王妃内乱編2
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ユースティスの統治が始まった最初の夏。
ユースティスがしている仕事を新大臣達に振り分ける作業や文官達に振り分けする作業を行っていた。振り分け終わった仕事を謁見の間を使い、部署や個人に説明するユースティス。わからなければ随時、聞きに来るよう伝えてあるので文官達が集まってくるだろう。そんな時にユースティスはふと思った。
「……お前らの給料ってどうやって決めてるんだ?」
「「「…………」」」
ユースティスの疑問に全員が黙った。何故今さらそんなことを聞く!!と。未だに居座る《ユウラスティア》は腹を抱えて笑いを堪えていた。爆笑寸前のようだが。顔面をひくつかせながらニョルズが答えた。
「爵位により決まった給金が支払われます」
「は?サボってるのに給料入るの?あり得ない。給料体制変更!時給制にするよ!!」
突然の事に唖然とする家臣一同。
「時給制…ですか?」
「ん。例えば1時間1000サリだったら、私が6時間仕事しました。そうしたら6000サリ貰えます的な感じだよ。基本、9時から5時でお昼に1時間。午後に30分休憩。残業はしても良い。出勤確認は……門又は部署内に設置するか。後は…」
今まで多くの文官は残業しても一定の金額しか払われなかったのに不満が出ていた。それを瞬時に見抜いたユースティスは給料体制変更を独断した。細かいところはどうしようか悩むユースティスに新人文官から手が上がった。
「陛下」
「はーい、新人君」
「……メルヴィルです…」
「メローね。何?」
「…………。その、時給制…ですか?それは残業した分もその時間分貰えると言うことですよね?」
「そうなるね。今まで大した稼ぎしかなかったヤツが大金持ち歩けるぞ」
「「「!!!」」」
名前を覚える気がないユースティスに顔をひきつらせる新人文官―メルヴィル―は突っ込みたいのを抑え聞き出す。その内容に先輩文官達が反応した。
「ただし!!それだけの働きをしなければ意味はないがな。私のところに来る書類が雑だったら減給されるからね。そこら辺は厳しいよ」
「しかし、これを実地するには…」
「来月からでいいよ。それまでに私も用意しておくから」
「用意…とは?」
「出勤確認用の魔方陣作っとくから」
ユースティスがビシッ!と告げる。それに戸惑う文官達。来月からとは言うが急である。ユースティスは思い付けば即実行でその早さについていける者はまだ誰もいなかった。
「出勤確認用の魔方陣?」
「うん。自己申告や騎士達に確認させても買収されたら意味がない。だったら半永久的に稼働する魔方陣か何かを作った方が騎士達の仕事を増やす必要もないし、経済的。人間って欲には勝てない生き物だと思うよ」
ユースティスの釘指しに全員がうっと言葉を詰まらせた。思い当たる節があるのか遠い目をする。主に貴族連中だが。そんなんでユースティスによる監視の元、着々と新政権の基盤が作られていった。




