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女王誕生編4

*****



首都マルニールに到着したのは三週間後の事だった。途中で賊に襲われたりして余計な時間がかかってしまった。


「………久し振りだな…この城も…」


アイテールの目の前にある巨大な城。しかし、城下に広がる不穏な空気はこの国の未来を物語っていた。


「………。門を開けよ。我は20番目の側室であるユーフェミリアが息女、ユースティス・ファルティスである!兄王シューナッツ・ファルティス・ファラオに取りつげ!!妹が兄の元に戻ってきたぞ」


門前で叫ぶアイテールに大慌てで門を開ける兵士達。フレイアは苦笑していた。すると、門から一人の中年オヤジが出てきた。


「ユースティス様!!」

「おぉ!!ラクシェか!!年相応の顔になったな」

「……確かにユースティス様でございますな」


出てきたのが護衛騎士だったラクシェなのに気が付いたアイテールもといユースティスはにぱっと笑顔になった。そしてラクシェが気にしていることをズバッと的確に一点集中で毒を吐いた。それにユースティスしかいないと断言するラクシェ。


「なんだ?いまだにおじさん呼ばわりしたのを気にしているのか?」

「あの時はまだ20代です!!」

「知ってるさ。だが、第一印象がそうなってしまったんだ。諦めてくれ」

「姫様……」


むきになって反抗するあたりまだ気にしているようだ。ユースティスの言葉でバッサリ斬られたラクシェは肩を落とすのだった。そしてそんな父親の姿に息子(騎士)は哀れみの視線を投げるだけだった。


「フレイア、ご苦労だったな」

「父上」

「ユースティス様、ご無事のようで何よりです。誘拐されたと聞いてこの20年間、心配しておりました」

「………老けたな……ニョルズ……」


城から老人が出てきた。老人―ニョルズ・ミレイユ―はユースティスに王族に対する礼をする。その時に見える頭の天辺を見て一言。


「……どこを見てるんですか!!」

「頭だが。凄い後退の仕方だな。元から薄いとは思っていたが……」

「憐れむような顔をしないでください!!」


ニョルズ、ちょっと涙目であった。相変わらずのユースティスにニョルズは肩を落とすしかなかった。フレイアは慰めるなんてことはしなかった。薄情な息子である。


「………ユースティス様が戻られたのだな…」

「………これで懐かしむのもどうかと思うが……この家臣を家臣と思わない言動をするのはユースティス様だけですね……」


ニョルズとラクシェは互いを励ましながらアイテールがユースティスであることを認めた。ここまで口の悪い王女はこいつしかいないであろう。


「では、謁見の間にご案内します」


ニョルズを先頭に城へ入っていくユースティス達。相変わらず豪華な城にユースティスは懐かしさを感じていた。そして謁見の間に着くと兄王と奥さんの王妃がいた。


「やぁ!相変わらず兄上は服のセンスが無いね」

「確かにこいつはユースティスだ」


兄王シューナッツは即答した。それは入る奴がわかっていたようなくらい早く。その気持ちがわかるラクシェとニョルズも頷いていた。


「あなた、そんな簡単に決めてしまって良いのですか?」

「シャーリー……これは間違いなくユースティスだ。断言してやる。人を人と思わぬ言動をするのはコイツだけだ」

「兄上酷ーい」

「笑ってるぞ」


王妃―シャーリー―がシューナッツに抗議するが断言された。若い大臣達もユースティスを知らないので疑いの眼差しを向けている。しかし、シューナッツはユースティスの真の恐ろしさを知っているので自信満々。本人は笑っているが。


「だって面白いんだもん。久々なんだから仕方ないじゃん。……血の繋がった兄弟に会えたんだからさ」

「…………」


哀愁のある顔をしているのに騙される兄王とその他達。ユースティスが内心ほくそ笑んでるのを知らない。


「それより姉様方は?」

「………あいつらは死んだよ」

「なんで?」

「まぁ、色々あってな」

「ふーん…話す気が無いなら良いよ。巻き込まれても嫌だし。面倒事は勘弁だよ」


姉達がいない理由を知らないふりをして聞くユースティスは最早女優である。内心自業自得と笑うユースティスがいた。。


「一応、お前の離宮は残してあるが……どうする?」

「使えるの?」

「あぁ。掃除はしているはずだ」

「じゃあ、今日から使わせてもらうね。【藍水院】《ヴィオリウム》」


離宮【藍水院】又の名を《ヴィオリウム》。この離宮はユースティスの為に作られた離宮であり、ユースティスがどの様な権力を持っているかがわかるものとなっている。離宮全体を青系で統一していて対の離宮である【星夜院】又の名を《ヴィオステラ》は黒で統一されている。これらは大海のヴィオリウムと星のヴィオステラを元に名付けられた。そして、その神は元は一人の神であった。


「!?ぁ…」

「ん?どうかしたのか?シャーリー」

「い、いえ……なんでもありません…」

「そうか?」


王妃が反応したことに全員が気が付いたが慌てる様にユースティスやフレイア達は何かあると睨んだ。シューナッツはそれ以上深く突っ込みはしなかった。


「……………じゃあ、私は離宮にいくよ」

「あぁ。食事は離宮のコックに作らせる」

「はーい」


シューナッツの言葉にユースティスは手をふり退室した。退出したユースティスを見てシューナッツは苦笑した。


「私も下がらせていただきます」

「あぁ。ラクシェも下がっていい。《ヴィオリウム》の警護に当たってくれ」

「はっ」


フレイアとラクシェが下がる。そうすると王妃が口を開いた。


「何なんですか?あの姫は」

「ユースティスには関わるな。死にたくなければユースティスの機嫌を損ねるような事はするな」

「…………」

「お前達もだぞ。ユースティスはこの国をどうにでも出来る。命が欲しくばユースティスの機嫌を損ねさせるな」


シューナッツの言葉にユースティスを知らない奴等が震撼した。その真の意味を知らないシャーリーが後に事件を起こすのだった。




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