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作り話と実話を混ぜた話2

作者: 外郎

一人暮らしを始めた時の体験談のノンフィクションとフィクションを混ぜた話。


就職して一年が経った頃、俺は一人暮らしを始めた。

前の話で自宅で金縛りにあった話をしたが、この新居でも金縛りにあったのでその時の話をしよう。

まず、俺の住んでいた物件は事故物件ではないと不動産屋から聞いた。

なので、幽霊を見たり金縛りに遭うのは俺の体質なんだと思う。


恥ずかしい話だが、俺は金遣いが荒い。

学生の頃、ギャンブル運が非常に良く、アルバイトで貯めたお金はギャンブルに回していた。

20歳とは思えないほどの貯金もあり、とても調子に乗っていたのだと思う。

就職し、ギャンブルは辞めて普通に稼いでいたのだが、学生時代の狂った金銭感覚が治らず、貯金ができなかった。

このままじゃまずいと感じ、自立する為にも一人暮らしを始めようと家を出た。

弟も大学に進学し、一人部屋がなかったので俺がいなくなるのも、家族にとってもちょうどよかったと思う。

不動産屋に行き、とにかく安い物件を教えて欲しいと頼んだ。

正直な話、この頃は心霊現象は怖いだけで実害がなかったから幽霊関係の事故物件ならそれでもいいと伝えた。

そしたら、不動産屋から隣の県になるが4LDKで家賃4万の物件を紹介された。

今となるとその物件は非常に気になるが、あの時は一人暮らしだからそんな広くなくてもいいと断った。

俺はダメ元で駅近で家賃4万の物件がないか聞いてみた。

俺の住んでいた辺りは、交通の便利さからか、駅近は家賃7万くらいが基本なのは知っていた。


「ないっすよねー」


ヘラヘラしながらそんな事を言ってそろそろ真面目に探すかと思った時、不動産屋から「ありますよ」と言われ仰天したのを覚えている。


「え?ここら辺でですか?」


「はい、駅から5分くらいですね。

今から見てみますか?」


「......やっぱ事故物件ですか?」


「いやいやいや、違いますよ。

前に大家さんの娘様が住んでいた物件です」


だったらその大家の娘はなぜ引っ越したんだ?と聞くほど野暮ではない。

もともと事故物件上等だったので俺にとっても渡りに船だった。


「それではご案内いたします」


俺は不動産屋と共にアパートに向かった。

部屋の大きさは8畳の1K、ユニットバスでエアコン、冷蔵庫付き。

角部屋でベランダも付いている。

そして、ゴミ捨て場がアパートの目の前にあり、徒歩5分圏内に駅・コンビニ・薬局があった。


「本当にここの家賃4万なの?」


「はい」


お札でも探したろか?などと思ったがそんな事はせずに俺は即決した。

この時の俺はまだギャンブルで調子に乗っていた時代を覚えていた。

なので、根拠など全く無かったが引っ越し前に一人暮らしの軍資金を増やそうと思いスロットに行った。

なぜか勝つのが当然だと思っていたのだ。

そして、言うのが恥ずかしくなるほどスってしまった。

情けない気持ちで不動産屋に電話し、元々の予算額がなくなってしまったのでキャンセルしたいと謝罪の電話を入れたのだ。

この時、奇妙な事を言われた。


「申し訳ありません...あと5万くらいしか所持金がないので引越しの話は無かった事に...」


恥ずかしさと情けなさで声が涙声だったのを覚えている。


「...あの、お客様、5万円はお支払いできるんですよね?」


「はい...」


「少々お待ちください、また折り返しお電話いたします」


「?」


訳がわからずその場に立ち尽くす事数分、不動産屋から折り返しの電話が掛かってきた。


「お客様、敷金礼金はなしでいいそうです」


「は?」


「なので、月初めに家賃の4万円さえお支払いいただければ明日からでもお住みいただけますがいかがいたしましょうか?」


「......」


確かこんな話をした記憶がある。

