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ドボンッと大きな音を立てて触れた水の匂いと傷に染みる塩っけでここが海とオレンジは気づきました。朧げながらも、これだけ血を流したら匂いでサメがやってくる。
ノアにもう一度会いたい。そう思うとオレンジの喉から声が出ました。それで力尽きてノアは海底に沈んでいきました。
目を開けると目の前にあったのは懐かしい鮮やかな赤や青、黄色の尾びれでした。そして尾びれの持ち主たちはオレンジに語りかけます。その声を知っています。
それはオレンジの群れの人魚でした。
オレンジの群れの人魚はオレンジに興味津々です。ずうっと前に行方が分からなくなって死んだと思っていた小さなオレンジ色の尾びれの人魚が帰ってきたのですから。そして、海に帰ってきたオレンジは前と変わっていました。王子様に与えられていた食べ物がよかったのか、オレンジは群れの中でも大きな人魚になっていたのです。
しかし、オレンジは陸のことを話さないので人魚たちの間ではオレンジは群れを出て大冒険をして最後は人間に捕まって命からがら逃げてきたということになりました。
オレンジは同族たちにどう思われているかも知らずに陸のことを思っていました。
人間は怖い、もう海面には近づかない。ただノアや、あのお屋敷の人たちはどうなったのだろうか。