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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ルーン文字?いいえ、カーン文字です~前世の記憶を取り戻した俺は漢字で無双する~

 その日、俺は前世の記憶を取り戻した。


 地球と呼ばれる星の日本という国。そこには漢字という文字があった。

 今俺がいる世界にもそれと似た文字がある。


 ――カーン文字。


 それは日本の小説などでたまに出てくる不思議な力を持ったルーン文字と同等のもの。

 武具や魔法などに刻まれたそれは特別な力を齎す。


「なぁ、親友」

「なんでぇ気持ちわりぃ。俺とお前がいつ親友になったんだよ?」


 贔屓にしている武器屋の店主に話し掛ける。個人でやっている店だ。

 腕はあまり良くない。普通だ。ただ、俺と同じ歳で若い。まだ二十歳なので将来性を見込んでのことだ。

 父親を亡くして苦労してるみたいだから少しでも力になれればと普段から利用している。


「今からかな? それより、試しにこれで刻んでくれないか?」

「なんだこれは?」


 渡した紙に書かれた文字。『斬鉄剣』という、親友でも見たことのないカーン文字だ。

 いや、この世界の人間は俺以外見たことないんじゃないか。そのはずだ。俺もこの世界で初めて書いた。


「俺も良くわかんねぇ。何となく頭に浮かんだ」

「はぁ? お前、カーン文字に詳しかったか?」

「いいや? 俺も良くわかんねぇんだけどよ、なんか強そうじゃね?」

「強そうっつーか、難しい文字だな。これで何ができんだよ?」

「だからわかんねんだって。試しに刻んでくれよ。俺たち、親友だろ?」


 記憶はあるが実感がない。俺の頭がおかしくなった可能性もある。

 ここは一つ、親友になったばかりのこいつの力を借りて確かめようと思った。ただそれだけだ。


「お前には感謝してる。けど一つ言わせてくれ。気持ちわりぃ」

「それしか言えねーのかよ」

「お前も親友ばっかり言ってんじゃねぇよ」


 親友は思ったよりも頑固者だ。どうすれば刻んでくれるのか。


「そんなに嫌か?」

「別に嫌じゃねぇけどよ」

「そうか。なら俺たちはもう親友だな!」

「そっちじゃねーよ! 刻んでやるよ。二日くらい時間くれ」

「時間かかりすぎだろ。客なんてこねーんだから今日やってくれよ」

「いい加減殴るぞ。ったく、こんだけ難しい文字、そう気安く刻めるかよ。練習に時間かかんだよ」

「なら仕方ねーな。ほら、こいつに刻んどいてくれ」

「お前、自分の剣をそう簡単に実験材料にしていいのかよ。まずは安いモンに刻んで確かめるのが普通だろ」

「まぁいいじゃねぇか。楽しみにしてるからよ。じゃぁな」


 まだ何かを言っている親友を背にして店を出た。


「いやぁ、なんとか交渉成立して良かった。二日後が楽しみだわ」


 そう呟きながら宿に戻った。





「おーっす、出来てるか?」

「……」

「え? もしかしてまだ?」

「いやお前、夕方に頼んどいて二日後の朝方に取りに来るか普通」


 待ち切れなくて朝方に親友の下へやって来た。


「だって仕事しなきゃ食っていけねーじゃん。昨日休んで今日も休めるかよ」


 親友はなぜか大きな溜息をついた。客に対して何たる態度か。

 いや、この場合親友だからセーフか?


「まぁいい。少し練習したら本番に入る。少し待っとけ」


 奥の鍛冶場へと入っていく親友。その後をついていく。


「……なんでお前まで入ってくんだよ」

「いや、暇だし」

「はぁ。もういい、そこらで見とけ」


 また溜息。こいつ、ストレス溜まってんな?


「結構練習してたんだな」


 そこらに鉄塊が転がっている。斬鉄剣と刻もうとして失敗した形跡がゴロゴロと散乱していた。


「暇ならそこらの鉄くず集めといてくれや」

「客に働かせんじゃねぇよ」


 渋々片付けている間に親友は火を起こしている。中々時間かかるんだな。




「ほら、完成だ」

「ほぇ? あ、あぁ。もう出来たのか」

「お前ずっと寝てただけじゃねーか」


 いつの間にか寝てたらしい。だって眠かったんだから仕方ねーだろ。


「さすが親友だな! 仕事が早い!」

「もう昼過ぎてるけどな」


 何はともあれ、これで俺の記憶の実証ができるってわけだ。


「ちょっとそこのゴミ、借りるぜ」


 練習に使ってただろう鉄塊を斬らせてもらうぜ?


「それはゴミじゃねぇよ」

「まぁ見てろって」


 俺はゴミに向かって軽く剣を振り下ろす。するとまるでバターでも切るかのようにスパッと二つに分かれた。


「どうよ?」

「……お前、まじかよ。それなんて書いてるかわかんのか?」

「超つえーって書いてる」

「ふざけてんのか」

「まぁまぁ。次はこれで刻んでくれよ」





 そうして数々のカーン文字を刻み、俺の装備は充実していった。

 これまではチマチマとした護衛などで食いつないでいた俺だが、傭兵団に所属して戦果を挙げていった。


「おらおら、死にたくねぇやつは下がってろ」


 腰から剣を引き抜き、一閃――。

 目の前の敵は全員、上半身と下半身に分かれた。

 剣に刻まれたカーン文字。『伸縮自在』『一刀両断』『金剛不壊』の三つ。

 どんな物でも真っ二つにするその一撃は城壁をも切り裂いた。


「撤退ー!! 撤退ー!!」


 銅鑼の合図と共に城壁内に残った敵兵は尻尾を巻いて逃げていく。俺が参加する戦争はいつもこんな感じだ。


 ――常勝不敗。


 敗北を知りたい。

 防具に刻まれたカーン文字のお陰で護りも鉄壁だ。

 それに簡単な魔法なら使える。そこにカーン文字を刻めばどんな低級魔法も最強魔法に早変わりだ。

 次は不老不死でも刻んじゃおうかな? 日本って便利な言葉がいっぱいあって夢が広がるわ。




 そうして彼はいつしかこう呼ばれるようになった。

 両断の悪魔と――。

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