正確に何と言われたかは忘れたが俺は住み始めた時、所持金は10万なかったのは確かで、4万しか払わなかったのも確かだ。

深く考えるのに疲れていたんだと思う。

じゃあそれでと何も考えずに俺の一人暮らしは始まった。

もともと、掃除と料理は好きだったので家事の面は苦労しなかった。

また、あのスロットでの大敗から非常に反省しギャンブルは完全に辞めた。

怪しい話で住み始めたこの物件だが部屋にお札もなければ金縛りにも遭わなかった......最初は。


住み始めて3ヶ月ほど経ったある日。


「......ぁ?」


久々の金縛り、しかも、引っ越してから初の金縛りだ。

大丈夫、なんとなく怖いだけで我慢してたら終わる。

そう言い聞かせ、目を閉じると、何かが部屋に入ってくる気配がした。

黒い色の男だ。

俺の勝手な解釈だが黒っぽい色のやつの時は怖いやつの時だ。

そいつは、のそのそと部屋に入り、なんかぐるぐると歩き回っている。

やべぇ、怖い...こいつ、本当に幽霊だよな?

俺、家の鍵閉めたっけ?

こいつ、多分だけど外から来た奴だよな?

人間じゃない...と思う。

だって、体が動かないし。声が出せないし。

俺が心霊現象にあう時は8割は寝ている時だけ、それも、金縛りの時だけ。

だからこいつは幽霊、実害はない。

そんな事を考えながら早く金縛りが解けないかを待っていると、のそのそと男が近づいてきた。

真上から見られている。


「......」


今までの奴はとにかく声を出そうと呻いているとどこかに消えた。

だけど、こいつには起きていることがバレちゃやばい気がした。

必死に目を閉じて寝たふりをする。

強盗に遭遇した時も寝たふりを続けた方が無事な確率が高いらしい。

とにかく俺は早くいなくなれと願いながら狸寝入りを続けた。

この恐怖の間、初めて俺は今1人なんだと自覚した。

一人暮らしで幽霊に会うのは初めてだったが明らかにいつもより怖いぞ。

不安もあるからから?

とにかく早く消えてくれと思った時。


「起きろよぉぉ」


耳元で野太い声で叫ばれた。

何が金縛りには慣れただ。アホめ。

俺はあまりの恐怖で初めて金縛りに遭った時と同じように声にならない声で謝り続けた。

最終的にはとにかく無理やり体を動かそうともがいていた。

金縛りから解放されたと同時に俺は外に逃げ出した。


「......マジ?」


「うん、マジ」


あの金縛りから一年ほど経った後、今俺は同じ部屋で友達と飯を食っていた。

俺はタバコは吸うが酒は飲めないので1人だけシラフだった。

いい感じに酔った友人達が面白い話をしろと言うので話たのだ。

みんな気味悪そうにしている。


「お前怖くないのか?」


「いや、怖いよ?でも、実害ないし」


俺にとっての実害は肉体的ダメージのことだ。

これは体質と諦めているから肉体的ダメージがなければそれでいい。

偏頭痛や腰痛よりマシだ。


「俺もう帰る」


「まぁ待てよ。起きてる時は出ないから平気だよ」


「いや、んな話聞いたらもうこの部屋いたくないよ」


「じゃあカラオケでも行くか?」


「......行くか」


結局俺はこの家に4年住んだ。

実はこの家から退去する時もトラブルがあったがもしかしてそれが幽霊の原因かもと今頃思い始める。

その話は長くなるのでまたいずれ話そうと思う。

ちなみにそのトラブルが原因で今その部屋は一度解体されて作り直したらしい。

俺が原因ではないので修理費は1円も払ってない。

この話を書いていて記憶を呼び覚ましていた時、一つ不可解な事を思い出した。

このアパートは三階建の9部屋あったのだが4年も住んでいてアパートで人に会ったことは一度もなかった。

あのアパートは正月地元に帰省した時行ってみようと思う。

解体したかはフィクションだけど俺が退去する時人が住める状態じゃないのはノンフィクション

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