この物語の背景(1)この物語の時期における諸国(チベット・ハルハ・オイラト・ダイチン)の概要説明
ここいらで、この物語に登場する国々を紹介しておきましょう。
○ダイチン国。歴史の教科書には「清朝」とか「清国」の名前で登場する国のことです。朝鮮の北方の日本海沿岸から満州平原にかけて住んでいる狩猟採集民族の「女真」族が樹立した政権。初代ヌルハチの時、民族統合にほぼ成功して国の名前をマンンジュ国としました。二代目のホンタイジはさらにモンゴル南部のノヨンたちや、ダイミン国(明朝)が女真族を支配するため万里の長城の東北方に配置していた中国人の駐屯軍を征服して勢力を拡大します。物語にもでてきたリンダン・ハーンの息子エジェイが降伏してきたのをきっかけに、家臣となっていたノヨン達をあつめて「大ハーン」として即位、国号をダイチン国とあらため、自分たちの種族名も「マンジュ」とあらためました。ホンタイジのモンゴル語の称号が「メルゲン・ハーン」です。
○ハルハ。モンゴルの北部(現在のモンゴル国の部分)のノヨンたちの国。
○オイラト。ハルハの西方に位置するイリ河河畔のジュンガル盆地に本拠地をおく遊牧民の国家。現在の世界地図でいうと、中国の「新疆維吾爾自治区」の最北端あたりに本拠地がありました。
○チベット。中国の西方、インドの北方、モンゴルの南方に位置する国。ダイチン国のアムフラン・ハーン(メルゲン・ハーンの孫)のころまで、満洲語でトゥバト、中国語で吐蕃と呼ばれていました。いまチベット国のあたりを現在の世界地図でみると、ほぼ丸ごと中国領になっていて、チベットの国土は西蔵、青海と、四川の西半分などに分割されています。このようなチベットの国土分割をおこなったのはアムフラン・ハーンの息子で、この物語もトゥルバイフの子孫たちが、内輪もめをダイチン国につけこまれ、アムフラン・ハーンの息子につぶされるところで終わりとなります。