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女王誕生編14

*****



《ヴィオステラ》の大聖堂に集まる《パラディン》と神官達はユースティスが戻ってくるのを待っていた。全員、不安そうな顔をして。そこに<エリュシオン>からの扉が現れ、開かれた。中からユースティスと《ユウラスティア》が戻ってきた。神官達はそれを見て泣いた。ユースティスはそれにぎょっとしていた。


「何!?何があった!?」

「ユースティス様、お帰りをお待ちしておりました。……審判の刻でございます」

「……そうか」


《パラディン》達が膝をつき報告する。それに無表情になるユースティス。


「それと………シュゼリア神様、出生率が0なのですが」

「さぁ?私は知らないな」

「《ユウラスティア》」

「いくら、ヴィオの言うことでも私は聞かぬぞ」

「ユウ」

「………………チィ、仕方ない。本日以降から少しずつだ」


ミストが《ユウラスティア》を見るが本人は知らぬふり。ユースティスが名前を呼んでも知らぬふり。子供のような《ユウラスティア》に呆れたユースティスは《ユウラスティア》を放置して話を進めた。


「他に何があった?」

「王はいつも通りですが、あの偽者も酷いものです。国庫に風穴を開けたいそうですよ」

「はぁ……。王妃は?」

「ラフィーネを投獄しようとしたのを私が止めました。今は《ヴィオリウム》で保護中です」

「了解。この一年で結構あったみたいだな。皆、ご苦労だった。資料集めはどうなっている?」

「資料集めは順調です。後は提出のみです」


ユースティスが《パラディン》にこの一年の動きを聞けば次々と報告が上がる。やはり録な事をしないとユースティスは思った。


「そうか。ならば、パーティーを開こう。貴族は全員参加。……絶対に逃がすな」

「「「はっ!!」」」


ユースティスの号令に《パラディン》が動いた。神官達は内容についていけずオロオロしていたが。一人構ってもらえずすねてるのがいるが気にしない。こうしてユースティス主催によるパーティーが幕を開けようとしていた。






黄昏から行われるパーティーに貴族全員が出席した。ユースティス(仮)や王族も。リーリス家も特別に出席を許された。


「お姉様!!」

「アンダルシア!!無事でしたのね!」

「はい!お姉様が本物のユースティス様であると私は信じておりました!!」

「ユースティス、よくやった。あの偽者はどうした?」

「偽者?私は知りませんわ」

「何?……まぁ、よい」


ユースティス(仮)が投獄されていたアンダルシア・リーリスとタリス・リーリスと対面した。そして、大声で話す。その内容に他の貴族は白い目を向ける。それに気が付いていないリーリス家。


「……姉上の主催か」

「何かありますの?」

「…………いや……」


一方の国王は暗い顔をしていた。ユースティス主催のパーティーは必ず裏がある。それをシューナッツは危惧していた。誰かが処刑されると。顔を青くするシューナッツを余所にユースティスが《パラディン》と騎士を連れて入ってきた。


「ご機嫌麗しゅう、皆様。大会議を抜けて戻って参りました。皆様、ご存じですか?我が国の出生率0%と伝染病について」

「出生率0%だと!?」


ユースティスの言葉に誰もが驚愕した。シューナッツや王妃も例外ではない。


「はい。これの原因は我が愚昧にして私を騙るユースティスです。子宝のか」

「ユースティス」

「シュゼリア神!?」

「シュゼリア神を怒らせた事が原因です」


ユースティスが原因を伝えると《ユウラスティア》が登場。《ユウラスティア》はちゃっかりユースティスの隣を陣取った。


「たかがそれだけですの!?」

「それだけ?貴様は我が妻の名を騙り、傷付けた。それを理解しないとは愚かしいな」

「我が民が申し訳ありません」


ユースティス(仮)が叫ぶ。それに《ユウラスティア》は睨み付け殺気を飛ばした。シューナッツは《ユウラスティア》に膝を折り、謝罪した。


「まぁ、その愚妹諸ともリーリス家は処刑です。それと…兄上、貴方と貴方を取り巻くグズも処刑になります。わかってるとは思いますが、国政悪化と……王妃による《ヴィオリウムステラ》窃盗と《ヴィオリウム》及び《ヴィオステラ》の不法侵入及び儀式用装飾品の窃盗で、死んでいただきます」

