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8話 少女を誘いて己を明かす

ここまでやっと修復完了しました!

今なお読んで下さる方々には多大なる感謝。


タイトルの再投稿はしばらくしたら編集します。

「絶っ対有り得ない!何あれ、あんなの俺の知ってる董卓じゃないから!」

「は、はぁ……」

「でも保護欲掻き立てられるあの存在はアリだと思います」

「結局何が言いたいん自分?」

「可愛いは正義です」

「いや意味解らん」

「解せぬ」


張遼さんに城内を案内され、庭沿いに廊下を歩いて行く。

造りは一見簡素に見えるが凝っている所は凝っていて、それなりに趣がある。これでも太守の住む城だから当然と言えば当然か。


「そもそも自分の中での月はどんな印象やったん?」

「意見の場で黙して語らば死罪。されど語る正論に躓きあらば死罪にする人」

「そんな月っち嫌すぎるわ!」


いやまぁ。あの感じじゃそんな事しないだろうけど。

ていうかこのネタ知ってる人この時代で居ないでしょ。


「そういえばさっきから董卓さんを呼んでるそれ、愛称か何かですか?」

「え」


キョトンとした顔で姜維さんと張遼さんが俺を見てくる。

いや張遼さん、その「何言ってんの?」みたいな顔しないで下さい。


「何言うてんの?」

「畜生口にも出したよこの人」

「ひなたさん、真名を知らないんですか?」

「まな?……芸人?」

「い、いえそうじゃなくて」

「真名っちゅーのはな、簡単に言えば自分が心を許した相手に許す名のことや。己を表す名でもあり、人によっては誇りでもある。それを許可なく呼んだらその場で殺されても文句言えへんモノやで?」

「こ、怖い文化っすね……」

「大陸に浸透しとるから、おいそれと迂闊に呼ぶアホはおらんよ」


渾名か何かと思ってた。気軽に言わなくて良かったホント。


「俺の居た所ではそういう文化、無いもんで」

「へぇ。珍しいなぁ」

「それで私の事、真名で呼んでくれなかったんですね」

「いやぁ、何の事かてっきり解んなかったもので……」


そうですか、と呟き姜維さんがその足を止める。


「では改めまして。私の真名は睡蓮です、お受取りして頂けますか?」

「え、あのえと……良いの?」

「何言っているんですか、あの時既に預けたのですから当然です」


歩いていた足を止め、その整った顔でジッと俺を見つめてくる。

……正直照れ臭い。


「う、ん。じゃあ、睡蓮、さん」

「う……」


その名を呼ぶと頬を少し朱に染め、俯いて視線を逸らす。

その姿に俺も少し戸惑い、同じく視線を逸らしてしまう。


「……なーんや、惚気られた気分やわ」

「ちょっ、何言ってんですかっ」

「だーってなー、ウチを無視して雰囲気作って?恋人みたいな空気漂わせてウチはお邪魔虫やないかなーってな?」

「ちっちち違いますそんな恋人じゃっ!?あっ、いえ決してひなたさんとそれが嫌という訳じゃなくでですね!?」

「はいはいごっそさーん」


あうあう言ってる睡蓮さんを余所に張遼さんは手をヒラヒラとさせ歩いて行く。

……関わらない方が良いね。俺も少し動揺してるし。


「そいじゃ、ここが客室な。大事に使てな?」


そうこうしている内に目的の部屋に着いた。

流石客室なだけあって中は綺麗にされ、しかも広くて家具とかの配置も悪くない。睡蓮さんも「ほわー」とか言ってるし。

更に扉の前には女性の兵士と思しき人が二人待機しておく形になっていた。


だが、一つ問題がある。


それを解決する為俺はそのまま立ち去ろうとする張遼さんの肩を掴みホールドする。


「張遼さん、俺の部屋は?」

「え。二人一部屋じゃアカンの?」

「アカンわ。同じ部屋で泊まらせる気ですか」

「いやぁ嬢と神坂やったら問題無いかなーって」

「問題しかねーよ。なんでそんな認識に至った」

「だってなぁ、真名を呼ぶ関係やし、な?」

「な?じゃねーよ。なら俺は床で寝ます」

「あ、あのひなたさん」

「ん?」

「わた、私はひなたさんが良ければ、構いませんよ?」

「……勘弁して下さい」


睡蓮さんも軽く暴走気味だった。

……え、暴走してた、よね?





