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「オレンジ、明後日には帰ってくるからそれまで元気にいてね」
昨日ひどいことをしたノアの手がプールから出たオレンジの頭を撫でます。いつもと変わらない優しい手つき、しかし、その顔はすごく、疲れているように見えました。
「お土産、買ってくるから!」
そう言って遠くなるノアの背中をオレンジは見送ります。
どうしてノアはあんなことをしたんだろう。
明後日、ノアが帰ってきたらまた触りに来るだろうか。
そう思いながらプールの底で寝転んでいた時です。
「おやめください、大臣様!オレンジさんはノア様の!」
「人魚なんざにのめり込んでいるから!王子は結婚できないのだろうが!」
「やめてください!オレンジさんは」
「ええい。鬱陶しい!」
執事長と誰かがプールの外で言い争っています。
それにバタバタと誰か沢山の人の足音がプールを囲います。なんだと思いプールから顔を出しました。
「オレンジさん、ダメ!」
「人魚を捕らえよ!」
網の棘が全身に刺さります。暴れるオレンジ。
オレンジの目に入ったのはあのギラギラの男と知らない人間沢山。それに囲まれてぼろぼろになった執事長をはじめとする屋敷の使用人たち。
何があったの。思わず、オレンジは手を伸ばします。しかしギラギラの男はその手を蹴ります。
痛がるオレンジはそのまま地面に引きずられていきます。
オレンジを引きずった後には鱗と血が混ざった線ができていました。
それから、オレンジは何処かわからなくなるまで引きずられ、痛いのもわからなくなった時、ギラギラの男はオレンジに言いました。
「人魚、お前が勝手に陸に上がったのが悪い。お前が陸に上がったから、全部悪い、お前が勝手に網に掛かって死んだんだ」
そう言ってオレンジを網に包んだままどこか高いところから落としました。