王妃内乱編7
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「ふふふ……この毒を飲ませればいくらあの小娘でも……ふふふ……」
《プリムローズ》から妖しい笑いが響き渡る。《プリムローズ》にいるメイド達は気味悪がって誰も王妃の部屋には近付かなかった。
その夜、ユースティスが書類を片手に夜食を食べていると味がおかしいのに気が付いた。
「あ、毒だ」
「!?毒!?大丈夫ですか!?」
「あぁ、大丈夫だ。大事にすることではない」
ユースティスがぽろっと呟いた言葉を入ってきた文官が聞いてしまい慌てるがユースティスはピンピンしていた。オロオロとする文官に苦笑するユースティスがいた。
「何故ですの!?致死量以上を飲ませたのに何故生きていますの!?」
《プリムローズ》の王妃の部屋で一人騒ぐシャーリー。一滴垂らすだけで死ぬ、即効性の毒を一本丸々入れたのにユースティスはピンピンしていた。
「次ですわ!!」
さらに腹をたてた王妃はユースティスを殺すべく動き始めた。
ある日の夜、王の執務室に忍び込む人影があった。中にはユースティスだけ。窓から侵入し、ユースティスに向けて剣を降り下ろした。……と、思いきや……。
「悪いんだけどさ、これ頼むよ」
「は?」
ユースティスは侵入者に紙を突き付ける。それにキョトンとする侵入者。
「いやー助かるわ。お前をこう言うときの為に育てた甲斐があるわ〜」
「!!!アイテール!?」
侵入者はユースティスだとわるやいなやとっさに窓に足をかけるがガシッと頭を鷲掴みにしたユースティス。笑顔で室内に投げ窓を閉めた。
「イテッ!!」
「なーに逃げようとしてるのかな〜?」
「ヒィ!!」
真っ黒い笑みを浮かべるユースティスをみて侵入者は怯えた。
「アハハ、そんなに嬉しがらなくても良いのに」
「怯えてるんだよ!!」
真っ黒い笑みを浮かべたユースティスから逃げるように室内を走り回る侵入者。追いかけっこは朝まで続き、遂に侵入者がばてた。
「ハァ…ハァ…ハァ…」
「もう終わり?つまんない」
むくれるユースティスにこんのクソババァ!!と思っている侵入者。
「俺に何のようだよ!!クソババァ!!」
「相変わらず口悪いな、ラシュール。そんなんだからもてないんだぞ」
「うるさい!!」
侵入者―ラシュール―はユースティスに牙をむく。と、言ってもユースティスに効果はないが。
「ラシュール、君さ。ここの王妃様から依頼受けなかった?」
「誰が依頼人について喋るか!!」
裏家業の人間は依頼人について決して喋らない。例え拷問を受けたとしても。
「しゃべってもらわないと困るんだよね。君だって………お仕置きは………受けたくないだろ……?」
「!?!?!?」
「ふふふふふふ……」
「ギャァァァァァ!!!」
じんわりじんわりとラシュールに近づくユースティス。じんわりじんわりと後退るラシュール。壁まで追いやられたラシュールは逆光とユースティスの妖しげな笑いに悲鳴をあげたのだった。