表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/28

海は知っている。世界の始まりも。世界の終りも。

 コンビニを後にして、本田家への帰路につく。海岸線に立ち並ぶ街灯は、じりじりと命を削るように瞬いていた。


「白ってさ、今はサッカーやってないの?」

「やってないよ。」

「じゃあ別の部活やってるの?」

「バイトが忙しいからやってない。」

否定から入るやつは嫌われるって、ネットで見たな。もしかしなくても、今の俺のことじゃね?


「そうなんだ。...最近流行ってる違法な奴はダメだよ?」

「この辺で闇バイト募集する奴いないだろ。儲からないし。」

「それもそうだね。」

これは、確信犯か...。だが、嫌われる勇気ってやつも、ネットで見た。いや、無敵か。ネット語録。


「何のバイトしてるの?」

「本屋のバイト。」

「へー。本屋のバイトか。いいね。知的だね。頭良くなりそうだね。今度遊びに行ってもいい?」

前のめりに食いついてきた真の提案は、別になんてことはない。暇な時間も結構あるし、先輩や店長も温厚な人達ばかりだ。だが、俺は嫌われ者ムーブを二連続でかましてしまっている。何か、ユニークで、会場が沸き上がるようなスペシャルな返答はないものか....。


「来れるもんならきてみんしゃい。」

.....終わったかも。


「...分かった。お店見つけたら参考書一冊、いや。三冊買って。」

助かったと思ったのも束の間。たかられてね?俺。ていうか、参考書って三冊も必要なの?

五千円は飛ぶよな。それは普通に厳しい。だが、これ以上否定するのはまずいか....。仕方ない。

「...。」

俺は渋々頷いた。


「約束だからね。」

「楽しみにしてる。」

俺は「買う」なんて一言も言ってない。首を下に向けただけだ。一人っ子のお前にはわからんだろう!人の狡猾さが!兄に物を強奪される理不尽が!


「絶対見つけてやるからな。首を洗って待ってろよ~。」

なんか、やけに説得力があるんだけど。怖いんですけど。こいつは、同級生なんかじゃなく、死神。俺の人生の介錯人だったのか...。だとしたら、約束を反故にするのは、命にかかわる...⁉

「白ってさ」

「はい⁈」

「あ、やっぱなんてもない。」


 真を驚かせてしまった。話しかけるタイミングを失った真は、沈黙の姿勢を取っている。さっきからずっと真に話題を振ってもらってばかりだったし、そろそろ俺も何か話さなければ。なんかないかなぁ、と波のさざめきに吊られて海を見た。夜の闇を月の光が照らしていた。


「真。」

「ん?」

「今年の夏さ、一緒に海行かない?」

「.....え?」


あ、やばい。だめっぽい。

「う~ん。そっか。私は、別にいいんだけど、今度彼氏に確認してみるね。」

「ん。あぁ。わかった。」

は?彼氏いんの?俺の下手人、俺の死神じゃなかったの?


これ、浮気か?

「でも、あんまり期待しないでほしいな。」

「そっか。まぁ、受験対策してるんだったら忙しいよな。」

まだ夏まで時間があるとはいえ、夏期講習や部活があるだろうし、暇な日が嚙み合うとも限らない。彼氏がいるなら尚更だろう。

「あぁ、違うの。彼氏がちょっと心配症で。」


これ、メンタルヘルス案件ですか?

「そっか。それはまぁ、頑張れ。」

「....なんか勘違いしてるでしょ。」

「いや、全然。束縛きついのかなぁとか、全然思ってない。」

「それが勘違いだって言ってるんだけど。」

真がちょっと怒ってる。図星だったのか、彼氏を馬鹿にされてムカついたのか。一番まずいのは、その両方...。手遅れだったか...。

「きつかったら、誰かに相談するんだよ。お父さんとか、お母さんとか、先生とか。なるべく権力がある人に...」

「ちょっと。」

「ん?」

「さすがにしつこいよ。本当にそんなんじゃないから。」

真は呆れた顔をしていた。このままだと俺は、真に見限られるだろう。それは、普通に辛い。

「そっか。勘違いして悪かった。」

「わかればよろしい。」

真の表情が柔らかくなった。粗相が許されたのだろうか。

「彼氏に聞いてみて、大丈夫そうだったら連絡するね。」

「わかった。」


ほどなくして俺達は、海岸沿いから内陸部の住宅街に入った。少しだけ大通りを歩いて、真は足を止めた。

「この辺でいいかな。私の家すぐそこだし。」

家の位置なんて知られたくないのが普通だ。真の言う通りここで別れるのが正解だろう。

「わかった。」

「家まで付いてこないでよ~。」

「そのやりとりさっきやったじゃん。」

「ダメ押しだよ。後ろからザクっとやられるかもしれないし。」

俺はお前に首を断たれるイメージを持っている。妄想とヒヤリハットで俺に勝てると思うな。


「じゃあ、俺が先に行くよ。あ、海の件は適当で構わないから。」

「参考書の件は適当にしないでね。」


無視した。


ていうかさ。彼氏がメンヘラじゃないのならさ、俺、普通にふられただけじゃね.....。

家に着いた後、両親は何も言わなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