表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/62

7話 邂逅と囁きの言葉

ここまで修復。なんか内容が少し違う気もするけど……そこはご容赦願いsます。

続きは夜にでも。では学校行ってきます。

天水太守の呼び出し。

あの後張遼さんから言われたのは、ざっくばらんに言えば今回の事の詳細を主君である董卓に、俺と姜維さんが直接話して欲しいとの事。

俺はまた賊の襲撃を危惧していたが張遼さん曰く、副官と部隊の大半を集落に残す為心配は要らない、とのこと。

まぁ張遼さんの部隊だし、心配は要らないだろう。


一方集落の人達も軍が来て安心し、俺と姜維さんが集落を出る頃には"あの後"の後始末に励んでいた。

集落の状態はそれほど酷い訳ではないが、流石にあのままにして置くのは些か……というか、精神的に結構拙い。

ともかく、俺は姜維さんと張遼さん、そして部隊複数名の人達と天水の城に向かった。

およそ……ええとこの時代での一刻はおよそ十四分だっけ。だから……ええい面倒臭い。大体四十分だ、四十分。

取り敢えずはその四十分足らずで天水城に着けた。


いや着けたんだけどさ、張遼さん滅茶苦茶速いです。


もうね、部隊の人達も「将軍!なんでそんな急いでんすかーッ!?」って息切れしながら言ってたし。

そしたら張遼さん「聞く耳持たんわッ!」なんて返す始末。

俺は張遼さんを見失わない様に食い付くだけで精一杯でしたよえぇ。

馬術習ってマジで良かった。……尻が痛いけどね。

でも流石は張遼隊の人達。皆息が切れ切れだけど三馬身ほど離れて付いて行ってた。

やっぱ日頃訓練してる人は違うなぁと思ったね。


……でも姜維さんは張遼さんの後にしっかり付いて行ってました。一馬身差で。


さすがあの姜伯約、半端無いっす。

兎も角、俺たちは張遼さんに案内されるがまま天水の城下を移動し、城の番兵が張遼さんに挨拶して、あれよ言う間に城内へと案内された。


――――しかし解らない。

何故、一庶民に過ぎない俺達をわざわざ城内に案内したのか。

張遼さんは董卓さんに今回の詳細の報告をするだけ、と言っていたが、そんなの俺と姜維さんが張遼さんに口頭で説明し、それを董卓さんに言って貰えば済む話だ。


更に言えば、一庶民の俺たちをこうも容易く城内へと招くことで、城内の情報が漏れる事を考えなかったのか、また周りにあらぬ誤解や評価を受けるかもしれないのを考えなかったのか。疑問が尽きない。

ならそこから解ることは?俺達を呼んだ意図は……って


「やめやめ」


俺はそこまで考えると頭を軽く振り、思考を振り切る。

疲れた頭で色々考えると更に疲れる……いや、ホントに。


「そか。んじゃ詠は玉座やのうて庭園まで来いと」

「はい、確かにそう仰ってました」

「おおきに」


俺が思考にふけっていると、丁度文官らしき人と張遼さんが話し終えたらしく、その文官が一礼と共に俺達の横を通り過ぎて行った。


「庭園のほうに来て欲しいらしいで。ほな、行こか」


促されるまま案内され、目的地に着くとそこには二人の少女。

二人は椅子に腰掛けており、テーブルの上には茶と容器。更に少し離れた場所に女官と思しき人が数人いることから休憩中だと分かる。

二人の少女の内の一人は眼鏡を掛けた、眼つきの鋭い女の子。

もう一人は儚げで穏やかな、優しそうな少女。


成程、あれが董卓か。


宋老人の言っていた通り、確かに俺の知ってる董卓とかけ離れている様だ。

やがて俺達に気付き、二人の少女の視線が向けられる。


「お帰り霞。賊討伐、御苦労さま」

「ただいまっと。詠、言われてた二人を連れて来たで?」


そこまで言い、眼鏡の女の子は俺と姜維さんを交互に見、女官の人に何かを命令して立ちあがる。


「ボクは賈駆、字を文和。董卓軍の軍師をしてるわ」


――――賈文和。その名前、少しだが知っている。

三国志の中でも有数の謀略家で処世術に長け、かつて曹操を数度に渡って窮地に追い込んだ策士。

俺が抱いている賈文和の印象はそんなところだ。……ていうか、李儒じゃないんだ。


「私は董卓、字を仲穎。天水の太守をやっています。今回では賊への対応が遅れて、すみませんでした。それと賊討伐にご協力頂き、ありがとうございます」


そしてこの女の子が董卓。ぶっちゃけ有り得ない。

……いやさ、もう色々言いたい事があるけど我慢します。ここで叫んでしまえば絶対変な目で見られる。

頑張れ負けるな俺。耐えろ俺!


