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第5話 誕生リゾフォルノンジャー

 

 完全に夏になった。

 もう暖いなんて言葉では誤魔化せない、確固たる暑さが世界を包み込む。

 この街の片隅にある汚いアパートの一室にも夏の魔の手は伸びて。

 室内はむせ返るような暑さで満たされていた。

 

 そんな暑い部屋の中で。

 俺は唯ぼんやりと横になっていた。

 朝から畳の上に横になりながら、天井の小さいシミの数を数えている。


 生憎とエアコンも扇風機もありはしない。

 窓をすべて開け放ち、せめて風を室内に呼びこもうとするが、入ってくる空気は排ガス臭い熱風だけ。

 喫茶店か、図書館にでも行けばエアコンの恩恵に預かれるだろうが、なんとなく外に出るのが嫌だった。

 昨日捻挫した足がズキズキ痛むと言うのも理由だが、それ以前に何もする気が起きなかった。

 ただ、動きたくなかった。


 ピンポーン。

 チャイムが鳴った。


 おそらくは天地くんか、その関係者だ。

 いつものごとく俺をフォルノンジャーに引き入れるべくやって来たのだろう。

 

 普段の俺であれば、大声で帰れと騒ぐのだろうが。今日はそんな気分にもなれなかった。

 とてもじゃないが相手をする気分じゃない。

 此処は1つ、居留守を使うことにしよう。

 

 ピンポーン。

 

 再度チャイムが鳴ったが、俺は微動だにしない。

 

 ピンポーン。

 

 無視。

 

 ピンポーン。


 断固無視。

 

 ピンポーン。



 ピンポーン。ピンポーン。




 ピピーンポーピーンポーン。


 ピーンポッピポッピポッポッピッポ

 ポッピポッピポッポッピッポー

 ポッピポッピポッポッピッポー

 ポッピポッピポッポッピッポー

 ポッピポッピポッポッピッポー

 ポッピポッピポッポッピッポー


「うるせえーーーーーーーーーー!!!!!」

 つい叫んでしまった。

 

「あ、やっぱり居たんですね緑川さん」

 扉の向こう側から天地くんの声が聞こえる。


「居たんですねじゃねーよ!人の家のチャイムでビートを刻むなよ!」

 俺は扉に向かってめいいっぱい叫ぶが、扉の向こうから帰ってきたのは至極冷静な声だった。

「そんなことより緑川さん、開けてくれませんか?」

「帰れ!!」

「そんな事言わないで下さいよ」

「天地くん?常識で考えろ!この状況で、俺が君を部屋に上げると思うか!?」

「思います!」

 思うなよ!もうちょっと人間は察しの良い生物のはずだろ!なぜ理解できない!?

 ゆとり教育の弊害か!?


「あのな?天地くん?毎日毎日毎日、手紙や言伝、電報、伝書鳩、矢文、色々な方法で勧誘をしてくるがな。何をされたって結果は変わらんぞ!無駄だ。帰れ」

「緑川さん、フォルノンジャーになって下さい」

「会話のキャッチボールしようぜ!!なんで俺の投げた言葉は全部スルーしよるんだよ!?」


 いつもこれだ。

 何故だ?何故この男は俺の言葉を一切聞かないんだ?

 何度駄目だ、何度無駄だと言っても、まるで俺の言葉など最初から聞いていないかのようにただ俺をフォルノンジャーに勧誘する。

 何故こいつは諦めない?

 

 いや、さらに不思議なのはなぜ俺なんだ?

 嘗てフォルノンジャーだった人間は俺以外にも居る。なのに、彼が勧誘するのは俺ばかり。

 あるいは、ほかのメンバーにも勧誘は行なっているのかもしれないが、それにしても彼が俺の部屋に来る比率が多すぎる。

 俺の勧誘に費やした時間を考えると、他のメンバーに対する勧誘はどう考えても短時間になるはずだ。

 彼は嘗ての俺に憧れていたと言っていたが、彼は憧れを理由に俺ばかりを勧誘する程に彼は公私混同するような性格ではなかったように思う。

 俺なんかよりレッドやブルーを誘ったほうがよっぽど有益だろうに。

 

「ああ、そうだ!新しいフォルノンジャーの名前を考えたんですよ!

 普通にフォルノンジャーだと、昔のフォルノンジャーとごちゃごちゃですから。

 でも、やっぱり僕は、ゲルニッカーズと戦う戦士を、フォルノンジャー以外の名前で呼びたくなくて。『蒔き直す』という意味の『RESOW』をつけて、リゾフォルノンジャーという名前にしようと思っています、どうですか?」


 し る か !!

