女王誕生編9
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その騒ぎは《ヴィオリウム》の庭で起きていた。
「騒がしいですね。レディーたるもの大声で騒ぐとは何事ですか」
「誰よ?私は王女よ。名乗りなさい」
耳障りな声にユースティスが注意をする。王族に迎えられ、偉そうにするユースティス(仮)。頭が無いのはリーリス家の十八番のようだ。
「あら、こんな出来の悪い妹など居たかしら?私は先王アゼリアント・ファルティス・ファラオと王妃メデルセス・シュートルが息女、アイテールです。王位第一継承者ですわ」
「!?」
ユースティスことアイテールを睨み付けるユースティス(仮)に毒を吐く。王妃メデルセス・シュートルはユースティスが生まれる数年前に女児を生んだが、運悪く王妃と女児は亡くなってしまった。その女児が生きていれば姉の1人となっていた。ユースティスはそれを利用したのだ。
「あなた、本当にユーフェミリア様の子なの?ユーフェミリア様の面影もなければお父様の面影もありませんね。それに何より……ユースティスは《ヴィオリウムステラ》様に愛されし神の子です。額に《ヴィオリウムステラ》様の御紋があるはずですわ」
「……」
ユースティスの毒が効かないほど、ユースティス(仮)は姉の存在に動揺していた。嘘が混じっていても気が付かない。
「まぁ、深くは追及しませんが……ここに来たと言うことはそれ相応の対価を払う覚悟は出来ていると言うことですね。王女としての自覚があるならば良いです。今の王家に何もしない役立たずは必要ありませんから」
ユースティスの冷たい視線と次々と追い詰めていく言葉にユースティス(仮)は口を閉じた。
「シューもあなたの帰りを待っていましたわ。行っておあげなさい」
「わ、わかりました…」
ユースティスに追い出されるように《ヴィオリウム》を出ていくユースティス(仮)。それを見届けたユースティスに《ベルモット》のルイーズとエレオノーラがため息をついた。
「よろしいのですか?」
「構わぬさ。後は兄上に任せておけば万事良い」
シューナッツに丸投げしたユースティスであった。