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生贄巫女はあやかし旦那様を溺愛します  作者: 桜桃
旦那様と許嫁……?
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12-6

「何を騒いでいるのですか、静稀」


「お母さま!!」


 はぁ、やっと我から離れてくれた。

 屋敷から出て来た女性は、今の猫花家の主、名は確か――――(しずく)様。


 茶髪を後ろでお団子にし、凛々しい立ち居振る舞い。

 藍色を主体とした着物は、金糸雀色を主体としている静稀の着物と対象的だ。


 全体的にまとまりがあり、一つ一つの振る舞いが凛々しく、こっちまで気を引きしめられてしまう。


 ただ、一つだけ浮いているものがある。

 首に付けられている首飾り。

 雫の形をしている首飾りだけは、なぜか浮いているな。


 なんだか、違和感を感じる。


 ────っ?


 な、なんだな、父上を見る目が、ものすごく冷たい気がするのは、我だけだろうか。

 父上は変わらずニコニコと、笑顔を浮かべている。挑発しておるのか?


「手紙に書かれていたので、まさかとは思いましたが……。今回お呼びしたのは七氏様お一人だけだったかと思いますよ。九尾様」


 まぁ、そうだろうなぁ。

 父上がいると、上手く我を落とすことができんからな。


 我は、そのおかげで今回も助かったのだが……。


「人数制限の記載はなかったと思うが? 宴は人数が多い方がよかろうと思ったまでよ」


「相変わらず自分勝手ですね」


「なんだぁ? まさか、ここまで来た七氏の父を追い払うのか? そんな、薄情な事をする家なのか?」


 わざとらしいな、父上よ。

 口元、笑いが隠しきれておらんぞ。


「…………わかりました。お食事は多めに準備しておりますので、ご参加ください」


 渋々だけれど、父上の参加は了承してくれたみたいだ。

 頭を下げ、すぐに背中を向け屋敷の中へと戻ろうとする。


「どうぞ。くれぐれも余計な事はせぬようにお願いいたします」


 屋敷に入る直前、視線だけをこちらに向け、雫様が父上に言い放つ。


 うぅ……。怖い。女性の怒りは、やはり、怖い。

 氷より冷たい視線、殺気。向けられていない我でも鳥肌が立つぞ。


 …………父上は普通に「はーい」と余裕そうに返事をしておる。


 おかしいぞ、殺気を向けられているのは父上のはず。

 なぜ、向けられていない我の方が恐怖心を抱いておるのだ?


「行くぞ、七氏」


 肩に手を置き、父上が我を歩かせる。

 ちゃっかり、静稀から離してくれておるのはありがたい。


 静樹からの視線は痛いが、こればっかりは父上に従おう。


 父上は、いつも飄々としており掴みどころがない。

 時折、何を考えているのかも分からず、こっちが困る。


 だが、そんな父上でも、母上と我のことをしっかりと見て、助けてくれる。

 しかも、さりげなく。相手に気を使わせないようにだ。


 そういう男はモテると聞いた。

 父上が昔、女性にモテていたのは、見た目だけではないということか??


 じ~と父上を見上げながら歩いていると、視線に気づいてしまったのか、父上がこっちを向いた。


「どうした、七氏」


「いえ…………」


 今の考えをそのまま父上に伝えるのは、少々気恥しい。

 顔を逸らすと、首を傾げた父上が「おっ!」と、手を打った。


「そうか、七氏も酒を楽しみにしておるのだな。ワシも酒が何よりも楽しみだ。どんなものが用意されておるのか、涎が出るぞ」


 だらしない顔を浮かべている父上………。

 本当に、あやかしの中の頂点に立つものなのかと疑ってしまう顔だ。


「はぁ……」


「ん? 何をため息を吐いておる?」


「なんでもありません」


 さっきまで父上を尊敬していたというのに、今の言葉で全てが崩れ落ちたぞ。

 これがなければ、心から自慢の父上だと言えるのに……。


 ため息を吐きながら前を歩く二人を着いていく。


 父から目を離し、改めて廊下を見回してみるが、本当に花が好きなんだなと思ってしまう。


 生け花が等間隔で綺麗に飾られているからな。

 何の花だろうか、種類までは分からぬな。


 だが、綺麗だ。

 我の屋敷にも花を飾ろうか。華鈴はきっと、喜んでくれる。


 造花だから匂いも気にせんし、手入れもしなくていいだろう。

 うむ、今度二口女にでも相談してみよう。


 屋敷の廊下は、掃除も行き届いており、さすが猫花家と称賛してしまう。


 そんな事を考えている途中、前を歩く二人が我らに聞こえないように顔を近づかせ、何かを話し合っていた。


 それには父上も気づいているらしく、目を細めている。


(「父上、あれは…………」)


(「ふむ。何かを企んでいるのは明らか。油断するなよ?」)


 やはりか。


 …………好いてくれているのは喜ばしいことだ。


 出来れば、お礼を伝えたい。

 だが、それを言ってしまうと、気持ちを受け入れられたと勘違いしてしまう可能性がある為、何も言えず流す事しかできん。


 心苦しいが、我にはもう何よりも大事な妻、華鈴がおる。

 少しでも勘違いはしてほしくはない。


 少し歩くと、前を歩いていた雫様が足を止めた。


「ここが、今回の宴会場となります」


「そうかそうか。それなら、中へと入ろうかのぉ」


「お待ちください」


 ? 中に入ろうとした父上を止め、何故か我の隣に移動してくる静稀。

 な、なんだ?


「席を事前に決めておりまして、今回は七氏様は静稀の隣となります」


「ほう、それで?」


「今のお召し物では、少々華やかに着飾った静稀の隣に座られるのには抵抗があります。なので、静稀と共にお色直しをお願いします」


 え、それって…………。


「それなら、ワシもついて行こう。こういうのには父親目線も取り入れて――――」


 ────ガシッ


「九尾様は私と共に先に会場入りをお願いします。挨拶などもありますので」


 …………なるほど。

 二人っきりにしたいという訳か。


 お色直しは、あくまで口実か。

 ────っ、静稀が腕に抱き着いて来た。


「行きましょう、七氏様。私が飛びっきりの素敵な着物を選んで差し上げるわ」


「…………わかった」


 父上は心配そうに我を見ているが、豪に入れば郷に従え。ここで逆らえばまた何を言われてしまうかわからん。


 変に動いてもここでは身動きが取れなくなっていくだけ。

 従う所では、従わないとな。


 そのまま、静稀に連れられたため、父上と離れた。

ここまで読んで下さりありがとうございます!

出来れば次回も読んでいただけると嬉しいです!


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よろしくお願いします(*・ω・)*_ _)ペコリ

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