「私は姜維、字を伯約を申します。今回私達の集落に駆けつけて下さり、お礼申し上げます」

「っと、俺は神坂日向です。今回は賊への対応、ありがとうございました」

「姜維と神坂、ね。取り敢えず今茶を出すから、座って頂戴」


そう言うと控えていた女官の人が容器に茶を注ぎ、俺と姜維さんの前にあるテーブルに置き差し出す。

俺と姜維さんは顔を見合わせると、恐る恐るといった感じで椅子を引いて座る。


「そんな緊張しなくても良いわよ。別に取って食おうって訳じゃないんだから」

「はあ」

「取り敢えず、率直に聞かせて貰うわ。霞……張遼から聞いた今回の賊討伐についての作戦、あれはどっちが考えたの?」


本当率直だな。あちらとしては早く知りたい、っていうのが本音なんだろうけど。


「それは、ひなたさんが作戦を立てて実行しました」

「なら姜維、貴女じゃないのね?」

「はい」


そう言われると姜維さんに向けていた視線を俺に向け、今度は俺に問いに来た。


「貴方が今回の作戦を考えたの?」

「はい、まぁ」

「なら今回の一連、詳しく教えて貰えるかしら」

「……内容は張遼さんから聞いたのでは?」

「ボクは貴方から直接聞きたいのよ」


そう言い俺から視線を外そうとしない。あの眼は聞くまで退かない譲らない、って眼だ。

……仕方ない。話すか。


「まず今回の件ですが、始めに賊の十数人が集落を襲撃に来たんです。でもここにいる姜維さんが十人程斬り伏せ、残った賊が根城に戻って頭目に知らせた事と仮定し、更に集落の人が逃げ切る事は不可能と考え今回の作戦を実行しました」

「どうして逃げきれないと?」

「この近郊の賊は騎馬を中心として機動力に特化しており、仲間が殺された事で頭に血が昇り集落の人達を皆殺しにするまで止まらなかったでしょう。更に俺達の集落には馬が二十頭かそこらで機動力に不足も良い所。それだけでも絶望的なのに、集落には老人や子供、身動きが出来ない怪我人もいたことから、逃げ切ることは不可能と思いました」


ふむ、と賈駆さんが頷いたのを見て俺は続けて話す。


「俺は集落の人達に意向を伝え姜維さんと打ち合わせをしました。俺はまず死んだ賊の服を着込み、そして出来うる限りに服を泥と死んだ賊の血で汚し、こめかみも自分で切って血を出しました。俺はそこから先刻賊の逃げた方向へ駆け、賊の集団を発見しました。そこで俺は"必死に逃げて来た他地域の賊頭目"ということを、頭目と思しき人に口八丁で信じて貰いました」

「どうやって?」

「俺は口調を荒くし、格好はボロボロであたかも逃げて来た様に演技をしました。そして賊を見て安堵した俺の表情を見て同業者だと信じさせ、そこで俺はこう言いました。『百人の手下が女一人に皆殺しにされた』と」


賈駆さんの眼が少し細まり、俺はそのまま続けた。


「俺一人が言った所で信じて貰えないでしょうが、逃げた賊も姜維さんに殺されかけ、又目の前の男が血を流し脅えた様に言っている事から、そこから徐々に信憑性を高めました。そして兼ねてより打ち合わせをしていた刻に姜維さんが血化粧をして"集落から逃げた賊頭目を追って来た娘"として現れました。そして俺目掛けて矢を撃ち、俺は矢を避けてその真後ろにいた賊頭目に刺さり、更にそこで賊の動揺を誘いました」


そこでピクリと賈駆さんの眉が歪むが、気にせず話し続ける。


「俺はそこから必死に逃げるよう装い、頭目が死んだ事で動揺する賊に姜維さんが更に矢を撃ちこみ、何人かを討たせて貰いました。例え狙いが外れても密集隊形でしたから、外れても別の賊に当たると思ってました。そこで初めて賊達は目の前にいる姜維さんは化け物だ、と信じ始めました。更に俺はそこで逃げる様に扇動して、根城に案内して貰い俺はそこで賊の同士討ちを謀りました。が、失敗しました。後は、出来うる限りに暴れて……張遼さんが来た、という流れですね」


一気に喋り終え、俺はテーブルの上にある茶に手を伸ばし口に含む。

俺の知っている茶とは違うが、これはこれで味が良く嫌いでない。


「そう、良く解ったわ。でも一つ疑問がある」

「なんでしょう」

「どうして姜維の撃った矢を、賊頭目に当てる事が出来たの?」

「はい?」

「いえ、そこは姜維の腕を前もって見て、矢も撃つ瞬間には何かの合図や台詞を出し、神坂が避ける様動きを合わせたんでしょうけどそれでも分からないわ。どうして姜維を信じる事が出来たの?」

「と言うと?」

「貴方はつい数日前に村に着き、姜維を知ったのも賊の襲撃の日だと聞いたわ。事前に腕を知っていたとしても、狙いがそれて自分に矢が当たると思わなかったの?」

「それは有り得ないと踏んでました」

「それは、なぜ?」

「彼女は姜伯約ですから」

「――――…」


言って、後悔した。


しまった。賈駆さん相手にこの答えは悪手過ぎた。

傍から聞けば俺が姜維さんを信用してる風に聞こえるが、軍師として別の角度で聞くと……


俺は再び茶を口に運び、少し周りを見てみる。

張遼さんは感心した様に俺を見ており、

姜維さんは緊張していたのか、話終えると身体の緊張を抜いており、

董卓さんも同じく息を吐き、身体の力を抜いてる様に見える。


ただ、賈駆さんだけは俺を注意深く見ている。

俺を見極めようと獲物を狩る、獣を彷彿とさせる眼だ。


「まぁ今思えば、俺は董卓さんを信じて別に賊の砦まで行く必要無かったんじゃないのか、とか、賊の砦でああ言っていれば死に目に遭わなかったんじゃないか、とか、あの時ああすれば良かったとか色々思い返してしまうんですけど」

