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13-15

 鬼も、九尾がいなくなったことで困惑していた。

 周りを見て、九尾を探す。その際、周りに意識を集中している百目が視界に入った。


 すぐに振り向き、走り出す。

 百目は気づかずに、集中していた。


 鴉天狗が舌打ちを零しながら百目へと向かうが、ゾクッと冷たい空気が流れ込み、体が動かなくなった。


 この空気は、鬼からでは無い。

 どこか、また違うナニカから流れてきている。


 鬼は気づかず、今も百目に走っていた。

 早く助けに入らなければ、百目が危ない。

 でも、体は、言うことを聞かない。


 早く、早く!!


 鴉天狗が一人焦っていると、鬼が急に動きを止めた。

 理由は、背後に突如現れた黒い靄。


 そこから伸びるのは、手。鬼の肩を掴み、動きを止めている。


 靄から姿を現したのは、消えたと思われていた九尾だった。


「百目、確認は済んだか?」


 顔を下げたまま、九尾が当たり前のように問いかける。

 百目も、当たり前のように顔を上げ、頷いた。


「はい」


 瞬間、九尾は鬼と共に姿を消した。

 突然のことで理解が遅れた鴉天狗は、ハッとなり、片膝をつき休憩している百目に近づいた。


「九尾様は、鬼と共にあやかしの世界へ?」


「行かれました。さすがに、一回ではいけないため、途中人気のない場所を経由しておりますが」


 百目は、九尾に人気のない場所を直接頭に伝えていた。

 それを感じ取った九尾は、鬼に殴られる前に、土煙に紛れ姿を闇の中へと姿を消していた。


「さぁ、我々も行きましょう」


「大丈夫なのか?」


 動く度に、百目の腹部、肩、腕などから血が流れ落ちる。

 それを懸念しての言葉だったが、百目には無用だった。


 もう、誰が止めても百目は聞かない。

 そう思わせるような視線に、鴉天狗はため息を吐いた。


「わかった」


 ※


 九尾は、鬼を抱え途中、百目が見つけた人が全くいない町や、森。道を経由して、何とか神社までたどり着く。


 だが、そこで鬼が暴れ九尾をぶっ飛ばす。

 神社を囲う木に体をぶつけ、地面に落ちた。


「ゴホッ! ゴホッ! あともう少しだというのに…………」


 周りを見ていると鬼が地面を抉り、突っ込んでくる。

 すぐさま、横に避ける。ガンッと金棒が木を殴り、折れてしまった。


「これ以上、人間世界に被害は出したくないというのに……」


 倒れた木を見て、呟く。

 狐火を放つが、鬼は簡単に金棒で叩きつけかき消した。


「普通は、ワシの狐火は殴っただけでは消せんのだけれどのぉ~」


 乾いた笑みを浮かべると、何かに気づき空を見た。

 視線が逸れたため、鬼は本能で好機だと思い、咆哮を上げ駆けだした。


 金棒を振り上げ、地面を抉り走る。

 だが、九尾は避ける事はせず、空を見続けていた。


 あと、もう少し。数秒で九尾に金棒が届く。

 そんな時、九尾の口元がニヤリと横に引き延ばされた。


 鬼は気づかずに、金棒を九尾に叩きつける。

 刹那、台風が神社全体を巻き込むように引き起こされた。


 鬼は、突如強い風が吹き荒れ、叫ぶ。

 なぜか、鬼の身体に傷がどんどん付き、雨で視界が塞がれた。


 顔を抑えていた九尾は、「たはは……」と、肩を落としてしまった。


「これが、神の力。天候を操るなど造作もない、か」


 上を見ると、チガヤが笑みを浮かべ降りてきた。

 肌には切り傷がついており、頭からは血が流れている。


 無傷ではないが、それでも元気そうな姿に九尾はほっと胸をなでおろした。


「今は、男性の姿なのだな」


「やはり、こちらの方が動きやしですしね」


 吹き荒れる風で、周りの木が傾く。

 折れる一歩手前。ここまで災害を起こして大丈夫なのか、九尾が逆に心配してしまう。


 だが、これが神の力。

 本堂の周りだけは、風邪も雨も吹き荒れていない。


 今にも崩れそうな建物には、被害がないように考えての力発動だったらしいなと、九尾は頭をガリガリと掻いた。


「九尾は、少々痛い目を見たらしいですね」


「まぁな。鬼の封印が解かれるとは思っておらず、流石に油断したぞ」


 コキッ、コキッと首を鳴らし、九尾がチガヤの前に出る。


「時間稼ぎ、感謝するぞ、チガヤ」


「こんなことで役に立てるのなら良いですよ。鬼を殺す事も出来ますが、いかがいたしますか?」


 余裕そうに言うチガヤを横目に、九尾は横に首を振った。


「いや、鬼は殺されると災いをまき散らすと聞く。それで、また新たな鬼を作り出す。 人間世界にそんなもんをまき散らすわけにはいかんじゃろう」


「あやかしの世界なら大丈夫と言いたいのですか?」


 九尾は質問に頷く。

 流石に心配となり、チガヤは眉を下げた。


「安心せい。あやかしの力はこんなものではない。鬼など我ら九尾の名のもとに、また封印してやるぞい」


 白い歯を見せ、目をかっぴらげ笑う九尾を見て、チガヤは息を飲んだ。

 体に悪寒が走り、腕には鳥肌が立つ。


 今、チガヤは九尾を畏れた。

 人間の神と言えど、九尾を敵に回してはいけない。そう思うのと同時に、チガヤは考えた。


 ――――九尾と、本気で戦ってみたい。


 そんな事は口が裂けても言えないと首を横に振り、九尾の後ろに下がる。

 台風に慣れてきた鬼は、やっと地面を踏みしめ九尾を見た。


 距離があると思い油断していた鬼は、眼前まで近づいていた九尾に金棒を振り上げた。

 だが、先に九尾が鬼の方に触れる。


 瞬間、二人の姿は忽然と姿を消した。

ここまで読んで下さりありがとうございます!

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