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生贄巫女はあやかし旦那様を溺愛します  作者: 桜桃
旦那様と許嫁……?
67/95

12-5

 七氏達が馬車で移動している時、猫花家では宴の準備が行われていた。


 様々な召使のあやかし達が、猫花家の者達の指示で忙しなく動いている。


 そんな中、猫花家の娘、静稀は自身の部屋で身だしなみを整えていた。


 服装、髪型、化粧などを召使い達に任せ、鏡台の前に座っている。

 すべての準備が整うと、召使いは一歩引いて腰を折った。


「静稀様、素敵ですよ」


「私なのだから当然よ?」


 明るい茶髪を巻き、頭から見えている猫の耳がピクピクと動く。


 黄色の大きなクリンとした目は、キラキラと輝き、口から覗くのは綺麗な白い歯。

 黄色の派手な爪は、光に当たると綺麗に輝き、金糸雀色の着物を華やかに着こなしていた。


 自身の姿を見て、満足げに鼻息を荒くする静稀は、その場でクルクルと回る。


「ふふ、今日の私は今までの私とひと味違うわよ、七氏様。今日は絶対に落としてみせるのだから、覚悟してくださいね」


 なにかを企むような表情を浮かべた静稀の後ろで、一人の召使が近づいた。


 その表情は、強ばっている。緊張し、汗を流していた。


「あ、あの、静稀様。七氏様はもう婚約を――……」


 召使が口にした瞬間、この場の空気が急に冷たくなった。


「────はぁ??」


「ひっ!?」


 鏡を見ていた静稀は、召使の言葉で振り返る。

 蔑むような表情に、ただただ顔を下げ「あ、あの」と、召使は繰り返す。


「七氏様に奥様がいらっしゃるのは存じているわ。まさか、貴方はそんなことを私が知らないと、親切心で教えてくださったのかしら??」


「い、いえ、そんなことは――――キャッ!!」


 ――――ガシッ


 召使の長い髪を鷲掴み、顔を上げさせ目を合わせた。


「貴方の目には、私はどう映るかしら。可愛い? 綺麗? 愛らしい?」


 問いかけられても、召使は動けない。

 周りのあやかし達も怯え、何も言えない。


 自分に矛先が来ないように目をそらす。


「私は、誰よりも可愛いの、美しいの。どうせ、奥さんも私ほどの美貌は持っていないでしょう? しかも、人間。簡単にこの私が奪い取ってやりますわよ!!」


「おーーほっほっほっほっ!!」と、高笑いを上げ、やっと召使の髪から手を離した。


 力が抜け、その場に座り込む召使に、周りのあやかし達が近づき支えた。


「それに、今日は私の誕生会。私が主役よ。絶対に、私が一番目立ってやるわ」


 目を細め、クククッと笑う静稀を見て、周りのあやかし達は恐怖で顔を青くした。


 ※


「ついてしまったか…………」


「覚悟は決まったか?」


「どんなに時間をかけても覚悟が決まらないことを理解しました」


「遠い目を浮かべながら言うでない。さすがに心配になるぞ」


 猫花家の屋敷は、華やかさを意識して設立されていると聞いた。

 そのためか、金に物を言い様々な造花が屋敷に飾られている。


 大きさだけで言うと、我の屋敷と大きく変わらん。

 周りは花に囲まれ、鼻が痛くなる。


 見た目は色とりどりで美しく、キラキラと輝いている。だが、匂いがキツすぎる。

 そこまで嗅覚に自信があるわけではないが、いくらなんでも甘ったるすぎる。


 長居はやはり、したくはないな。


 出入り口で立ち往生していると、屋敷の奥から足音が聞こえ始めた。

 タッタッタッと、軽快な足音。走っているのがわかる。


「父上」


「ここからが本番だ、頑張るのだぞ」


 なっ、我を前に押し出すな!!


 ――――ガラッ!!


「七氏さまぁぁぁぁぁああああ!!!」


 華やかに着飾った静稀が、頬を染め跳び出してきた。

 避ける事も出来たが、ここで避けてしまえば後が怖い。


 し、仕方がない。受け止めるしかないか。


 ────ガシッ


「七氏様! お待ちしておりましたよ!」


 あぁ、甘い、匂いが、ものすごく甘い……。


 何とか受け止めたが、すぐに引き剥がす。

 もちろん、そこで強くでは無い。

 あまり、違和感のない程度に引き剥がした。


「久しいな、猫花家の娘よ」


「いやん!! そ、こ、は、静稀と、呼び捨てにしてくださいよ七氏様」


 語尾にハート付きそうな言い方だな、と、鳥肌が……。

 逃げたいか、もうここまで来たのだ。全てを穏便で終わらせる。


「そこは、まだ時間が欲しいな」


「もう!! 照れ屋さんなんだから」


 人差し指で、我の髪を巻き取り、顔を近づかせてくっ──……


 ────グイッ


 う、後ろに引っ張られた?


「猫花家の娘よ。七氏はもう家庭を持っておる、そのような事は少々遠慮していただこうか」


「っ、父上」


 あ、危なかった。

 あともう少し父上が我を引っ張るのが遅ければ、キスされていた。


 安堵の息を吐きたいところではあるが、明らかに不機嫌になってしまったな、静稀よ。

 父上に冷たい視線を送っている。


「私達の邪魔をしないでくださいますか? 今は、親が出てきていい場面ではありませんことよ?」


「七氏に間違った道に進んでほしく無くてな。世帯を持っている者に手を出すという事は様々な障害がある。慎重に事を進めた方が良いぞ? ぬしより長く生きているあやかしからの忠告だ」


 笑みを浮かべながら言われ、静稀は何も言えなくなってしまった。


 お互い、睨み合っている。

 わ、我はどうすればいいんだ?


 困っていると、屋敷の中から着物姿の凛々しい女性が姿を現した。

ここまで読んで下さりありがとうございます!

出来れば次回も読んでいただけると嬉しいです!


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よろしくお願いします(*・ω・)*_ _)ペコリ

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