:読書(漫画)。
特技:消しカスを繋げて長い塗り消しを作ること。恋愛経験:ございません。
はい、分かりますよ言いたいことは。
ようするにつまらない人間だとでも言いたいのでしょう。
長年そういう反応には慣れているので結構ですよ、気を遣わなくても。
はいはいでは私の紹介はこれくらいで。
例の王子様についてでも見ていきましょうか。