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13-14

「百目! しっかりするのだ、百目!!」


 鴉天狗が何度も名前を呼ぶと、百目の瞼がかすかに動く。


「百目、良かった。大丈夫か?」


「鴉天狗さん……。す、すいません! 今すぐに──っ!!」


 目を開けると、最初は何が起きたのか理解出来ず、ぼぉっとしていたが、すぐに意識が覚醒し状況を思い出した。


 すぐさま動き出そうとするが、痛みで顔を歪ませ唸る。


「無理やり動かん方がいい。出血が酷くなるぞ」


 今は、貫通した木材が血を止めている為、出血は少ない。

 だが、それを抜くと、大量に流れ出血多量となってしまう恐れがある。


「……今は、どういう状況ですか」


「九尾様が鬼を一人で引き付けてくださっている。だが、それも時間の問題。私は、九尾様の応援に入る。百目は、鬼をあやかしの世界に送り込むためのルートを見つけてくれ」


 それだけを伝えると鴉天狗は立ち上がり、錫杖を鳴らした。


 九尾は、片腕が使えなくなり、限界が近い。

 その様子を見ると、鴉天狗の空気が変わる。


 辺りに冷たい空気が流れ、風が不自然に吹く。

 百目の腕に鳥肌が立ち、一粒の汗を簸たいから流した。


「…………九尾様を、お願いします」


「あぁ」


 百目は鴉天狗の豹変に、これ以上の声をかけられなかった。


「怒っていますね、鴉天狗さん。私も、怒っていますよ」


 呟くと、グググッと、体を無理やり起こす。

 血が飛び出し、痛みが走る。口からも血が溢れ、「ゴホッ」と、苦し気な声を出した。


 それでも動き、瓦礫を払い木材を引き抜く。

 血が大量に流れ、地面が赤く染まる。


 手で何とか抑えるが、意味は無い。

 体にも力が入らず、膝を突いてしまった。


 動くのもやっとな状態だが、自分の体など一切気にする様子を見せない百目は、右目を隠していた前髪を上げ、閉じていた瞳を開いた。


「――――あやかし世界への道、最短のルート」


 呟きながら、体中にある瞳を開き、探り始めた。


 ・

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 九尾は、片手が使えなくなり、戦いにくく苦しげな表情を浮かべた。


 大きく振りかぶられる金棒は簡単に避けられる。

 だが、人間世界に被害を出さないようにとなると、どうしても動きが制限されてしまう、思ったように動けない。


 トンッと、建物の壁に背中をぶつける。

 目の前には、迫る金棒。避ける訳にはいかない。


 折れていない方の左腕で受け止めようとしたが、間に錫杖が入り込んだ。


「っ! 鴉天狗か!」


 ガキンと金属がぶつかる音が響き、鴉天狗は金棒の軌道を変えた。


「遅くなってしまい申し訳ありません」


 二人は、ひとまず鬼から距離を取った。

 すぐに百目の容態を確認する。


 血が、百目の近くで広がっている。

 今すぐにでも回復させてあげたい。だが、鬼が動き始めてしまったため、百目に近づくことすら出来なくなってしまった。


 振り上げられた金棒を避け、地面に足を突けると狐火を放ち鬼を燃やす。

 だが、すぐに金棒を振り回し、鎮火させられた。


 今度は鴉天狗が鬼の背後に回った。

 錫杖を振りまわし、風を引き起こす。


 竜巻になり、鬼へと襲い掛かる。

 周りを巻き込まないようにしている為、小さい。それでも、鬼を抑え込めていた。


 九尾が鬼の後ろへと回り込むと、狐の尾を鬼の腹部へと突き刺した。

 だが、鬼の身体が固すぎて、少し傷ついただけで終わる。


「ちっ!」


 今度は四方から狐の尾を伸ばす。

 鬼は竜巻を押し返し、四方から伸びる尾の一本を掴んだ


「しまった――――ぐっ!」


 尾を引っ張られ、地面に叩きつけられる。

 すぐに手を離し、鬼が金棒を振り上げた。


 地面に倒れ込む九尾に向けて金棒を勢いよく叩きつけた。

 ドゴンと、大きな音と共に、土煙が舞い上がる。


「九尾様!!!」


 鴉天狗が叫ぶが、返事はない。

 鬼は、今もなお金棒を九尾に向けて叩きつける。


 ドゴン、ドゴンと、何度も何度も叩きつけられる。

 土煙か舞い上がり、九尾の姿を確認できない。


 どうして反撃しないのか。反撃できないのか。

 気を失ったのか、まさか、死んでしまったのか。


 鴉天狗は、そのような無駄な思考を全て頭の中から弾き出し、錫杖を強く握った。


「それ以上は許さぬぞ!」


 鴉天狗が錫杖を鳴らし、空を飛ぶ。

 妖力を高め、風を集め始めた。


 先程より大きな竜巻が作り上げられる。

 周りの建物より高く伸びる竜巻。それを複数作られ、周りの建物がガタガタと音を鳴らす。


 今にも竜巻によって崩れてしまいそうな建物を気にせず、鴉天狗は錫杖を振り上げた。


 赤い瞳に映るのは、鬼ただ一人。

 自身の主である九尾を傷つけているのだ、頭に血が上るのは仕方がない。


「これが、我々の怒りだ」


 錫杖を振り下げた。

 竜巻が動き出す。だが、それより先に、何故か鬼が動きを止めた。


「っ、な、なんだ?」


 異変に気付き、鴉天狗は動きを止めた。

 目を細め、下を凝視する。


「――――九尾様、どこに?」


 金棒で殴られ続けていたと思われていた九尾の姿が、いつの間にか消えていた。

ここまで読んで下さりありがとうございます!

出来れば次回も読んでいただけると嬉しいです!


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よろしくお願いします(*・ω・)*_ _)ペコリ

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