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第18話 ヒーローの目覚め

 時間は有るのにあまり書き進める気が起きないので、気分を盛り上げるつもりで髪型をモヒカンに変えてみました。

 ヒャッハーって感じで書き進められるかと期待したのですが、文章を書くペースって髪型程度じゃ変わらないものですね。


 ガスがまるで霧の如く立ち込める中央警察前広場。

 先程までの喧騒が、まるで嘘のようにそこは静かで。


 その場に立つ影は4つだけ。

 すなわち怪人と3人のヒーロー。


…3人の・・・・。



 あれ?3人?


 俺は周りをキョロキョロと見渡すが、見える色俺の黒と黄色と青のみ。

 本来あるはずの赤色が見当たらない。


「あれ?イエロー!レッドは!?」

「あそこで倒れてる!」

 そう言ってイエローが指差す先には警察に混じって倒れる赤坊の姿が。


 どうやらガスにヤラれたらしい。

 まったくもって役に立たないリーダーである。


「チッ。仕方ない、とにかく今三人でできる限りの…」

 俺がそう言いかけたそのとき。


「許さんぞ!ポリアオサオ!」

 ブルーの大声が響き渡った。


「何の罪もない一般市民を、あの美しく、麗しく、可愛くて、完璧な一般市民を!ステキな一般市民を巻き込むなどい言語道断!例え神が許そうともこのブルーが許しはしないぞおおおお!!!!」

 怒り心頭この上なしと言った様子のブルー。

 一般市民とは言っているが、奴が指している人物はどう考えても白鳥様だというのは明白だ。 

 まあアレほど大好きだった白鳥様が爆発で吹き飛ばされたんだから怒るのも当然といえば当然か。


「はははは、許さない?当然だ、私達は許されようとは思っていない。なにせ私達は。悪の組織なのだよ!!!!」

 怪人がそう言って笑う。


 その言葉にブルーの怒りはとうとう限界に達したようだ。

「おのれえええええ!!!」

「え?ちょ。待て!」

 俺の静止も聞かず、ブルーは一直線に怪人へと走っていった。


 無謀。


 目の前の怪人の強さは未知数。


 しかもブルーは今までの怪人に簡単にあしらわれてきているのだ。

 それなのに猪突猛進に突っ込んでいって、勝てるはずが無い。


 きっと避けられるか、無様にカウンターを食らう。

 そう思ったのだが。


 ドン!!!!


 ブルーの一撃が怪人を吹き飛ばした。


「!!!」

 驚くイエローと俺。


 怪人は数メートル程弾きとばされ、地面に陥没するようにして止まる。

 まさかの有効打。


 ひょっとしてコレは怪人の演技で、最強皇帝ゲルニックの時のように相手はワザと吹き飛んだのではとも思ったが、

「む、思っていたよりやるな!流石はヒーローと言うわけか…」

 そう言って立ち上がる怪人の顔は本当に苦しそうで、どうにも演技には見えなかった。



 どうやらブルーの攻撃は確実に相手にダメージを与えている。


 間違い無い、

 コレは。コレは。

 

 

 

 

「嘘だろ、あいつ、このタイミングで目覚めやがった」


 目覚める。



 コレはフォルノンジャーの専門用語のようなものだ。

 フォルノエネルギーにある日突然目覚める。

 何か心情的な切っ掛けで、突然フォルノエネルギーを使いこなせるようになることがあるのだ。


 まさに、目の前のブルーは今目覚めた。

 アイドル大好きパワーによって。


 最低の切っ掛けだ。

 だが。だが。


 あいつは今、本物のヒーローの力に目覚めた。


「はああああ!!!」

 フォルノエネルギーのこもった拳を振り上げながらブルーは再度怪人に飛びかかった。


「ぬうううう!!」

 それに対し、怪人も今度は右手を振り上げて応戦する。


 拮抗する両者の力。

 まるで俺と皇帝ゲルニックが戦った時のように、衝撃波が発生し、紫電が光る。


 今やブルーの力と怪人の力は同等。

 いや、むしろブルーの方が押している。


 凄い

 凄いけれど。


「周りの状況を考えろお!」

 辺には倒れた警官がまだ結構居るのだ。

 このまま戦いに巻き込まれたら無事では済まないというのに。


「喰らえ!」

「ぬうう!」

 しかし、俺のそんな叫びも全く聞こえない様子でブルーと怪人は戦い続ける。

 

