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女王誕生編1

「アイテール」

「ん?何?ハレシュ」

「作りすぎだから」

「………………」


首都マルニールから大分離れた処にある薬草の街カスターニュにある孤児院<アレニア・シュール>のとある部屋で一人の女性が無表情で何かを作り出していた。そこに一人の青年が入ってきた。青年―ハレシュ―はこの光景を見てため息をついた。そして女性に声をかけた。一瞬、何を言われたのかわからずキョトンとした女性―アイテール―だが手元を見て理解した。


「魔力を一定の量に保つにはこれくらい作らないと」

「それにしても作りすぎ」


アイテールが作っているのは魔晶石と呼ばれる魔力の結晶。それは色々な物に使われているため消費量が多い。そのため魔晶石はギルドが買い取りをしていて誰でも作れ売ることができる。魔晶石は魔力の純度によりランクが決められている。魔力は魔晶石を作るたびに消費され、本人が保有する魔力量より作ることは出来ない。アイテールの魔力は未知数で魔晶石を大量に作っても減りはしない。


「どうせ、ギルドに売ってお金にするんだから良いじゃない」

「子供達が贅沢を覚えたらどうする?」


アイテールが作る魔晶石は純度が高く高額で売れる。その為、孤児院だがお金には困っていない。子供達もそれなりの生活をしているため子供によってはドン底を知らない。お金がたくさんあるのを知れば我が儘を言い出すのではないかと心配するハレシュ。お金がたくさんあればあるほど使おうとしてしまう人間の心理をわかっているのだ。


「それはないな。あのイリアが金銭管理してるんだぞ。ないない」

「……言いきれるお前が凄いよ」


呆れしかないハレシュだがアイテールは楽天的。守銭奴として名を馳せるイリアが管理しているから大丈夫だとアイテールは笑った。それに肩を落とすハレシュがいた。


「院長先生ー、アインが怪我したー!!」

「う゛……ぐす……」

「よく我慢したね、アイン。傷を見せて?」

「派手にやったな」


アイテールの部屋は院長室。アイテールはこの孤児院の院長であり、孤児達の保護者である。御年、25。落ち着いた雰囲気から30代に間違えられることがよくある25だ。さらに言えば婚期は既に通過済み。貰い手なし。部屋に駆け込んできた子供のうち、怪我をして泣いている子供―アイン―を座らせ怪我の具合を診る。大きなかすり傷を作っていた。


「まぁ、これくらいなら消毒で大丈夫だろ。ミレイ、救急箱を持ってきて」

「はーい!!」


アイテールは少女―ミレイ―に救急箱を持ってくるように頼み、傷口を魔法で洗浄。ミレイが持ってきた救急箱を使い治療を始めた。その姿は母親の様であった。


「ありがとう!院長先生!」

「もう転ぶんじゃないよ」

「はーい!!」

「ミレイも気を付けるんだよ!」

「はーい!」


慌ただしく部屋から出ていく子供達にアイテールとハレシュは苦笑した。


「平和だな……こんな日常が続けば良いのに……」


アイテールの呟きが実現することはなかった。嵐の前の静けさのように………




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