女王結婚編3
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それと同時刻、朝議が始まっていた。
「えー…では、今朝の騒動から老臣共に制裁を下したため、人数が少ないが朝議を始める。あ、その前に……フレイアの指示で出勤確認用の魔方陣が設置されてたみたいだけど、異常はないよね?あれば申告よろしくね。じゃ、始めるよ」
ユースティスの一言に朝議が始まった。各部署や各課から報告が上がる。地方から上がる報告はラシュール達、元暗殺者に取り締まりをさせている。後に暗行御史として国中を巡る部署となる。ユースティスは各地に学校や神殿から派遣される神官の駐屯所を作ったり、河川や道の整備をさせたり国政に力を入れている。外交は輸出入に問題が無ければラシュール達に処理をさせている。各方面から上がる報告は全部署に配布され全員が認知している状況となっていた。
「えー、最後になんかある人ー」
「はい」
「はい、リーフ」
「<ウルカムル>の王子をどうなさるおつもりですか?」
「あー……それはユウ次第かな。あれが認めないとなんとも言えない。私としては子供が産めないからどうでも良いんだよね。次はセルジュがいるし。だけど、<ウルカムル>が処刑すると言うなら、うちが貰えば一石二鳥。あれの能力の高さは《ヴィオレッタ》のお墨付き。これを考えると貰っても損はない」
文官のリーフレットの質問にあー……みたいなユースティス。利益になるならないでしか考えていない様子。それに全員が呆れ顔。
「……陛下……」
「陛下、結婚ですよ?もっと真剣に考えてください」
「真剣も何も……結婚は《ユウラスティア》だけでいい。めんどくさい」
「「「…………」」」
それに文官から文句が来るがユースティスは本当に面倒そうな顔をしていた。そして、ユースティスの旦那だと豪語する《ユウラスティア》を思い出せばユースティスがそう言うのも仕方のない話である。それに沈黙した文官達。
それ以降、誰もその話に触れることはなかった。
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ラヴィーネが来て二週間。<ウルカムル>から書状が届いた。その内容にユースティスが全員集合をかけた。もちろんラヴィーネも呼ばれた。
「集まってもらってすまない。<ウルカムル>から書状が届いた。内容は……極寒の国<ウルカムル>の第一王子、ラヴィーネ・ファルファーシュ・ウルカムルが我が国の地を踏むことは二度とない……だ、そうだ」
「「「!?」」」
「…………そうですか」
「因みにこれを持ってきた使者はラシュール達に見張らせている」
ユースティスから話された内容に全員が驚く。ラヴィーネはそれを普通に受け止めた。ユースティスはこの書状を受け取りご機嫌ななめ。今にも燃やす勢いが心なしかある。ラヴィーネは使者が誰だか問う。
「誰でしたか?」
「確か……」
「ジュエル・ウルカムルですわ」
「………関係者以外立ち入り禁止だぞ。戦争をしたいのか?」
「私はお兄様に用がございますの。貴女には用はなくてよ」
「…………ここが他国だってことを忘れんじゃねぇよ……ガキ……」
ラヴィーネの問いにユースティスは少し考えるような仕草をすると謁見の間の扉が開いた。そして、ずかずかと入ってくる金髪。それにユースティスは頭を抱えた。女運がとことんないユースティスである。自己中女はユースティスの鬼門だった。書状でご機嫌ななめなのに金髪の女―ジュエル・ウルカムル―が入ってきたことにより一気に機嫌が降下。今にも重圧の魔法を放ちそうな程、機嫌が悪い。必死に抑えているが気を抜けば壁に穴が開く。礼儀のなっていないジュエルにユースティスはマジで殺すぞ、ガキ…と思っている。
「ジュエル、ここは他国です。礼儀を弁えなさい」
「あら、属国になるのにそんなこと必要ないではありませんか」
「「「!!!!!」」」
ジュエルの言葉に怒りを露にする官吏達。ユースティスの表情は無。
「……………………………………………ジュエル・ウルカムルを捕らえよ。《ヴィオレッタ》、国王に伝えよ。我が国を侮辱した事を詫びるならジュエル・ウルカムルを帰そう。詫びぬなら……処刑する」
「わかりました。しかし、ヴィオ。この愚か者の処刑は私に任せては頂けませんか?」
「……構わないが…珍しいな…」
「我が国の民です。私がけりをつけます」
「……良いだろう」
「ありがとうございます」
《ヴィオレッタ》もユースティスの怒りの度合いを感じとり、処刑代行を申し出た。それを不思議に思うユースティスだが、《ヴィオレッタ》の内なる怒りに気が付き、許可を出す。そして《ヴィオレッタ》は転移で消えた。
「……《ユウラスティア》、《ヴィオレッタ》の後を追え。あれは……あの時と同じだ」
「……わかった」
《ユウラスティア》に後を追わせるユースティス。しかし、それは遅かった。