 なんでお前はこうもマイペースに言いたいことだけを言うんだよ!

 

 ならばこっちにも考えが有る。

 俺はもう俺の言いたいことしか言わんぞ!

「もう来ないでくれ!」

 これだ。

 この言葉以外喋らないようにしよう。

 会話のキャッチボールなんて知ったことか。

 天地くんが聞き入れるとは思えないが、それでも俺は…


「はい」


 …

 

 …

 

 

 …

 

 え?

 天地くんの発したその言葉に、一瞬俺の脳内が真っ白になった。

 俺の聞き間違いでなければ、今彼は確かに『はい』と言ったように聞こえた。

 そして、それを肯定するように、彼はこう言葉を続ける。

「たぶん、勧誘は今日が最後です。おそらく、もう緑川さんの勧誘に来ることは無いでしょう」

「…まじで?」


 信じられない。

 どうやら天地くんはとうとう「人のいうことを聞く」というスキルを習得したらしい。


 しかし、解せない。

 

 アレほどしつこく勧誘してきた天地くんが、こうもアッサリと諦めるとは思えない。

 何か裏があるのではないだろうか?

 

 そう俺が不安に思っていると、天地くんがこう言った。

「復活したゲルニッカーズがとうとう活動をはじめました」

「…」

 そうか。

 とうとうあいつらも本格的に動き始めたか。

 別に不思議な事じゃない。

 寧ろ遅いくらいだ。

「一昨日から大谷石鉱山で何やら作業を行なっているそうです。明日。新しいフォルノンジャー達と大谷石鉱山に行くつもりです。本格的に彼らの戦いが始まります」

 大谷石鉱山。

 聞き覚えのある場所だ。

 過去何度か、俺達はそこでゲルニッカーズと戦った。


 そしてその彼の言葉で、俺は納得がいった。

 なるほど、そりゃあ確かにもうここに来ることは出来ないだろう。

 

 ただ敵と戦うだけがヴァルマ戦隊の仕事じゃあない。

 諜報、秘密保持、兵器開発から怪人の研究まで。その仕事は幅広い。

 そんな組織の長官ともなればそれこそ殺人的忙しさになるはずだ。

 それでも今はまだ、ゲルニッカーズとの戦いが始まっていないために、こうして彼にもここを訪れるだけの時間があるが。

 今後ゲルニッカーズとの戦いが本格的になれば俺に構っている余裕なんてなくなる。

 今日で勧誘が最後というのもうなずける。

 

「だから、緑川さん。リゾフォルノンジャーは、今、正に貴方を必要としています」

「天地くん、悪いが、俺はやらないよ。新しいフォルノンジャーに俺は要らない。だいたいあいつらが居んだろ?新メンバー。あいつら優秀だよ?一発でのされたから言うわけじゃないけどな、新レッド?かなり筋が良い。力だけで見れば前レッドよりもすでに強いと思うぞ」

 俺のその言葉に嘘はない。

 新レッドの坊主。奴は俺を一発でノックアウトした。あの時、俺は別にワザと負けたわけじゃない。一応俺なりに真面目に戦うつもりだったし、俺自身の実力にしてもまだそこらの一般人よりかは幾らか強いという自負がある。衰えたとはいえ、旧フォルノンジャーを一発で倒すあの男は、冗談抜きで才能がある。

 確かにまだ未熟なところもあるだろうが。しかし、あの才能があれば、たとえ3人でもあのゲルニッカーズと対等に戦えるのではないかと、密かな期待をかけていたりするのだ。

 

「確かに彼らは優秀です。僕の贔屓目を抜きにしても、彼ら個々の能力は嘗てのフォルノンジャーに比べて決して低くはないと思います。しかし、しかしそれでも。それでも足りないんです」

「何がだ?経験か?経験ならすぐに身につく。そんなに不安がるこたあ無いさ」

「違います」

「じゃあ何だ?あいつらになくて俺に有る物と言ったら加齢臭と口臭くらいなもんだぞ?」

「彼らでは決定的に足りないんです」

「だからなにがだよ」

「ヒーローそのものです」

「はあ?」

 意味不明だ。

 というか、天地くんの言葉は意味不明過ぎる。俺が若者言葉についていけないだけなんだろうか?

