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13-3

 九尾は、チガヤの言葉が忘れられず、人間の世界へと来ていた。


 街を一望できる山の頂上、一本の木の枝に座り、酒を楽しんでいる九尾は、目を細め難しい顔を浮かべている。


「…………あやかしの世界程ではないが、やはり街から離れ自然に囲まれている場所は、人間世界でも空気が綺麗じゃな」


 口ではマイペースにそんなことを言っているが、表情は固い。


「あやかしは、人間世界に関与してはいけない。それは、人間も同じ。あやかしを勝手に祓ってはいけない」


 チガヤと交わした約束。その約束のおかげで、今まで人間とあやかしが争いなく過ごせていた。


 それを破れば、お互いの長はなにかしらの罰を受けなければならない。


 九尾は、人間が好きで、人間世界が好き。


 罰を受けたくない気持ちもあるが、人間が自分の管理不足のせいで被害に遭う光景を見たくはないと、強く思っていた。


「…………猫又の気配が強いな。何を企んでおるんじゃ……。まぁ、悪いことをすればすぐに分かるか」


 少しでもあやかしが悪い気を起こそうとすれば流れてくる空気と、特有の気配でわかる。


 今までも、その度に出向き、言い聞かせて来た。


 言葉で通じない者は、力でひれ伏すなども行ってきた。

 今回も、いつも通りに行うつもり。だが、数が多すぎるのが難点。


 そこで、九尾はある人物が二人、頭に浮かび名前を呟いた。


「来い、百目、鴉天狗」


「「ハッ!!」」


 百目は、現代で働いているあやかし。

 今は人間に擬態しており、見た目だけでは直ぐにあやかしだと分からない。


 黒い髪で顔の右半分を隠している。

 服は、黒いスーツを着用。革靴を履いており、どこにでもいるサラリーマンのような見た目をしていた。


 鴉天狗は、人間に見られないように森で生活している。

 こちらも、黒い髪に黒を基調とした山伏装束(やまぶきしょうぞく)を身につけている。


 くちばし、鋭い眼光を放っている黒い瞳。

 背中には黒い翼が広がり、片手には錫杖が握られていた。


「いきなり呼んで悪いな。今、人間世界に猫又が大量にいるのは気づいておるか?」


「はい。人間を運んでいる際に何度か見かけております」


「鴉天狗は?」


「私も気づいております。ですが、そこまで気にするほどではないかと思っておりましたが?」


 鴉天狗の言う通り、そこまで気にしなくても問題はない。

 だが、九尾にとって今の猫又の動きは予想ができず、警戒を高めるしか出来ない。


「確かに、今は気にせんでも良い。いつもより多少、警戒を高めてくれと言うことだ」


「理由は?」


「直感だ」


「了解いたしました」


 理由を聞いた鴉天狗は納得できておらず、眉間に深い皺を寄せた。

 了解したと言う百目は、隣で頷かない鴉天狗の腰を突く。


「…………了解しました」


「我慢させて悪いな、鴉天狗。だが、今だけは耐えてくれ。あやかしが人間世界で暴れてしまえば。こちらの立場がなくなってしまうんじゃよ」


「わかっております」


 まだ、納得していないような鴉天狗だが、長の命令は絶対。渋々頷いた。


 眉を下げ、九尾は再度「すまぬな」と謝り、解散させた。


「次は、猫花家の動きでも確認するかのぉ」


 呟いた直後に、九尾は風に乗るように姿を消した。


 ※


 人間世界の神、チガヤは普段、人間の世界を優雅に過ごしていた。


 繁華街のお店を見て回ったり、仕事をしているサラリーマンをビルの窓から覗き込んだり。

 他にも、食べ物を食べ、子供と遊び、人間世界を満喫していた。


 今も公園のベンチに座り、走り回っている子供を眺めていた。


「…………おや?」


 そんな時、人間の子供の中に一人、あやかしの子供が紛れ込んでいることに気づいた。


 見た目は、普通の女の子。

 茶色の髪に黄色の瞳。赤いワンピースを着て、人間の子供と遊んでいた。


 普通に見れば、あやかしだろうと人間だろうと楽しいのなら良し。

 どちらも、悪い事をしなければという思いなので、チガヤは気づかないふりをする。

 だが、目ではどうしても追ってしまう。


 なんのあやかしだろうか、姿を見せないように気をつけなさいねぇ~と考えながらボぉ~としていると、一人の女性が子供に駆け寄った。


 あやかしの子供の母親らしく、汚れてしまった赤いワンピースをハンカチで払い、また、すぐに人間の子供と合流させた。


 しっかりと人間世界に溶け込んでいるなと、チガヤは感心した。

 笑みを浮かべその母親を見ていると、なぜか彼女が振り返った。


 ――――ゾクッ


 チガヤの身体に戦慄が走る。


 女性の目は、子供と同じ黄色。だが、その目は冷たく、鋭い。


 向けられた者は、その視線だけで殺されてしまう。

 それほどまでの殺意に、チガヤは驚愕。だが、慌てる事はせず、その場から動かない。


 少しの間、見られていたかと思うと、すぐに子供へと視線を戻した。


 息すら吐けなかったチガヤは、女性に気づかれないようにゆっくりと止めていた息を吸い、吐いた。


 ――――まさか、あんな視線を私に向けて来るなんて、何を考えているのでしょう、あのあやかしは……。


 考えたが、チガヤはあやかしのことはあやかしが一番わかっていると思い、今日は動かず明日、九尾に声をかけようと決めた。

ここまで読んで下さりありがとうございます!

出来れば次回も読んでいただけると嬉しいです!


出来れば☆やブクマなどを頂けるとモチベにつながります。もし、少しでも面白いと思ってくださったらぜひ、御気軽にポチッとして頂けると嬉しいです!


よろしくお願いします(*・ω・)*_ _)ペコリ

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