結局、俺は空いていた別の客室を使わせて貰う事になった。

張遼さんが「神坂の腰抜けー」なんて言ってたのを軽く無視し、部屋に入るなり寝具に倒れ込んだ。……別れ際に睡蓮さんが少し残念そうな顔していたのを、気の所為だと信じたい。


「はぁ」


――――さて、ここからどうする。

俺は賈駆さんにこの世界の人間じゃない事を告げた。最初は言う気なんて無かったが、あそこまで疑われては隠してもしつこく追及されるのがオチだ。俺の言動も少し甘く、拙かった。だがああ言ったからには、必ず向こうから何かしらの行動を起こしてくるだろう。


更に、ここに来て賈駆さんが俺達をここに招いた意図にも気付いた。


「……まぁ気付いた所でどうしようも無いけどさ」


寝台で寝返りをして窓を眺める。既に夕暮れ時を過ぎており、それを改めて認識すると自分が空腹だとと気付いた。寝台から起き、部屋から出て何か食事でも頼みに行って見ようか……と思い、止める。


「……ん?」


外に人の気配がしなくなった。


さっきまで睡蓮さんの部屋と同じように兵士が外に二人居たはずなのに、その気配を感じない。ボーッとしていたから、それに気付けなかったのか。


俺は不審に思い、扉に近付き耳を立て外の様子を探る。

声が、聞こえてきた。


「入るわよ」

「もんごるッ!?」


声と同時に扉が開き、その扉が俺の顔面にヒットした。

俺がその痛みに床を転げていると、上から聞き覚えのある声がした。


「ちょっと、大丈夫?」

「だ、大丈夫です……っ」


声の主は賈駆さん。俺を見下ろしながら心配の声を掛けて来た。

更にその後ろには董卓さんの姿も見え、俺の姿を見て心配してか、オロオロしていた。


「いつつ……話、あるんですよね?俺が言うのもなんですけど、座ってください」

「そ、そう。なら座らせて貰うわ。ほら月、座って」

「うん。ありがとう詠ちゃん」


俺は立ち上がり鼻を押さえながら扉を閉める。賈駆さんと董卓さんが座ったのを確認し、俺もテーブルにある椅子を引き座る。


「さて、じゃ答えれる範囲でならお答えしますよ」

「……その様子じゃ、ボク達が来るのを待ってたみたいね。ま、ボクにあんなこと言ってたんだから当然か」

「好きで言った訳じゃありませんよ。ああ言わないと賈駆さん、今後俺の事を怪しい奴を見る様な目でずっと見てくるでしょうし」

「へぇ、やっぱり自覚はあるんだ」

「それが嫌なんであんな事言って、話せる場を俺から提供したんですけどね。不本意だけど俺の迂闊さが招いた結果でもありますし」

「……ふーん」


賈駆さんが再び俺を観察する様な目で見てくるが、先程の訝しむ様な感じではなかった。


「あの、神坂さん」

「はいなんでしょう、董卓さん?」

「今は公の場ではありませんので、そのように畏まらなくても大丈夫ですよ?」

「あーすみません、普段が普段なんで……敬語とかが自然と出ちゃうんですよね。望むんなら改善する努力はしますんで」

「いえ、そんな無理にとは……」


そこまで言うと賈駆さんが軽く咳払いを一つし、こちらの注意を引く。


「……で。さっきの話だけど、あれはどういう意味なの?」

「そのまんまですよ。俺はこの世界の人間じゃない」


まるでなんでもない事の様に、賈駆さんの目を見て言う。

俺のその様子に賈駆さんは面食らい、言葉に詰まったようだ。


「とはいえ、正確には生まれた時代が違う、とでも言ったら解りますかね?」

