13-4
九尾は今、自室でいびきをかき、お腹を出して眠っていた。
今はお昼頃。あやかしであれど、起きている時間帯。
外は明るく、陽光が注ぐ中、廊下が何故か騒がしい。
パタパタと、女中だけではなく、屋敷に住まうあやかし全員が走り回っていた。
さすがに気配と音がうるさいため、九尾は膨らませていた鼻提灯を割り、目を覚ました。
体を起こすと同時に、九尾の部屋の襖がバタン! と、大きな音を立て開かれた。
「九尾様! あっ、起きられていたのですね」
「ふわぁぁあ……。今しがた起きたところじゃ。何があった、百々目鬼よ」
まだ寝ぼけている九尾に近付き、襖を開いた百々目鬼は隣に座り、早い口調で状況を説明した。
「理由は不明なのですが、屋敷内に猫が大量発生しておりまして。今も、屋敷に侵入した猫を総出で捕まえております」
「…………ね、こ?」
「はい、猫です」
「なぜ、猫?」
「原因は今だわかりません。皆、猫を捕まえることに必死なので」
「そうか。なら、まずは猫を捕まえるところからだな」
言いながら再度欠伸を零し、九尾は立ち上がる。
服を着替えようとしたところで、百々目鬼が「着換えるなら先に言ってください!」と、廊下に飛び出しながら叫んだ。
「うるさいのぉ…………」
肩を落としつつ、九尾は着換え廊下に出た。
百々目鬼が赤い顔を抑えながら待機しており、しっかりと着替えた九尾を確認し、安堵の息を漏らした。
「では、捕まえに行くか」
「よろしくお願いします」
九尾が首と手を鳴らし、ニヤリと笑う。
刹那、姿が消えた。
屋敷内には、猫が沢山走り回っている。
力のないあやかしも、力のあるあやかしも。殺さないように捕まえようとすると、どうしてもうまくいかない。
猫の動きは俊敏。しかも、反射神経も鋭く、体をうまく捻り伸びてくる手から逃げる。
あやかし達が困り果てていた時、次々と猫の数が減り始めた。
「よっ! ほい!!」
予め準備していた檻に、猫が溜まっていく姿を見て、あやかし達は安堵の息を吐いた。
「九尾様だ!」
目で追えないくらいのスピードで、九尾が走り回る猫達を次から次へと捕まえる。
最後の一匹を捕まえ、九尾は庭で立ち止まった。
左手には、二匹の猫。右手には、猫が体を伸ばし、ダラーンと静かに捕まっていた。
「ふむ。なぜ、こんなに猫が入り込んでいるのだ?」
疑問を抱きながら屋敷の玄関へと歩く。
そこに檻が準備されており、数十匹はいる猫が「にゃーにゃー」と鳴き声を上げていた。
一匹二匹なら可愛い鳴き声なのだが、数十匹ともなると、うるさくて仕方がない。
周りにいるあやかしは耳を塞ぎ、歩いて来る九尾を見つけ、助けを求めた。
「「「「九尾様ぁぁぁぁあああ」」」」
「はい、状況説明。小豆洗い、詳細を教えてもらえぬか?」
泣きながら縋りついて来るあやかしを落ち着かせ、九尾は一番冷静な小豆洗いに問いかけた。
今も、シャコシャコと、ざるの上で小豆を洗っている。見た目は、小さいおじいちゃん。
呼ばれた小豆洗いは、顔を上げ思い出すように空を見た。
「あれは、ワシがまだ小豆を洗っていた時だった」
「…………ほう」
九尾は「聞く奴を間違えた」と思いながらも、小豆洗いがせっかく思い出し話してくれるようになったため、時間はかかりそうだが聞くことにした。
「ワシが朝方、庭の池で小豆を洗っておると、どこからか猫の鳴き声が聞こえたのですよ」
「ほうほう」
「いつものことだなと思いながら放置していると、徐々にその鳴き声は大きくなってきました」
「ほう」
「いつものことだと思い放置していると、猫が大量に庭から侵入。それも、いつものことだと思い放置していると――……」
「いつものことではないじゃろうが!!」
流石に我慢できなくなった九尾は、小豆洗いの頭にげんこつを落とした。
小豆に突っ伏してしまった小豆洗いを無視し、九尾は頭を抱える。
「これは、完全に猫又家族が絡んでおるのぉ」
「猫又家族と言いますと、猫花家でしょうか?」
百々目鬼が聞くと、九尾は頷いた。
「猫又と言えばそこじゃろうなぁ。前から良くは思われていないことはわかっておったが、ここまで大きなことをしでかしてくるとは思わなんだ……」
うーんと、腕を組み九尾は悩む。
「…………人間世界にも目を向けておるようだし、今日にでも動くかのぉ」
ニヤリと笑い、九尾は猫の檻を一つ持ち上げた。
「小豆洗い、ぬしも手伝え。この猫を野生に返すぞ」
「…………あれは、ワシがまだ若い頃」
「早くしろ」
またげんこつを落された小豆洗いは、うめき声を上げながら小豆の入ったざるを頭に乗せ、猫の檻を両手で持ち九尾の後ろをついて行った。
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