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女王誕生編10

*****



《ヴィオリウム》は現在、大掃除と言うことでユースティス(仮)は来賓室に住むことになった。ユースティスは《ヴィオステラ》の方に移動している。夕食を王族全員でとることになった。《ベルモット》は全員後ろで待機となった。


「ユースティスよ、よく戻ってきたな。私は嬉しいぞ」

「私もお兄様に再びお会いできて嬉しいです」


ユースティス(仮)の言葉を聞いたシューナッツは顔をひきつらせた。それはもう盛大に。ユースティスは絶対にこんな可愛い事は言わない。


「…私もだ。二度と会えぬと思っていたからな」

「あら、シューってば顔がひきつっていますわよ」

「お黙りください、姉上」


ユースティスに指摘され、慌てて表情を戻し反論するシューナッツ。ユースティスは黒い笑みを浮かべていた。


「あらあら、政治もまともに出来ないひよっこが何をほざきますか?」

「…………」


ユースティスに猛毒を食らわせられたシューナッツだった。それにシャーリーは苦笑していた。


「ユースティス、行儀がなってないぞ」

「まぁ。タリスは本当に役立たずね。保護したのなら王族としての礼儀作法を習わせるべきだわ。本当、お金のことしか頭に無いのね」


ユースティス(仮)のマナーを見てシューナッツは顔をしかめ、ユースティスは呆れていた。王族としてのマナーが何もできていないのは愚か者というレッテルを諸外国に印象づける。シューナッツでさえ、マナーはきちんとしているのに呆れたものだ。


「明日から教師をつけよう。王族としての心得をキッチリ学ぶが良い」

「シューも一緒に受けたらどう?」

「私は執務がありますので」

「そんなもの私が代わりますわよ?」

「お体の弱い姉上に任せるわけには参りません」


ユースティスからの痛い攻撃を受けるシューナッツ。言っていることすべてがシューナッツにも当てはまるから不思議だ。心に相当なダメージを負ったシューナッツだがユースティスの正論に反論は許されない。反論すればすぐさま首を付け替えることになる。なので敢えて体が弱いことを理由に執務は自分がすると押しきった。ユースティス(仮)には姉思いの兄だと認識された。実際は己の身を守るためだが。


「お兄様、離宮の事なのですが…」

「《ヴィオリウム》がどうした?」

「すこし質素過ぎませんか?私達は王族です。民を象徴する私たちがあのように質素であるのは…」

「あの離宮に関して口出しをする権限は私にはない。あれは古来よりあの色を使うことが義務づけられている。元々、《ヴィオリウム》様の為に作られた神殿だ。何も力を持たないお前が住むには相応しくない。あれは《ヴィオリウムステラ》として生まれたユースティスにのみ使う事が許された離宮。《ヴィオリウムステラ》様でないお前に使う資格はない」


タリスからあの離宮は自分のものと聞いていたユースティス(仮)は自分好みにしようと画策する。しかしシューナッツの言葉は否定の言葉。


「私には記憶がありません。なので力を忘れてしまっているだけですわ」

「そうか。ならば次の豊穣祭で【豊穣の舞】を舞え。それを舞い恵みの雨をもたらすがよい。そうすればお前が《ヴィオリウムステラ》様であるユースティスと認めよう」


あの離宮を気に入ったユースティス(仮)はなんとか自分の物にするために嘘をつくがシューナッツの言葉に食い下がる。


「舞い方も忘れてしまいましたわ」

「それでは仕方ない。儀式用の舞は誰も知らぬ。ユースティスのみが舞えれば良い話だからな。ならばあの離宮を使うのは諦めろ」

「………………」


シューナッツの冷たい言葉に結局諦めるしかなかった。唇を噛み締めるユースティス(仮)がいた。


「《ベルモット》は引き続き姉上を補佐してくれ。姉上1人では何かあったときに対処が出来ない」

「「「はっ」」」


ユースティスの後ろで待機している《ベルモット》にシューナッツが告げる。それに頷く《ベルモット》。


「ユースティス、お前にはメイドを付けよう。だが、離宮には近付くな。まぁ、大掃除が本格化すれば敷地内に入ることすら出来ないがな。神官達が恐いのなんのって…」

「それはシューが聖堂に入るからですわ。聖堂には《ヴィオリウムステラ》様しか入ってはならぬという掟があるのに」

「当時は知らなかったんだ…」

「知らなくとも離宮に入ってはならぬと教えられていた時点で入るものではありませんね」

「…………」


ユースティス(仮)には他のメイドがつけられることになった。これから《ヴィオリウム》の大掃除が本格化する。そうすると《ヴィオリウム》は立ち入りが禁止となる。神官達による大掃除は神聖な物とされ禁忌となった。それを知らずに入ったシューナッツは相当怒られた記憶がある。ユースティスにそれを指摘され黙るしかなかったシューナッツであった。


「お姉様は普段何をなされているのですか?」

「私ですか?私は神殿に務めていますよ。神殿には沢山の患者がいます。その方々を治すのが私の役目です」


ユースティスに話を振ったのが間違いだった。シューナッツはユースティス(仮)がユースティスに話を振った時点でとばっちりを食らうのは目に見えていた。


「お姉様がその様な下民を診なくとも……」

「なんですって?王族の一員だとか勘違いしてる奴にその様な事をいう権利があると思っているんですか?付け上がるのもいい加減になさい」

「ごめんなさい……お姉様…」

「その低レベルな頭をどうにかなさい。本来、人に上も下も無いのです」

「「「…………」」」


案の定、ユースティスを怒らせたユースティス(仮)はユースティスに睨まれ怯えるしかなかった。


「アイテール様、そろそろお時間です」

「わかりました。では、シュー。私は失礼しますわね」

「あぁ」


《ベルモット》に日程の管理をさせているユースティスは食堂から出ていく。それでやっと一息ついたシューナッツ達。


「……お兄様、お姉様は大丈夫でしょうか?」

「…なんとも言えないな…。良いか?ユースティス。姉上は怒らせてはならない。姉上を怒らせると神官達が煩いからな」

「?何故ですか?」

「八つ当たりをくらうからだ」

「………」


ユースティス(仮)の問いにシューナッツは渋い顔をする。神官達が煩いのはユースティスは機嫌が悪いと仕事にならない。それで仕事がスムーズにいかなくなるのを防ぐために八つ当たりとシューナッツに言ったのだ。もちろん八つ当たりもされるので嘘ではない。


「お前や私達が余計なことをしなければ姉上はそうそうな事では怒らない。しかし、お前や私達が余計なことをすれば……まぁ、度合いにもよるが……殺されるだろう」

「まさか、お姉様が…」

「あれならやりかねない。昔、姉上が大切にしていたネックレスが盗まれたんだ。その犯人を探しだした姉上はそのまま惨殺した。それ以来、姉上から物を取り上げること自体が禁忌となったんだ。お前も二の舞になりたくないなら、心しておけ」

「わ、わかりましたわ!」

「……………」


シューナッツの話を聞いたシャーリーとユースティス(仮)は顔を青くした。特にシャーリーは真っ青を通り越し真っ白。だが、それに気が付くものはいなかった。




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