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●顔合わせ●

人物のおさらいみたいなものです

巨大リザードマンの襲撃から2時間ほど立ったエレメント学園。破壊された校舎は職員のエレメントによってほぼ修復が完了していた。あの後教室に戻るやいなや、生活指導の職員からこっぴどく怒られたリオ以下3名はⅡ-Ⅰクラスで過ごしていた。


「いや~、あの先生恐かったねぇリオちゃん?」


怒られたことを微塵も感じさせない顔でライズが席の横に来た。


「あんた反省してるの?でその顔ならある意味尊敬するわよ」


「反省してるよ本当に」


ライズが首を竦めて言ったので会話を止めると、


「……あの先生の情報収集でもするか」


「反省してないじゃないのか!!」


物騒な独り言を呟くライズの背中ににリオのドロップキックが炸裂した。ボキッ!と嫌な音がしたが気にしない。壁に叩き付けられて標本みたいになったライズ放置して再び席に着く。

寝ようと考えて机に突っ伏そうとすると、教室のドアが開いて、担任である、ベニー・プラムが入ってきた。年齢25歳の女性だが、身長が140センチしかないのだ。顔も童顔。深い翠のフワフワの髪型に同色の瞳には眼鏡をかけている。

一部に熱狂的なファンクラブがあり、何でも【ロリータ先生を愛でる会】だそうだ。考えたら吐き気がしてくる。そんな事実を知らないベニーは前の教卓の前に立ったが、壁に張り付いているライズを見てウフフと笑い