「集落から黒煙が上がったのは、賊を燃やしたからね?」

「正確には木材や水分を多く含んだ葉、少量の火薬に他にも黒煙が出そうなものも一緒に燃やしました。そうすることで煙が過度に発生し、こっちの異常に気付いてくれると思いました。賊の砦でも同じですね。集落に火を放った事から油はあると思ってましたし、燃やして煙で賊の住処をこちらから教えたという事です」


実際集落の人たちに実行してもらい、今はその後片付けをしているだろう。

集落で燃やした賊の死体なんて、放っておいて気分の良いものじゃないし。


「……ふーん」


視線を俺に向けたまま尚観察してくる賈駆さんだが、やがて興味を失ったのか視線を下に向け、姿勢を崩す。


「今回の件、よく分かったわ。今日はもう遅いから城内で泊まって頂戴。霞、集落には前もって言ってあるんでしょう?」

「ん。今日は帰れんかもしれん、とは言っておいたけど」

「ならいいわ。霞、姜維達を客間まで案内して貰える?」

「お安い御用や。さ、行こかお二人さん」


張遼さんが俺と姜維さんの肩に手を置き、付いてくる様に促す。

姜維さんは椅子を引いて立ち、そのまま張遼さんに近付き、


俺は座ってる賈駆さんの真横まで移動した。


「な、なによ?」

「ちょ神坂、なにしてん……」

「賈駆さんお耳を拝借」


言うや否や、俺は賈駆さんにだけ聞こえるよう手で賈駆さんの耳を覆い、囁く。


「……! ちょ、アンタそれどういうッ!?」

「じゃそゆことで」


驚いた声を上げる賈駆さんを余所に、俺は足早に張遼さんの下に行く。


「なんや、一体何話してたん?」

「それは男の秘め事ってことで秘密です」

「男の秘め事て、相手女やん」

「ちなみに後で姜維さんには教えてあげますね」

「ええっ?あ、ありがとうございます?」

「いえいえ」

「ちょお!?なんでウチには秘密なん!?」

「野暮なことを言う人に対しては慎め、というのが俺の習わしなんで」

「そんな習わし棄ててまえッ!」

「ふふっ」

「あはは」


そんな話をしながら、俺は張遼さん達と歩いて行く。




「詠ちゃん?」


日向達が去った後、董卓は隣で固まっている親友に声を掛け、肩に手を置く。


「……っ。ごめん月、ちょっと、いえかなり動揺してたわ」

「何を言われたの?」


そう尋ねると、賈駆は視線を前に向け日向がいた席を見る。

そこには既に誰も居ず、空になった茶の容器と引かれた椅子だけがある。


「ボクは最初、あの男をそれほど評価してなかった。でも緊急時に置いて作戦を立てる冷静さと頭の回転の良さ、賊相手に一人で立ち回る剛毅さと武から、それなりの人物であることが分かったわ。ボクから見れば作戦に穴があったけど、本人も解ってたし認めてたから、それもまた長所」


それだけ呟くと手元にあった自分の茶を手に取り、口に含む。

既に冷めきっていたが、己の頭を冷やすには丁度いい温度。


「でもボクは理解出来なかった。どうしてあそこまで姜維を信用出来たのか、その日に知ったばかりの人物にどうして、命を預ける事が出来たのか」

「それは、神坂さんは姜維さんを信用していたから……」

「違うのよ月。それなら神坂は姜維の腕を信じていたから、仲間だからとか言うはずなの。でもアイツはこう言ったわ。『彼女が姜伯約だから』ってね」

「……」


それだけ言うと、董卓は押し黙る。

目の前に居る親友は今、頭を最大限に働かせている。

「腕を信じていたのも、仲間だからというのもあるんでしょうけど、もっと根本的な部分……アイツは、姜伯約という"存在"を信じている様だった」

「それって、一体……?」

「それにアイツがさっきボクに言った言葉。最初は何の事か分からなかったけど、今思えばとんでもないことよ。これが本当なら益々疑問だわ」

「なんて、言ったの?」


聞かれ、賈駆は息を深く吐き董卓の正面を向く。

その様子に董卓は首を傾げ、紡がれるであろうその言葉を待ち、そして聞いた。



「『俺はこの世界の人間ではない。それが今君の胸中にある疑問の答えだよ、賈文和』ってね」



その言葉を聞いた董卓はポカンとしており、そうなる元を言った本人も深い溜め息を吐いた。


メモ帳で書いたやつって何で勝手に改行するかね?

直すの手間ですw

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