「くそ!イエロー!とりあえずそこらに散乱しているポリ公をどかすぞ!」

「ら・・・ラジャ!」

 俺とイエローは両脇に人を抱えた。


「何処か近くに安全な場所は無いか?」

「あそこは!?」

 そう言ってイエローが指差す先。

 そこは。


「演台?」

 それはひしゃげた演台だった。

 どうやら爆発で吹き飛ばされていたらしいそれは、会場の端にちょうどバリケードになるように倒れてた。

 良く吹き飛ぶときに人間を巻き込まなかったものだ。


「あの影に持って行こう」

 少々心許ないが状況は一刻を争う。

 遠くに皆を運ぶ余裕が無い以上、あそこに持っていくしか無いだろう。


 戦いを繰り広げるブルーと怪人を尻目に、俺達は演台へと急いだ。


「そい」

「えい」

 俺達はドサドサと警官を演台の影に置く。


「良し次!」

「よしきた!」

 そして次の警官を移動させるべく、すぐにその場を後にしようとした時。

 ふと、有ることに気が付いた。


 死体が。無い。

 演台の近くに白鳥様の死体が無いのだ。

 いや、死体だけじゃない。

 彼女の靴とか、体の一部とか、血の跡とか。

 彼女の存在を示す物が何も無い。

 

 アレだけの爆発、彼女が無事だとは思えない。

 あの爆発で跡形もなく吹き飛んだ?別の所に落ちた?

 確かにその可能性はある。

 可能性はあるけれど…。




 ゾクリっと、俺の背筋を冷たいものが走った。



 一部のゲルニッカーズの怪人には有る能力がある。

 それは人間に化けるというものだ。

 いや、むしろ本当の姿は人間で、俺達がフォルノンジャーに変身するが如く、奴らも怪人に変身しているだけなのかもしれないのだが。 

 とにかく、奴らは人間とソックリになれる。




 白鳥様。

 俺は彼女の事を良く知らない。

 知っているのはただ、アイドルグループの一番人気と言う事くらい。

 しかし、ただのアイドルが、あの雰囲気を出せるだろうか。


 人並み外れた彼女のオーラ。

 そして、彼女に注目が集まりきったところで起きたあの爆発。

 消えた白鳥。

 そして、入れ替わりに現れた怪人。

 このタイミング。

 そのタイミングに違和感を感じた。


 ひょっとして。ひょっとして、ひょっとしたら。

 あの怪人の正体。

 




 それは白鳥なんじゃないのか?




「だとしたらまずい」

 思わずそんな声が出てしまう。


 著名人の正体が怪人。

 コレは実にまずい事だ。

 なにせ、その事実自体が世間に混乱を呼ぶ。

 

 有名な人間ですら怪人であったともなれば、それはゲルニッカーズが実に身近に居ると周りに印象付ける。

 なにせテレビで彼女を見た全ての人間が、彼女の正体に気づくことが出来なかったんだ、それほど巧妙に擬態できるという証明。

 もしかしたら、自分の周りにも、知人にも、いや、家族にも、ゲルニッカーズの怪人が紛れているかも知れない。そう人々に思わせる。

 人は疑心暗鬼になり、人々は他人を信じられなくなる。

 実に恐ろしい破壊活動。物ではなく、人々の信頼を壊すのだから。


「あの怪人は倒してはいけない」

 怪人。

 

 下っ端の兵士とは違い怪人の死体は消えない。

 基本的に怪人は死ねば爆発するが、それは全ての怪人に共通することではない。


 一部の怪人。幾らかの怪人は、死して屍を残す事がある。そして、その屍は、醜い怪人の姿ではなく、人間の姿に戻るのだ。


 嘗て、俺はそんな怪人を見たことが有る。

 だとすれば、たとすれば、あの怪人を倒してはいけないのだ。


 あの怪人を倒すということは、つまりあの怪人の正体を世間にバラすと言うこと。


  いや。

  

  

   違う。

   

   

 俺が恐れているのは、あの怪人の正体が世間にバレるとか、そういうことじゃない。

 そもそもこの場には人目は無いのだ。あの怪人を倒したって、世間にはバレようが無い。あの怪人を倒したら、そのまま死体を運んで逃げれば良い。

  

 世間にはバレない。

 

 世間にはばれないのだが。

 

 

 ブルーにはバレてしまう。

 解ってしまう。

 自分が倒した怪人の正体が白鳥様だと。気がついてしまう。

 

 

 いや、ブルーだって頭では理解するだろう、

 怪人の正体が白鳥様だったとしても俺達がするべき事は別に変わらない。

 怪人の正体が何であろうとそれを打ち倒すのがフォルノンジャーだ、例え相手が誰であろうとゲルニッカーズは倒す。


 しかし心の中はどうする、あの怪人が白鳥様だったとしてブルーは心からそれを受け入れられるか?