「「「!?」」」


ユースティスが罪状を述べる。それに全員が反応した。王妃はしてはならぬ大罪を犯した事にシューナッツも初めて気が付いた。


「王妃に関しては罪無き者の投獄もありますが、これはフレイアが対応しましたので良いでしょう」

「ユースティス様、何故王妃様を処刑なされないのですか?」


ニョルズは何故本人を処刑しないのかと聞けばユースティスは顔を背けた。


「子供が生まれたらしいな。それ故だ。親無き子にしたくないだけだ」

「だったら生かすべきですわ!!」

「録な事をせぬ奴等を生かしてどうする?邪魔なだけだ」

「ッ!!」


数多くの孤児を見て育てたユースティスはあの子達のように親無しにしたくなかった。でも、自分がしたことの責任を国王として果たさせるにはシューナッツを生かすことは出来ない。ユースティスもこれには苦悩した。それでだした答えがシューナッツの処刑だった。


「…………わかった。私の首でお前が満足するならそうしろ。ユースティス」

「はい。では、罪人を捕らえよ!!」


シューナッツはユースティスが苦悩したのを感じとり覚悟を決めた。ユースティスの一言で騎士達が貴族を取り締まりだした。貴族達は《ユウラスティア》が出す殺気にやられて動けずにいた。辛うじて話せるのはユースティス(仮)と王族のみ。後は反論も許されない。国王であるシューナッツも捕らえられた。


「兄上、貴方は愚かでしたね。私が忠告したのにも関わらず残念です。貴方は賢き者だと思った私が馬鹿でした」

「ユースティス……」


ユースティスの悲しい顔にシューナッツも泣きそうになっていた。しかし、ユースティス(仮)の叫びにユースティスの仮面が剥がれた。


「何故私が捕まらなくてはならないのですか!?」

「はぁ…君は私だと偽った。その時点で詐欺罪だと言うのに私を騙り国庫に穴を開けようとした。それで捕まらぬ方が異常だな」


ユースティス(仮)の叫びにユースティスは呆れた。その目は完全に馬鹿にしている目だった。


「私がユースティスです!!貴女に何がわかるというのですか!?」

「じゃあさ、なんでユースティスが行方不明になったか知っているか?」

「誘拐されたのでしょう?」

「アホか。ミレイユ家に追い出されたんだよ。わかるか?聡明すぎて神だってバレたんだよ。ユーフェミリアだって産まれてからすぐに気が付いたさ。生まれて親から捨てられたお前と確かに違うが生まれてから国を背負う覚悟をしている。その意味がわかるか?自らの決定で人殺しになるんだよ!!」

「ッ!!」


ユースティス(仮)は自分が王女であると信じて疑わない。むしろ自分が王女で当たり前だと思っている。しかし、子の国の第20王女は異質だった。それは王宮に出入りしていた者だったら知っていること。それにユースティス(仮)は気が付いていなかった。自分が偽者だと言われていることに。そしてユースティスの王族としての責任の重さを目の当たりにした。


「私達の生活は国民の血税なんだよ。その意味がわかるか?民が頑張って作った物を売ったお金が税金になる」

「それがなんだと言うんですの?王族なんですから当たり前じゃないですか」

「そうか。自分の下に犠牲者がいなくては成り立たぬ弱者など必要なかろう?だから私が……引導を渡す」


暴れるユースティス(仮)にユースティスは呆れ顔。こいつの前では全てが無意味。理解能力の無さにユースティスが半ぎれした。その顔は無表情。瞳には殺意しか籠っていない。


「人の上に立つ苦悩を、責任を、重圧を背負わねばならぬ。王とは……孤独な生き物だ」


ユースティスの言葉が会場に響く。重く皆の心に沈んでいった。


「連れていけ。処刑は一週間後。私自らが行う」


騎士達はユースティスの言葉に従い、国王達を連れていく。その表情は皆、暗かった。王妃は後宮の隅に部屋を移した。その際、《ヴィオリウム》と《ヴィオステラ》から盗まれた《ヴィオリウムステラ》や儀式用の装飾品は全て回収された。




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