 

「彼らはフォルノンジャーとして、決定的に足りてないんです。何というかヒーロとしての心が」

「心で言ったら俺が一番に無いさ、なにせ今の俺は心身ともにオッサンだ」

「いえ、そんなことはありません」

 さも当然のようにそう言い放つ天地くん。

 なぜ彼は俺をそんなにも信じられるのだろう。

 本人でさえ。もう自分自身を信用していないのに。


「緑川さん、これが最後の誘いです。フォルノンジャーに…いや、リゾフォルノンジャーになってくれませんか?」


 これが最後の誘い。

 

 これだ。この誘いさえ断ってしまえば。

 もう、もう俺はフォルノンジャーにならずに済む。

 二度とならずにすむ。

 

 天地くんと再開して以来ずっと願っていた事が現実になる。

  

「答えは言わなくても解ってるだろ」 

 俺はそう言った。 

 さすがに察しの悪い天地くんでも。この言葉の意味くらいは理解できるだろう。


 決別の言葉。

 これでもう全てが終わる。

 

「ソウデスカ…」

 小さく、天地くんのそんな返事が聞こえた。

 悲しそうというよりは、ただただ、何かに納得するような声だった。

 

「とりあえず連絡先と今後の予定をポストに入れておきます、いつでも連絡をください」

 そう言って彼が帰る足音が聞こえた。

 足音がしばらく聞こえ。そしてソレもなくなると、ただ沈黙だけがそこにあった。



 これで終わった。

 完全に。終わったんだ。



「祝杯あげるか」


 そう言って俺は冷蔵庫からビールを出した。

 本来ならシャンペンでも開けるところなのだろうが、あいにくと俺の部屋には酒はビールしか無い。

 まあいい。別に酒でさえあれば問題はないだろう。

 リング状の部分に力を込めると、プルタブを開ける気持ちのいい音が響く。

 炭酸が弾け、アルコールの匂いが俺の鼻孔をくすぐった。

 

「こうして俺の平穏は守られ、俺のささやかで幸せな人生は守られた」

 誰に言うわけでもなく、俺はそう言った。

 

 これでいい。

 

 フォルノンジャー…いや、今はリゾフォルノンジャーか。

 兎にも角にも俺はヒーローとの縁を完全に断ち切った。

 これで、俺は本当に俺個人の人生を謳歌できる。

 

 良いことじゃないか。

 リゾフォルノンジャーという新しいヒーローが誕生し。

 役立たずはそこに所属せずに済んだ。

 皆が得している。

 

 冷えたビールを口に含んだ。

 炭酸が喉を通る感触。アルコールが胃に染み渡る感触。

 いつもならば心地よく感じるそれが、なぜか今に限って不愉快に感じた。

 それでも、ビールを飲む行為は辞めない。

 祝杯だ。

 美味い不味いは関係ない。

 飲むことに意味がある。

 俺がこうしてフォルノンジャーと完全に縁を切った記念に、酒を飲む。 

 味を楽しむのは二の次なのだ。


 いや。

 

 

 違う。

 

 自分を騙すのはよそう。

 

 酒が不味いのは当然なんだ。

 俺の心は少しも晴れやかなんじゃない。少しも嬉しくはない。

 少しも祝う気分じゃない。

 それでも酒を飲むのは。


 単に酒に逃げているんだ。



◆◆◆




 フォルノンジャーだった頃。

 俺の仕事は立ち向かうことだった。

 目の前の悪に、敵に、怪人に。

 たとえ勝てないような強い敵であっても、決して逃げること無く立ち向かった。

 決して負けない心を持ち。何に対しても正面からぶつかることこそが、一番に大切なことだと。

 そう信じていた。

 

 しかし、社会に出て。

 それは、しょせんヒーローの世界でのみ通用する事なのだと知った。

 

 社会に出てすぐの頃。

 俺はまだヒーロー気分が取れずに、心のなかでなんか正義の炎的なやつが燃え盛っていた。

 だから、目の前の色々なものに立ち向かった。

 

 ゴミを分別しないご近所さん。

 必要以上に騒がしい子供。

 理不尽な客。

 ちょっとした不正を当たり前にする同僚。

 間違ったことをする上司。

 全てに正面から立ち向かった。

 

 しかし、その結果。

 近所から口うるさいやつと評価され。

 子供から怖い人と認識され。

 同僚から煙たがられ。

 上司には嫌われた。

 結局、仕事と住処を変えるはめになった。

 

 そういう事を数回繰り返す内に俺は、やっと理解した。

 

 社会において、一番に大切なことは、立ち向かうことではなく、逃げることだと。

 