 ブルーがこのまま怪人を打ち倒し、その後にその正体が白鳥様だと知って?自分が一番に愛する存在を、自分の手で殺したと知って?それでも平然としていられるか?

 

 否。


 ブルーの心はきっと壊れてしまう。 


「いけない!」

 ブルーが戦いつづけるのはダメだ。

 

 あの怪人は、俺が、俺が倒さないといけない敵だ。

 たとえブルーに恨まれようと、ブルーが直接手を下してはいけない相手だ!

 

 

 そう思った時。

 時既に遅く。

 バチバチバチバチと紫電が辺に弾けた。


「あ、これやばい」

 マジでヤバい。


 ブルーの周りに広がるフォルノエネルギー。

 目で判るレベルに強大な力が奴の腕に集まっている。

 それは、とてつもないエネルギー量。


 あれなら怪人を倒せるだろう。

 そして間違いなく周りも巻き込む。


「ブルーやめろ!!!!」

 俺が叫ぶが、ブルーは止まらない。


「絶対に許さない!!!」

 そう言いながらブルーが怪人に向かって走る。

 怪人は防御態勢をとっているが、パワーに目覚めた今のブルーのあの強力な攻撃を食らって無事でいられるとは思えない。

 

 このままではいけない。

 止めなくては。

 

 俺はそう思い、ブルーの行動を止めようと、その間に割り込もうとするがダメだ。間に合わない。


 ブルーの攻撃が、

 怪人に迫り。




 パチン!!!

 そんな音がした。



 俺が予想していたよりもずっと小さい音。

 そしていつの間にか掻き消えるフォルノエネルギー。


 そして、そして。

 

 無事に立っている怪人。



「「「「え?」」」」

 俺も、イエローも、ブルーも、そして怪人さえもがそんな声を出した



 それは手だった。

 ブルーのパンチに添えられた手が、彼の必殺技を止めたのだ。


 しかしそれを止めたのは俺じゃない。

 イエローでもない。レッドでもない。


 そして、怪人でもない。



 それを止めたのは。



「無様な…」

 静かにそう呟く。

 俺達と色違いの同じスーツを着た奴だった。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇次回予告


 突如として現れブルーの攻撃を止めた謎の存在。

 その存在に場はさらなる混乱へと発展する。

 果してブラックは怪人の正体を隠し通せるのか。


次回 ヴァルマ戦隊リゾフォルノンジャー

   「白い衝撃」

         おたのしみに。


◆◆◆◆用語解説


・ガスにヤラれたらしい

 最初の爆発でテントが倒壊し、テントから抜けだそうともがいている内にガスにヤラれてしまったレッド。

 突然の不意打ちであるので仕方ないことかもしれないが、戦隊物の赤としてはとても情けない。


・目覚める

 突然フォルノエネルギーを上手く扱えるようになること。ヒーロー物や戦闘物にありがちな、何かの切っ掛けで力に目覚める的な展開。

 リゾフォルノンジャーのメンバーでは緑川を除き、ブルーが一番最初に目覚めた、が、その切っ掛けは好きなアイドルが爆発に巻き込まれたからという、ヒーロー的にはかなり微妙な理由。


・怪人

 基本的に怪人は普段人間ソックリに擬態している。というか、擬態ではなく、彼らは本当は人間なのかもしれない。

 身近な人間が、知人が、家族が、実は怪人である可能性もあるのだ。


・壊れる

 心理的な切っ掛けで力に目覚めると言う事はフォルノエネルギーの扱いはメンタルに依存する。つまり心が壊れる、メンタル的に不安定になるとフォルノエネルギーを扱うことは事実上不可能になる。それはヒーローとして死ぬと同義である。


・紫電

 紫色の電光、スパーク等によって見られる。

 この場合はフォルノエネルギーと空気の摩擦によって発生した電気が紫電を出している。


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