「リオさん、ライズ君がまた何かしたんですか?」


ライズの心配をせずにリオへ同情した様子で言う。


「ええまあ。そんなとこですね…」


「まったくしょうがないですね…まあ無視して始めますか。リオさん、号令をよろしく」


「はい。起立」


「ちょっと待ったぁぁぁぁぁぁぁ!!」


壁からベリッと剥がれたライズが渾身のシャウトをかまして復活した。額からは血を垂れ流している。


「いくらなんでも無視は無いでしょベニーちゃん!?俺むしろ被害者!!」


「先生にちゃん付けを止めなさいと何回言わせるんですか。あとこうなったのはライズ君が原因でしょ」


「ひどい!!」


ベニーの冷たい一言にライズが涙目になる。


「いいから席に付きなさい」


「は~い。もう…ベニーちゃんの情報売っちゃおうか……」


「ラ・イ・ズ君?」


ライズがプライバシーもへったくれも無い発言をした瞬間、ライズの首を植物の蔦が締め付けた。


「君は情報を何だと思ってるのか?」


感情のこもってないトーンで話すベニーは背後に鬼を浮かべていた。


「ちょっ…!ぐふ…………待…………!」


蔦をパンパンと叩いて降参の意を示すが、


「聞こえないわよ?ハキハキ答えましょう…ね?」


「………………!!」


泡を拭いて失神寸前のライズ。しかたないとリオが止めようとする前に、ライズを締め付けていた蔦が突然、焼き切れた。

見ると、開いた扉に煉が寄っ掛かっていた。右手の人差し指には微かに炎が灯っていた。


「それ以上やったら死にますよ、その金髪?」


「大丈夫よ。いつものことだから」


「じゃあいっか」


「でしょ。じゃあリオさん、改めて号令」


「え、はい。起立」


ライズはもう起きなかった。「礼、着席」


ありがちな号令をして全員が席に着いたことを確認してベニーは口を開いた。


「はい。もう今更だけど、転校生を紹介します。赤堂君、こちらに」


ベニーに促されて煉が教卓の前へと来た。そして自己紹介を始めた。


「今日からこのクラスで世話になります、赤堂煉です。出身は地球の日本。契約属性は炎。趣味は家事全般です。よろしく」


自己紹介を終えるとクラスから拍手が起こり、怒濤の質問タイムに突入した。

まず手を上げたのは十蔵だった。


「先ほどリザードマンとの戦闘を拝見したでござるが、何か武道の心得でもあるでござるか?」


「ああ。空手道、柔道、剣道、合気道、テコンドー、少林寺拳法、ボクシングくらいだな。ここの理事長からみっちり叩き込まれたからな」


「どうりで身のこなしがただ者でないわけでござるなぁ」


続いてはウェド。


「その武道とエレメントの修行は理事長直々なんだよね?」


「そうだよ。理不尽なほどに鍛えられたから。もう経験したくねえよ」


何を思い出したか、煉は顔を青くした。何かいたたまれない空気になったので美紀が手を上げて空気を変えた。


「家事で1番得意なのは何ですか?」


「料理だな。和食洋食中華何でもござれだ」


得意気に笑ってみせた。その爽やかな笑顔に女子数名が顔を赤らめた。

ある程度質問が終わるとベニーが手を叩いて注目を呼び掛けた。


「はい。新しい仲間も来たわけなので、仲良くやっていきましょう。で、連絡だけど、今日はこれにて解散です。気を付けて帰るように」


「「「はーい」」」


「リオさん、号令」


「はーい。起立、礼」


「「「さよならー」」」


こうしてⅡ-Ⅰクラスの1日が終了した。


「あ~…終わった」


煉は全身の筋肉を解しながらぼやいた。回す度に骨がパキパキと音を鳴らしている。


「ハーイ、赤堂君♪」


不意に後ろから声を掛けられたので振り返る。いたのはライズだった。


「俺ライズ・ブルーム。契約属性は雷だよ。趣味は情報収集。よろしく」


愛想よく手を差し出してきたので握り返す。


「煉でいいよ。ライズ」


「そう?じゃあ遠慮無く。でも煉って強いよな」


興奮ぎみに話を切り出した。


「だってあの数のリザードマンを1人で倒すのって中々だよ?」


「あんなん大したこと無いよ。ばあさんの修行に比べればわけねえ」


「修行は何とやりあったんだ?」


「マシなのは、ゴーレム5体。さっきのリザードマン30体を素手。危なかったのがアイアンゴーレム50体。死にかけたのはドラゴンとの10体とガチバトル」


話を聞いただけでライズは顔面蒼白させた。ゴーレムとリザードマンはまだわかる。強者なら素手でもいけるだろう。しかしアイアンゴーレム50体を1人で。

さらにはドラゴン10体までも。もはや一騎当千どころではない。


「まあ、そんくらいやらねえと……あいつは殺せないからな…」


「え…?」


よく聞こえなかったが、煉の言った今の一言は、氷のように冷たいものであった。


「いや、気にすんな。こっちの話だよ」


先ほどの冷たさは完全に消え去り、元の明るい表情で笑顔を浮かべていた。

ライズは首を傾げて疑問に思いながらも、深く追及するのを止めた。そうしていると、また2人、煉に近付いてきた。十蔵&ウェドのコンビだ。


「拙者は海上十蔵と申すでござる。契約属性は水。先ほどの戦いでは助太刀感謝でござる、煉殿」


「…ござる?……殿?」


十蔵の話し方に戸惑う煉にウェドが横から説明を加えた。


「十蔵の実家は、江戸から続く槍術の道場なんだって。話し方はその影響」


「へえ、そうなんだ」


説明を聞いて納得した。


「ちなみに俺はウェド・エルトゥーガ。契約属性は氷だよ」


自己紹介と共に満面の笑顔を放ってきた。何か顔の周りに色とりどりの花とか光のエフェクトが見える。

それを見た女子数名が目をハートにして気絶した。

煉はこの技にイケメンスマイルと勝手に名付けた。


「お~い、美紀ちゃんも来なよ」


するとライズが美紀を呼んできた。呼ばれた美紀は、読んでいた本にしおりを挟んでこちらに来た。


「こんちには、岩坂美紀です。契約属性は土です。これからよろしくね」


「おう、よろしく」

和かに微笑む姿は男子心をくすぐるものがある。

本人は気にしていないようにみえたので話題を切り替えた。


「さっき本読んでたけど、読書好きなのか?」


「うん。本は好きだよ。赤堂君も?」


「昔ばあさんから、エレメントに関する書籍を50冊渡されて不眠不休で読まされたかな」


サラリとまた過去のトラウマを吐き出した。


「私も読んでみたいな、それ」


「ばあさんに言えば貸してしてもらえるさ。今度持ってこようか?」


「是非お願い!!」


目を輝かせて即答する美紀をみて煉は微笑んだ。


「それと聞きたいんだけど、お前らはいつもこの面子で動いてるのか?」


「あとリオちゃんを入れていつものメンバーだよ」


「リオもか」


視線をずらしてリオの方を見ると、机に突っ伏して爆睡していた。


「濃いメンバーだな」


「よく言われる」


煉は苦笑して席を立つ。


「そろそろ帰るわ。寮に届いてる荷物をほどかなきゃならねえし」


「そっか、また明日」


「道中気を付けるでござるよ。煉殿」


「まったね~」


「本、よろしくね」


それぞれと挨拶を交わして教室を後にした。

校舎から出て、街並みを歩きながら思う。


「いい奴等だな」


心からの言葉が自然と口から漏れた。そのすぐ後、煉は声色を厳しくした。


「あいつも、見つけないとな」


ポケットから取り出した、銀色の珠でできたブレスレット。それを強く握り締め、呟いた。


「待ってろよ、兄貴。絶対に、助けるからな」


誓うように言った煉は、寮へと歩き出した。

少しシリアスに終わらせました。次回は煉の過去に少し触れます

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