 のらりくらりと逃げまわる事が最善。

 たとえ嫌なことがあっても嫌だとは言わないではぐらかす。

 嫌いなものも嫌いと言わず、言葉を濁す。

 嫌な状況になりそうだったら、さり気なくその場から消える。

 物事に真正面からぶつからず、適当に躱し逃げる。

 逃げれば、物事はとてもスムーズに回った。

 

 結局その後の人生は逃げ続けの毎日だった。

 

 逃げるたびに、ずるく、臆病で、そして惨めになっていく。

 ただ、俺の中の不快感だけが増えていった。


 そして、その不快感からさえもさらに逃げようとする。

 本で現実から逃げる。

 夢で現実から逃げる。

 仕事に夢中になることで現実から逃げる。

 

 そして、

 そして、最後に逃げる場所は。

 酒だ。



 この世界。

 この社会。

 俺だけじゃない。沢山の人達が日々逃げ続けている。

 そして、俺と同じように酒に逃げる人間も居る。

 だからこそ。この世界には酒が溢れているんだ。

 酒の数だけ、この世界には逃げるべきことがる。

 


 逃げだ。

 嫌な仕事から、

 嫌な状態から、

 嫌な人間から、

 嫌な未来から、

 嫌な現実から、

 フォルノンジャーから。

 天地くんから。

 そして、俺の心から。

 

 

 

 この目の前の酒だけが。俺の不快感を一時的に消してくれる唯一の存在。

 いまこうして飲む酒は祝杯なんかじゃない。

 逃げるための道具でしか無い。

 

 どんなに不快でも。

 どんなに不味くても。

 

 飲まずには居られない。

 

 酔とは別に、俺の心に湧き出る、この得も言われぬ不快感から逃げるには。

 アルコールによる酩酊でそれをかき消すしか無いんだ。

 

 

 そのまま、酒と供に。

 俺は一人。夜の帳に絡まっていくのだった。

 

 

 


 ◆◆◆


 場所と時間は少しばかり変わる。





 朝早く。

 まだ朝靄が消え切らない頃。

 北関東のとある場所。

 今では使われなくなった大谷石鉱山。

 

 悪の組織ゲルニッカーズたちは、そこで鉱石を掘っていた。

 18年前も、ゲルニッカーズはしばしば捨ててられた鉱山で石を掘っていた。

 大谷石はさして高価な鉱石と言うわけではなく、また大きなエネルギーを宿しているわけでもない。

 果たして、この鉱山で採れる石をどのように奴らが使うのかは不明だ。

 ただこうして大規模に掘る所を見ると、奴らにとって、この鉱石は価値のあるものなんだろう。

 

 作業を行うのはゲルニッカーズでも一番下っ端の構成員。

 強さはゲルニッカーズで一番弱いが、それでも一般人よりは随分と強いし、何より数が多い。

 全盛期のフォルノンジャーたちでも囲まれるとそれなりには苦戦をした。

 大抵はその下っ端をまとめあげる幹部怪人が近くにいるのだが、今回はソレらしい姿は見えなかった。

 たまたま今この場に居ないだけなのか。それとも単純作業なので最初から居ないのかは不明だ。


 鉱山では、殆ど言葉を喋らない下っ端がただ黙々と作業を繰り返す。それこそ、そこらの人間よりもとても真面目に働く。

 この調子で作業を続ければ、あっという間に大谷石が集まることだろう。



 そして、ゲルニッカーズが鉱石を採掘している場所から少し離れた岩の影。

 そこには。新フォルノンジャー。

 いや、リゾフォルノンジャーの面々が揃っていた。

 

「おうおう、これは大量にいるなあ」

 岩陰に隠れつつ鉱山の様子を伺いながら。レッドがそういった。

 

「ええ。ですが幸いなことに今回は強力な怪人の姿は見えません。一番下っ端であるところのクローン戦士ばかりです」

 同じく岩陰に隠れていた天地くんが注意深く辺りを見ながら言った。

 

「まあ、初戦ですから、楽な方が良いとは思いますが」

「うん、初めてだし」

 ブルーとイエローがそう言って頷いた。

「物足りないね。俺はガツンと強い奴と戦いたかったな」

 如何にも血気盛んな言葉を出し、指をボキボキと鳴らしながらレッドが言う。

 今すぐにでも戦いたくてたまらないと言った様子を体全体で語っていた。


「じゃあ、早速行きますか」

「ええ」

「頑張るぞー」

 そう言って3人は岩陰から出ようとするが、天地くんがそれを静止した。


「待ってください」

「なんだよマスター」


「まだ緑川さんが来ていません」

 天地くんのその言葉に、3人は少し呆れたような表情を浮かべる。

 

