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休憩時間を休憩時間として過ごしてる奴は、ほんの一握り。

 7限の直前。歴史の厄介教師、田島の襲来に戦々恐々としながらも各々が好きに過ごしている。スマホをいじる怖いもの知らず、前回の復習を兼ねた小テスト対策に励む勤勉者、今だにバカ騒ぎしている大馬鹿者、絶対に寝ていない居眠り。かく言う俺も、頬杖を付いてぼーっとしている怠け者だが...。(しゅう)は何してっかなぁ...。いつものアイドルゲーか。ランキング上位の報酬で握手券が貰えるとかで、秋は普段からあのゲームに心血を注いでいる。プレイ画面を覗いたことがあるが、実在するアイドルがゲーム画面に表示されてて、違和感が仕事をしまくっていた。あいつのこと、少しは心配してやれよ..。


 濁点交じりの溜息を吐き、顎を持ち上げる。うなじのあたりから微かな痛みを感じる。長時間続けてたらやばそうな、嫌な痛みがする。目の前の景色を眺めれば、白い天井に黒いにょろにょろと斑点。蛍光灯の光は、目の深いところに染み込んでいく。天井の染みでも数えてれば気が紛れるかと思ったが、そんなことはなかった。そもそも天井に染みなんて無かった。ゆっくりと、顎を下ろす。あの時計は遅れてる。

大馬鹿者を除けば、誰もが人形のように大人しくしていた。田島は態度にうるさい。教師を気遣う生徒とは、いかがなものか。まぁ、今に始まったことでもない。なんなら小学生一年生の頃から心当たりがある。結局、肩書きは大事じゃないよなぁ。マジで。


 時計の長針と短針が近づく。あの時計は遅れているから、じきにチャイムが鳴るはずだ。足音も聞こえる。おそらく田島のものだろう。教室もそれに気づいたのか、大馬鹿者すら黙りこくった。足音が止まった。来る。ガラガラガラガラッ、バンッ!!!勢い良く、いや、威勢がいいと言うべきだろうか。火薬が爆ぜるような轟音と共に獄の扉が開いた。

「アぁぁぁぁぁぁぁぁロぉハぁぁぁぁぁぁぁ!」

始まりの鐘が鳴り響いた。教室には殺意の波動が渦巻いていた。



 返事がないのが不服だったのか、馬鹿は退屈そうな顔でこっちに向かってくる。

「やっほ。ギリ間に合った。」

「おー。ないす。それとおかえり。(はく)。結構元気そうじゃん。心配して損したかも。」

さっきまでアイドルゲーに没頭してたじゃんか。噓つくな。

「ただいまー。心配かけてすまんな。ちゃんとお礼するから。また後でね。」

「はいなー。」

秋は授業のモードに切り替えたのだろう。虚無顔になった。顔を取り換えたのかと見紛うほどの早業。こいつも大概だな。まじで。

「ただいまー。(あきら)。」

「....。」

なんとなくむかついたから無視した。

「なに不貞腐れてんだよ。もしかして、もしかしなくても、心配かけちゃったかな?ん?」

ニヤニヤした表情とは裏腹に、若干真剣なその声色が気色悪い。一年近くこいつとつるんでいるが、こういう道化っぽいところは嫌いだ。割と、がちで。

「うっせぇなぁ。死ね。」

親指で首を搔っ切るジェスチャーをする。馬鹿はニヤニヤと、何かを見透かしたような表情だった。

「....そっか。じゃあまた後で。」

「...死ねを無視するな。そこが一番大事なんだから。」

「はいはーい。今から死にますよー。3.2.1.2.3.4.5.6......」

「やかましいわ。さっさと死ね。」

「はーい。今死にましたー。ぐへー。ぴょろぴょろぴょろー。」

両手を顔に添えて指をパタパタさせている。ウーパールーパーじゃねぇんだよ。くそが。

「お前なぁ、ぶち殺すぞ。」

なんかあほらしくなってきた。

「わるいわるい。悪かったって。」

「絶対に許さん。後で覚えてろよー。」

「えぇ。今度なんか奢ってやるからさ。許してよ。サ〇ケェ。」

「誰がサ〇ケだ。馬鹿。まぁ、でも、400gのどでかいステーキでも奢ってくれたなら、許してやってもいいかなー。」

「....許せサ〇ケ。外食は、また今度だ。」

「守銭奴なイ〇チやめろよ。そういう世界線もあったんじゃないかって、なんか辛くなるから。」

「サ〇ケェ!それは俺のスペアリブだぁぁ!!」

「.....やかましいわ。あと誤魔化すな。もう田島も来るし、黙ってろ。」

弟と肉を取り合うイ〇チを想像したら結構ツボだった。素面で良かった。

「...はーい。黙りますよぉ。」


 そう言って白は本当に黙った。田島が教室に着いたのは、それから数分経ってからだった。堂々とした態度で教卓に着いた田島は、去年の時間割と勘違いしていて遅れたとかで、つらつらと言い訳を始めた。この日の授業は、誰も、誰にも気を遣わなかった。

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