「まさかアンタ、今よりずっと昔に生まれて来たとか言うつもり?」

「その逆ですよ。未来で生まれたんですよね、俺」

「……え?」


今度は董卓さんが面食らった様に呟く。賈駆さんが目をパチパチして俺を見てるが、それを無視して更に話す。


「もっと正確に言うなら、俺はここから遥か東にある、海に囲まれた島国……今は倭という国号だっけ、その国出身なんですよ」


俺は前髪についていたゴミを取り息で飛ばし、言葉を紡ぐ。



「今から千八百年後の未来、俺はそこから来ました」



言った。言っちゃった。

傍から聞けば狂言もいい話だが、これは事実。誤魔化したっていずれボロが出、嘘を吐けばいずれ矛盾が生じ疑惑の目で見られる。

そうなる恐れがあるなら、こんなことで信用を失う位なら素直に話すとも。


「ちょ……っ、ちょっと待って。それじゃ何?アンタはこの国の人間でも無ければ、ましてやこの時代の人間でもない。未来から来た人間だと?」

「うん」

「空言ね」


ハッ、と鼻で嗤い賈駆さんは顔を横に背け腕を組む。

董卓さんは未だに目をパチクリさせていて、その様子が少し愛らしい。


「百歩譲ってアンタが未来から来たとして、ボク達が納得出来るような証拠はあるの?根拠は?」

「あるにはあるけど、これを信じるか否かは賈駆さん達次第で、俺には何とも言えないね」

「いいわ、言ってみなさいよ。アンタの与太話、聞くだけ聞いてあげるわ」


賈駆さんが小馬鹿にしたように再び俺を見る。

まぁ確かに、いきなり言われたってそう思うよね。


「じゃ言うよ。まず今年以内、黄巾党って集団が今の国に不満を爆発させ大陸各地で一斉蜂起を起こす」

「黄巾党?……最近、黄色い布身に付けた奴が各地でよく暴れてるけど、それのこと?」

「うんそれ。んでその一斉蜂起が収まった後、今の皇帝が死ぬね」


それを言った瞬間、賈駆さんの顔が一瞬で無表情になった。


「皇帝が死んだ後、皇子劉弁が皇帝に即位。でも何進と十常侍が対立して、宦官の蹇碩が何進排除を図るけど失敗して、十常侍が寝返って何進に蹇碩を殺害させる。でも何進は十常侍の排除姿勢を強めて、十常侍と何皇后に対抗するため董卓さんを筆頭とする地方軍権を持つ太守を呼んで対抗しようとするけど、呼んだ後にマヌケにも十常侍達によって謀殺される」


そこまで言い息を吐き、椅子を深く座りなおす。


「近い未来に起こる出来事を言ってみたけど、その先も言おうか?」

「もう良いわ」


それだけ言うと賈駆さんは右手で額を抑えテーブルに肘をつく。

董卓さんに至っては話に付いて行けなかったのか、それとも今の話を理解したからか、視線が定まらず落ち着きが無いように見える。

やがて賈駆さんが深い溜め息を吐き、俺に視線を向けて来た。


「……未来から来た、っていうのはあながち嘘ではないみたいね」

「信じるんだ?」

「信じる以前の問題よ。アンタ、臆せず躊躇わず今の事を淡々と言える時点で異常よ」

「異常って、酷いね」

「悪いけど異常よ。漢の民なら皇帝や十常侍の事をそんな言い方しないし、思いもしない。今の言葉を朝廷の息の掛かった奴の前で語ったりしたら不敬罪で即斬首よ」

「不敬も何も、俺はとんでもなく偉い人だろうと皇帝だろうと敬う必要は無いと思ってるね。俺が敬うのは人生経験を積んだ人や命を救ってくれた人とかだ。それに一人じゃ何も出来ない癖に、胡坐掻いて当たり前の様に命令してる奴は人間として欠陥があるとさえ思ってる」