 ハッキリ言って彼らは、このあとあの男が来るとは全く思っていなかったし。来てもらっても困ると思っていた。あの中年の情けない姿を見てしまえば、たとえ彼が嘗てのフォルノンジャーだったとしても、とても役に立つ存在とは思えなかったのだ。


 ただ、それを言えば天地の逆鱗に触れるということは解っていたので、できるだけ柔らかい表現で天地くんに反論した。

「いや、でもさあ。あのオッサン多分来ないと思うぜ。あいつ、ヒーローを本気で嫌がってたし」

「そうですね、あまり時間をかければタイミングを逃します」

「ねー早く行こうよ」


 天地くんは少し思案したようだったが、皆の言うとおりタイミングを逃しては大変だ。 

 だから彼は渋々と言った様子で小さく頷くと、こう言った。

「そうですね。仕方がない。不安は残りますが、あなた達だけで行ってもらいましょう。しかし、これだけは覚えていてください。貴方達は今日、この瞬間からリゾフォルノンジャーとなるのです。そのことをしっかりと胸に刻みながら戦ってください」


「安心しなよ、俺らだけで十分さ」

「では行ってきます」

「すぐ帰ってくるからね」


 そう言って3人はゲルニッカーズの元に向かった。



 3人が居なくなった岩陰。

 天地くんはただ、ボンヤリと奴らが向かった方を見ていた。

 

 

 そして、視線を変えず。

 

 一言こういった。

  

「出てきたらどうですか?」


 その言葉。

 

 その一言に。

 





 

 すぐ近くに隠れていた。

 『俺』は、心臓が口から飛び出さんばかりに驚いた。

 

 




 ◆◆◆

 

 次回予告


 こうして復活した新生フォルノンジャー、ことリゾフォルノンジャー。

 彼らの戦いを前に緑川は何を思うのか。

 ヒーローの条件。

 そして、ヒーローであるためにすべき事とは!?


 次回!ヴァルマ戦隊 リゾフォルノンジャー!

  『戦いの果てに得たもの』

           お楽しみに!

           

           

 

 

◆◆◆◆用語解説。



・ピーンポッピポッピポッポッピッポー

 ポピーーーー。

 チャイムを使って音楽を奏でるという高等テク。ピンポンダッシュ上級者の中でもごく一部のものだけが出来るという、伝説の技。

 

・矢文

 ビールを飲んでいたらカンを矢が貫通した。

 飛び散るビールで部屋中がビショビショだった。

 緑川の下半身もビショビショだった。

 

・RESOW

 巻き直しを意味する。


・リゾフォルノンジャー。

 0から作るでも、フォルノンジャーを受け継ぐでも無く。フォルノンジャーを再度やり直すという意味合いがある。

 ちなみに。

 ヴァルマ=エスペラント語で熱い。

 フォルノンジャー=過熱器及び加熱調理器を意味するフォルノをヒーローっぽくしたもの。

 「あつあつ戦隊!焼くんじゃー!」と訳すこともできるが、そんな訳し方はしてはいけない。

 ちなみに、RESOWだが、音だけ聞くとRIZO=エスペラント語でご飯、と聞こえないこともない。

 そうなると、ヴァルマ戦隊リゾフォルノンジャーは、

 「ほかほか戦隊!炊飯ジャー!」になるが、そんな訳し方もしてはいけない。

 

・大谷石鉱山

 北関東に存在する、とある石の鉱山。

 何故か悪の組織がこの鉱山によく訪れ、しばしばこの付近で戦闘が繰り広げられる。

 他にも寄居の滑石鉱山や岩舟の岩舟石鉱山などでも戦闘が繰り広げられることから、

 どうやら悪の組織はこれらの石に何らかの大きな利用価値を見出しているようだ。

 

・加齢臭

 中高年特有の体臭の俗称。20代後半から出始めると言われている。

 決してカレーの匂いではない。

 

・クローン戦士

 ゲルニッカーズの謎化学によって生み出された構成員。

 クローンとは言っているが、実際のクローン技術とは違う方法で生み出されているようだ。

 どちらかと言うとホムンクルスやゴーレムに近い。

 知能は低く、満足にしゃべることが出来ない。

 力は一般の成人男性より強い程度。一体一体は弱いが、集団になればヒーローでも苦戦することがある。

 倒されると気化し跡形も無く消える。

 

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