一緒に出掛けた時にスマホばっかり触ってる人。純粋な疑問なんだけど、マジで何してんの?
なんか遠回りばっかしてる気がするんですよねー。
十三時二分。
私達は近くの公園で休憩していた。外周の木立、塗装の剝がれた遊具とまっさらな砂場、生垣のレッドロビン、アスファルトをくり抜いて作られた花壇には白いデイジーがわずかに咲いている。私たち以外の人は誰も居なかった。
今日はお日柄もよく...は意味が違うんだっけ。まぁ、とにかく気持ちのいい天気で、暑すぎない日差しとそよ風が満腹感で重たい身体をリフレッシュ!って感じにさっぱり癒してくれる。当初の予定では一直線で駅に帰る手筈だったんだけど、高橋君の提案で休憩を挟むことになった。今ではその選択が正解だったと痛感している。
「いやぁ。美味かったっすね。寿司。」
「うん。すごく美味しかった。それにすごく大きかったね。」
漁師丸で提供されたお寿司は、普段見ているお寿司の一回りは大きかった。ネタは長くて分厚くて、シャリはぎっしり詰まっているように見えて、案外ふっくらと軽い食感をしていて驚いた。肝心の味はどうかというと「サイズが大きいと味が落ちる」という先入観があっさり覆るほど美味しかった。ついでに私の中で「とりあえず北海道の海鮮を食え」の信憑性が倍増した。おかげでキャパシティの限界寸前までお寿司を食べてしまったのは、玉に瑕と形容しても許されるだろうか。
ただの過失?はい。おっしゃる通りでございます。
「...おはぎ並み、は流石にいいすぎか。まぁ、とにかくでかくて、もう腹一杯っすね。」
高橋君は左手でお腹をさすっていた。
「私も。もう何も入らない。」
「それは良かった。でも先輩、最初の方かなり遠慮してましたよね。」
「あんなの見たら誰だって驚くでしょ。だって一皿三百円以上のお寿司しかないんだもん。」
「口あんぐりしてましたよ。」
「....それほんと?」
「まじっす。」
「...まじかぁ。」
確かにお寿司の味は最高で、一貫ごとの満足感もすごかった。ただ金額が金額なだけに、食べ始めた当初は思うように注文することが出来ず、迷いに迷って、考えに考えて、ようやく、動揺で震える指でタブレットに触れていた。あとお口あんぐりも追加で...。
「まぁ、俺も鰻の値段見たときは、顎外れるかと思いましたね。一貫で千円超える寿司は、流石に初めて見ました。」
「...あぁ。確かにあれはちょっと、頼めないよね。」
一番高価なネタが鰻だった。タブレットに表示されたイメージ写真から既に尋常ではない存在感を放っていて価格を見た時には思わず、え?と声が漏れ出してしまった。
「あれ、食べたかったですか?」
「う~ん。ちょっとだけね。」
私は特別うなぎが好きなわけではない。ただ、当店自慢の逸品ですと太鼓判を押されてしまったら、無意識に発生する好奇心を抑えることが出来なかった。
「...遠慮しないでよかったんですよ。」
「うんうん。気にしなくて大丈夫。ちゃんと満足したから。」
「そうですか。」
私は鰻を注文しなかったし、最初のうちは注文を躊躇った。でも、心残りはない。私は、しっかりお寿司を楽しむことが出来た。というか、途中からは、若干楽しみ過ぎていた、ような気がする。
「それに千円は充分高級だよ。外食一回、二回はいける金額だからね。」
「確かに。それも、そうですね。」
高橋君は瞳を閉じて、大きく息を吸ってから天を仰ぐように空を見上げた。お腹一杯で眠たいのだろうか。それとも、旅の疲れがまだ残っているのだろうか。
「大丈夫?」
「...あぁ。大丈夫です。気にしないでください。」
彼は目を閉じたままだった。
「飲み物いる?」
「大丈夫です。でも、ありがとうございます。」
「...そっか。」
彼はまだぐったりしたままだ。やはり、まだ疲れが残っているのだろう。こういう時、どうするべきなのだろう。コンビニまで走って、彼の好物でも買ってくるべきだろうか。でも、彼の好物知らないし....
「さて。そろそろ行きますか。」
「うん。」
あれこれ考えていたら休憩の時間が終わってしまった。
パキっ、と首の骨を鳴らした。
「先輩。」
「何。後輩くん?」
「もう何も入らないんじゃなかったでしたっけ?」
「そんなこと言ったっけ?記憶に無いなー。」
右手に持った匙を口へと運ぶ。途端に生クリームのピュアな甘みが口の中に広がって...、最高...。
「太っちゃうよ。先輩。」
「...貴方に心配される謂れはありません。」
「まぁ、それもそっすね。」
もう一度、今度はイチゴを一緒に乗せて....あぁ、最高...。
「それに。このあとは体を動かすんでしょ?」
「まぁ、予定では。」
「じゃあ、何の問題も無いね。」
ここでクレープスティックをひとつまみ。まるで愛用の葉巻を咥えるように....。久しぶりに食べたけどこれ結構美味しいかも。
「遊べそうなところ、いくつか候補があるんですけど大丈夫ですか?」
「私は別に大丈夫だよ?何か問題あるの?」
「...髪が崩れるかもしれません。」
コーンフレークはあんまり好きじゃないんだよね。堅いから。
「気にしないで。それに私、体動かすの好きだから。」
「そういうことなら俺、手加減しませんからね。」
「...それとこれとは話が違うんじゃない?ほら、体格差もあるし。」
ウエハース。サクサク。パクパク。なんちて。
「でも、カロリー消費しないといけないでしょ?」
「これとそれとあれも、話が違うんじゃないかな?」
ん?よくわかんないけど、ピスタチオのところも結構美味しい。どういう味なんだ。これ。わかんな。
「じゃあ、俺が勝ちたいので本気でやります。」
「お手柔らかにね。」
「そのつもりはありませんけど...」
普通に酷くない?
「先輩。」
「何?」
「吐かないでくださいね。」
「まぁ、大丈夫でしょ。このくらい。」
「そうですか。」
これが、最後の一口。あぁ。名残惜しい。
「あとでゲロ袋、買っときます。」
高橋君は、空のパフェグラスとケーキのごみ置き場と化した皿を訝しげに見つめていた。あと、食後の人の前でゲロ言うな。