「……そういう事を平然と言える時点で、アンタは異常よ」

「ああもう、じゃあ異常で良いです」


さっきから異常異常って酷いな。この時代で皇帝がどんだけ偉いか知らないけど、現代っ子に何を求めてるの、っていう。


「でも公では言わないよ。俺もまだ死にたくないし」

「当たり前よ。念のために人払いをして良かったわ」

「人払いしてたからこそ話したんだけどね。居たら今までの事話さず、俺は一切のシラを切るつもりでしたし」

「……気付いてたの?外に誰もいない事に」

「扉閉める時に外をチラッと確認を。いや、兵士が居るには居るけどあの位置じゃ離れすぎてて、こっちの話は一切聞こえないだろうね」

「あの一瞬でそこまで確認してたなんて……食えないわね、アンタ」

「目聡いだけですって。で、俺がどうして睡蓮さん……姜維さんを信じたのか、納得して頂けました?」

「……そういえば、それが発端だったわね。アンタが姜維という存在を信じてた節があったのは、あの子が歴史に名を残した存在だから。そういうことでしょ?」

「その通りです」

「まぁ、確かに納得は出来たけど。実際は理解が追い付かないのが本音ね」

「でしょうね。出来たらそれはそれで異常だ」

「何よ、それって仕返し?」

「さてどうでしょう」


俺と賈駆さんは顔を合わせるとお互いに軽く笑い、身体の力を抜く。

すると今まで静かだった董卓さんが顔を俺に向け、真剣な顔で俺を見つめる。


「神坂さん。貴方が何者であるかはよくわかりました」

「って、董卓さんも今の話信じるんだね」

「まだ少し信じられませんけど、とても嘘を言っている様には見えませんでしたし、何より貴方は私の民を救ってくれました。そんな人が嘘は吐かない、と私は思っています」

「理由が軽いね。そんな軽々しく人を信じてもいいの?」

「軽くなんてありません。神坂さんは先程、敬うのは命を救ってくれた人、と仰ってました。民は国力そのものであり、民が在ってこそ私達がいます。私達の命にも等しいその民を救って頂いた貴方を信じる、というのは理由として軽いですか?」

「……いや。董卓さん、貴女は正しい。今の俺の軽率な発言は取り消すよ。そして有り難う、俺を信じてくれて」


これは、俺が悪いな。

俺を信じてくれるという人に対し、礼を欠いた。如何なる理由だろうと、信じてくれる人に対して失礼な発言だった。

俺は謝罪と感謝の意味で頭を下げ、その様子に董卓さんは少し慌てた様子を見せる。


「あ、いえ、その……へぅ」


……てかなにこの子可愛い。


「もう、月は言う時には言うけど、最後でちゃんと締めないと」

「でも詠ちゃん、私も少し強く言っちゃったし……」

「いいのよ。月は間違って無いんだから」


成程、この二人は君臣関係だけど友同士でもある、か。

見ていて微笑ましい。


「……それで、ボクがここに来たのはもう一つ目的があるんだけど、聞いて貰える?」

「ん、なんでしょう?」

「アンタと姜維、月に……董卓軍に仕官する気はない?アンタ達二人なら、諸手を挙げて歓迎するわ」


俺は大して驚きもせず、その言葉を冷静に返す。


「ほ。そりゃまた何故?」

「姜維は以前から勧誘するつもりだったのよ。書に関して言えば古老は舌を巻き、武では大人顔負けだと噂だったから」

「まぁ、それなら当然ですよね」

「そこで今回の賊襲撃でアンタの活躍を姜維から霞……張遼に聞いたわ。これでもボクは、"神坂日向"を評価してる。だから、董卓軍に士官しないかと話をしに来たつもりなの」

「……成程ね。賈駆さんの言いたい事はよく解りました」

「それじゃあ!」


賈駆さんは身を乗り出してその顔を喜色で染める。

だが俺はこう答える。




「悪いけど、俺は沈み逝く泥船に同伴するつもりはないんだ。だから断らせて貰うよ」



その言葉に賈駆さんも董卓さんも、言葉を失った。


うーん、少し気になったことがあるのですが、会話文は行を空けて書くのと、行を詰めて書くのはどちらがいいですかね?


いえね、最初は見辛くない様に考慮して書いてたんですけど、こうしてみると一話分が無駄に長く見えたりしないかな?とか思っちゃってる訳です。


その辺りは皆さん、どう思っていらっしゃいますか?小説を良くするために是非ご意見を賜りたいです。


あと誤字脱字の報告、ご意見感想の方もあればお願いします!

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